「前任者の謎マクロに苦労」64.2%は誰の数字ですか?Excel 属人化の調査2つの対象・n・区間
Excel の属人化の調査にある「前任者の謎マクロに苦労」の64.2%は、営業事務の経験が3年以上ある221人に聞いた数字です。95%の区間(同じ聞き方で調べ直したとき、割合が収まりそうな範囲)は57.7〜70.2%で、会社全体の割合としては使えません。マクロの守りが、2026年7月の営業事務221人の調査と、2025年6月のIT情報サイトの読者330件の調査を、対象・設問・人数までさかのぼって計算し直しました(2026年10月時点)。
読み解きから直す・置き換えるまでの流れと費用はExcelマクロの引き継ぎのページにまとめています。
要点
- 「前任者の謎マクロに苦労」64.2%は、営業事務の経験3年以上の221人に聞いた数字で、会社の割合ではありません。
- 221人の調査なので、64.2%の95%区間は57.7〜70.2%です(Wilson の式で計算)。
- マクロを使う人69.7%(読者330件、2025年6月)は対象も設問も違い、64.2%とかけ合わせられません。
- 社内の説明では主語・人数・時期・区間を1文に入れ、自社のマクロの本数を数えて添えます。
目次
「前任者の謎マクロに苦労」64.2%は、誰に聞いた数字ですか?
NTTデータビジネスブレインズが2026年7月3〜4日に、営業事務の経験が3年以上ある全国の221人に聞いた数字です。「よくある」12.1%と「たまにある」52.1%を足すと64.2%で、人数に直すと約142人になります。作った人がいないマクロの扱い方は、Excelマクロの引き継ぎにまとめています。
設問は「誰が作ったか分からない謎のマクロ・複雑な関数」の解読や修正に苦労し、困惑した経験があるか、です。マクロと関数をまとめて聞いているので、マクロだけの割合は出せません。Excelのマクロの使われ方には、キーマンズネットの読者調査もあります。2つの調査は、対象と設問のどちらも違います。
| 項目 | 営業事務の調査 | キーマンズネットの調査 |
|---|---|---|
| 発表元の立場 | ノーコードのクラウドDBの販売元 | IT 製品の情報サイト |
| 時期 | 2026年7月3〜4日 | 2025年6月13〜25日 |
| 対象 | 営業事務 経験3年以上(全国) | 読者(職種の内訳は記載なし) |
| 人数 | 221人(有効回答のみ集計) | 330件 |
| 主な数字 | 謎のマクロ・関数に苦労 64.2% | マクロを使っている 69.7% |
同じ調査では、マニュアルのない前任者のファイルを「だましだまし」使い続けている人が62.1%でした。自分か特定の担当者が休むと業務が回らないと感じる人は52.3%です。調査の方法(ネットか、どう選んだか)はページに書かれていません。
64.2%には、どれくらいの幅がありますか?
221人に聞いた数字なので、95%の区間は57.7〜70.2%です。上下におよそ6ポイントずつの幅があり、「6割ほど」とは言えても、64.2%ちょうどとは言えません。この区間はマクロの守りの計算で、調査の発表元は区間を出していません。
計算には、割合と人数から区間を出すWilsonの式を使いました。人数が数百人で割合が5割から7割ほどのときは、よく使われる単純な式とほぼ同じ値になります。スクリプトは scripts/figs/excel_macro_survey.py で、要点は次の数行です。
def wilson(p, n, z=1.96):
d = 1 + z * z / n
c = (p + z * z / (2 * n)) / d
h = z * sqrt(p * (1 - p) / n + z * z / (4 * n * n)) / d
return c - h, c + h
wilson(0.642, 221) # → (0.577, 0.702)
同じ式で、前任者のファイルを使い続けている62.1%は55.5〜68.2%、休むと回らない52.3%は45.7〜58.8%になります。キーマンズネットの調査でマクロを使っている69.7%(330件)は、64.5〜74.4%です。
限界もあります。この区間は「221人を無作為に選んだ」とした場合の幅です。答えたのが有効回答だけで、選び方も書かれていないので、答える人の偏りは区間に入っていません。区間は参考として使います。
キーマンズネットの69.7%と64.2%は、かけ合わせられますか?
かけ合わせられません。69.7%は「マクロを使っているか」、64.2%は「謎のマクロ・関数に苦労したか」で、聞いた相手と時期がどちらも違うからです。
キーマンズネットの調査は、2025年6月13〜25日にIT製品の情報サイトの読者から集めた330件です。「時々使っている」50.9%と「常に使っている」18.8%を足すと69.7%になります。記事には設問の文と回答者の職種の内訳が載っていません。読者の調査なので、ITに関心の高い人に寄っている可能性もあります。
やりがちなのが、69.7%に64.2%をかけて「マクロを使う人の約45%が謎のマクロに苦労している」とする書き方ですが、これは成り立ちません。営業事務221人が全員マクロを使っているとは限りません。読者330件のほうは、謎のマクロで苦労したかを聞かれていません。2つの数字は、別の集団の別の問いとして並べるだけにします。
稟議や社内説明で使うとき、どう書けばよいですか?
主語(誰に聞いたか)、人数、時期、区間を1文に入れます。たとえば次のように書きます。
「営業事務(経験3年以上)221人への調査(NTTデータビジネスブレインズ、2026年7月)では、作った人が分からないマクロや関数に苦労した人が64.2%(95%の区間57.7〜70.2%)でした。」
避けたいのは「企業の6割以上がマクロの属人化に悩んでいる」という書き方です。会社の数ではなく人の割合で、対象は営業事務に限られます。発表元がノーコードのクラウドDBの販売元であることも、出典の欄に書いておくと読む人が判断できます。
区分ごとに割ると、幅はさらに広がります。同じ64.2%のまま人数を減らして計算しました。100人で54.4〜72.9%、50人で50.3〜76.0%、30人で46.4〜78.8%です。この調査は年齢や会社の規模ごとの人数を出していないので、区分の割合を自分で推し量って書くのはやめておきます。
自社の数字は、どうやって確かめればよいですか?
社内のマクロ付きファイルを数え、作った人が今も社内にいるかを1本ずつ確かめるのが確実です。調査の割合は他社の営業事務の話で、自社に何本の「謎のマクロ」があるかは教えてくれません。
数えるのは次の4つです。
- 共有フォルダにある .xlsm・.xlsb・.xls・.xlamの本数
- そのうち毎日・毎月の業務で使っている本数
- 作った人が今も社内にいる本数
- 引き継ぎ書か説明のシートがある本数
洗い出しの手順は社内のマクロ付きファイルの数え方に、残す文書はVBA の引き継ぎ書のひな形に書きました。マクロの守りでは、稟議に調査の64.2%を引くときも、自社の本数を並べて書くことをすすめています。「業務で使う12本のうち、作った人がいないのは5本」(例)のような自社の数字のほうが、決める人に伝わります。
このサイトで相談するには?
社内のマクロが何本あり、どれが止まると困るかを数えるところから、マクロの守りがお手伝いします。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫で、御社のやり方に合わせて進め方を一緒に考えます。準備は要りません。無料で相談するからお送りください。
よくある質問
- 64.2%を「日本の会社の6割」と言い換えてよいですか?
- いいえ。営業事務の経験が3年以上ある221人に聞いた、人の割合です。会社の数ではなく、ほかの職種の人も入っていません。
- 95%の区間は、どうやって計算したのですか?
- 割合と人数から出す Wilson の式で、z=1.96 を使いました。64.2%と221人を入れると57.7〜70.2%です。答える人の偏りは、この幅に入っていません。
- マクロだけで苦労した人の割合は分かりますか?
- 分かりません。設問が「謎のマクロ・複雑な関数」をまとめて聞いているので、マクロだけ、関数だけの割合は公表されていません。
- 従業員30人ほどの会社では、どの数字を使えばよいですか?
- 調査の割合より、社内のマクロ付きファイルの本数と、作った人が今も社内にいるかを数えた自社の数字が使えます。
この記事の実験・計算の条件
公表された調査の割合64.2%(n=221)から、人数をn=100・50・30に変えたときの95%区間を計算。手元の実験ではなく、再現できる計算です。