業務アプリの開発に補助金が使えるかを、公募要領で確かめた対象と自己負担の試算

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象は事務局に登録されたITツールで、受託で一から作る業務アプリは登録要領で対象外です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金と省力化投資補助金(一般型)は開発費を対象の区分に含めますが、新製品の開発や省力化の事業の一部であることが条件です。あつらえアプリの主宰が、3つの制度の公募要領の原文から対象の表と自己負担の試算を作りました(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は業務アプリの独自開発のページにまとめています。
要点
- デジタル化・AI導入補助金の対象は、事務局に登録されたITツールで、一から作る自社専用アプリは登録の対象外です。
- 通常枠は補助率1/2以内、補助額は5万円以上450万円以下で、月額型の利用料は最大2年分が対象です(2026年10月時点)。
- 1人月1,800円の月額型を10人で使うと、2年分の補助は21.6万円、5年の自己負担は86.4万円の計算です。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金と省力化投資補助金(一般型)は開発費を対象の区分に含めますが、社内の台帳をアプリにするだけでは事業の条件に当てはまりにくいです。
- 6次締切は2026年10月30日17時で、7次の締切日は10月16日時点で事務局の日程ページに載っていません。
目次
業務アプリの開発に、デジタル化・AI導入補助金は使えますか?
一から作る業務アプリの開発費には、原則として使えません。デジタル化・AI導入補助金2026の対象は、事務局に登録されたITツールの導入費用です。導入も、登録されたIT導入支援事業者と一緒に進めます。
開発費を経費に含める補助金には、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金と中小企業省力化投資補助金(一般型)があります。この2つの公募要領の区分と条件は、後の節で確かめています。
中小企業庁の支援サイト「ミラサポplus」と、事務局の公募要領(通常枠)・ITツール登録要領を読み合わせました。業務アプリまわりの費用は次のように分かれます。登録済みの製品を買う・借りる費用は対象になりえて、自社のためだけに作る費用は対象外です。
| 費用の中身 | 補助の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 登録済みの業務ソフトの購入費 | 対象になりうる | 公募要領 2-2 |
| 登録済みの月額型(クラウド)の利用料 | 最大2年分が対象になりうる | 公募要領 2-2 |
| 登録済みソフトと対になる導入設定・研修・保守 | 役務の合計200万円までが対象になりうる | 公募要領 2-2 |
| 一から作る自社専用アプリ(スクラッチ開発) | 登録の対象外 | 登録要領 2-3(1) |
| 登録済みツールへの追加開発・アドオン | 登録の対象外 | 登録要領 2-3(1) |
| 交付決定の前に契約したもの、申請代行費、消費税 | 対象外 | 公募要領 2-2 |
受託で一から作るアプリが対象にならないのは、なぜですか?
ITツール登録要領が、完成していない製品やスクラッチ開発を伴うソフトウェアを、登録の対象外と定めているためです。登録できないものは、申請のときに選べません。
登録要領の2-3(1)「ITツール登録の対象外となるもの」には、業務アプリの開発に関わる項目が3つあります。(ク)は「製品が完成されておらず、スクラッチ開発を伴うソフトウェア」です。(サ)は「特定の顧客向けに限定され、一般市場に販売されていないもの」です。(シ)はWEBアプリ制作などの「追加開発に掛かる費用が含まれているもの」を外しています。
逆に、同じ登録要領は共通プロセス共P-05の例に「ビジネスアプリ作成ツール」を挙げています。プログラミング不要で自社向けに作れる、ノーコード・ローコードの製品です。補助を使って業務アプリを持ちたいなら、登録済みのノーコードの基盤を選び、自社で画面を組む形になります。
私の読みでは、受託開発の会社が「補助金で作れます」と言うときも、登録済みの自社製品を入れる形のはずです。見積書に「開発費」「カスタマイズ費」がある場合は、どの登録ツールの、どの経費区分に当たるのかを支援事業者に確かめます。
ものづくり補助金や省力化投資補助金なら、開発費は対象になりますか?
経費の区分としては対象になりえます。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金と中小企業省力化投資補助金(一般型)は、どちらも専用のソフトウェア・情報システムの構築費を「機械装置・システム構築費」に含めています。ただし補助の対象は新製品の開発や省力化の事業で、社内の台帳をアプリにするだけでは当てはまりにくいです。
2つの制度の区分と条件
2026年10月16日に、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領(第1回、1.2版)と、省力化投資補助金(一般型)の公募要領(第8回)を開いて確かめました。表の言葉は公募要領のものです。
| 確かめた点 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回、1.2版) | 中小企業省力化投資補助金 一般型(第8回) |
|---|---|---|
| 開発費が入る区分 | 機械装置・システム構築費の「専用ソフトウェア・情報システム等の購入、構築、借用に要する経費」。製作を外注する場合もこの区分 | 機械装置・システム構築費(必須)の「専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費」 |
| 補助率 | 中小企業者1/2(特例で2/3)。革新的新製品・サービス枠の小規模企業者などは2/3 | 中小企業1/2(特例で2/3)。小規模企業者・小規模事業者などは2/3 |
| 社内の台帳アプリで当たりやすい条件 | 革新的新製品・サービス枠は、既存の製品・サービスの生産などのプロセスを改善するだけの事業は対象外。新事業進出枠は、自社にとって新しい市場への進出が条件 | 個々の業務に合わせて設計したオーダーメイドの設備・システムが対象。単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が1つ以上必須。パッケージソフトなどの単体の導入は対象外 |
| 開発費の書類 | 100万円(税抜)以上のシステム構築費は、実績報告で要件定義書か開発費用の算出資料を出す | 「システム開発一式」の見積もりは認められず、積算の根拠のある見積書と仕様書が要る。実績報告で要件定義書か開発費用の算出資料を出す |
| 契約の時期 | 交付決定の日より前に契約(発注を含む)した経費は対象外 | 交付決定の前に発生した経費は対象外(事前着手は認められない) |
| そのほか | 補助の下限は革新的新製品・サービス枠100万円、新事業進出枠750万円。公募期間は2026年10月30日18時まで | 発注先と3〜5年の保守・メンテナンスの契約が要り、その費用は補助の対象外。第8回の受付は2026年9月18日から |
台帳アプリの開発費を計上できるのは、どんなとき?
補助の下限が100万円なら、補助率1/2で経費は200万円以上の計画になります(計算値)。台帳1つをアプリにするだけの開発は、単独ではこの下限に届きません。新しい製品やサービスを始める事業、人の作業を設備で減らす事業の計画の中に、その仕組みの一部として業務アプリが入る形なら、開発費を計上できる場合があります。当てはまるかは計画の中身で決まるので、申請の前にそれぞれの事務局に確かめてください。
補助金を使うと、自己負担はいくら変わりますか?
月額型を10人で使う例では、5年の自己負担が108万円から86.4万円に下がる計算です。補助が効くのは最初の2年分の利用料だけで、3年目からは全額を払います。
計算の前提は、1人月1,800円(税抜)の月額型です。単価はA社の公式料金のスタンダードを例に借りました。A社が登録ツールかどうかは調べていません。補助率は通常枠の1/2、クラウド利用料は公募要領のとおり最大2年分とし、消費税・初期費用・導入関連費は入れていません。
計算式は「5年の自己負担 = 単価 × 人数 × 60か月 − 単価 × 人数 × 24か月 × 1/2」です。
| 利用者(人) | 月額の合計(円) | 5年・補助なし(円) | 5年・補助あり(円) | 補助額(円) |
|---|---|---|---|---|
| 10 | 18,000 | 1,080,000 | 864,000 | 216,000 |
| 20 | 36,000 | 2,160,000 | 1,728,000 | 432,000 |
| 30 | 54,000 | 3,240,000 | 2,592,000 | 648,000 |
独自開発(一式50万円〜、導入例(イメージ)の北山精工(架空)と同じ規模)は、この補助を使わない前提です。独自開発との総額や、月額型と並ぶ月は5年総額の計算機で、人数と年数を変えて確かめられます。
この試算は月額型の利用料だけの計算です。月額型の側は導入設定の費用も補助の対象になりえます。自社の人数と年数で計算し直してください。
2026年度の締切と手続きは、どう進みますか?
通常枠の1〜6次の締切は2026年10月30日(金)17時で、交付決定日は12月10日と示されています。契約・導入・支払いと実績報告は、交付決定から2027年5月31日17時までに済ませます(どちらも事務局の示した日程で、変わることがあります)。
事務局は第7回公募から使う公募要領を2026年10月9日に出しましたが、7次の締切日は、10月16日時点で事務局の事業スケジュールのページに載っていません。報道では12月1日17時とされていますが、事務局の案内ではまだ確認できていません。申請の前に、事務局の事業スケジュールのページで確かめてください。
公募要領(通常枠)の流れは次のとおりです。
- GビズIDプライムを取り、SECURITY ACTIONの一つ星か二つ星を宣言する
- IT導入支援事業者とITツールを選び、見積もりを取る
- 支援事業者の招待で申請マイページを開き、交付申請を出す
- 交付決定の後に契約・導入・支払いをする
- 実績報告を出し、額が確定してから補助金を受け取る
- 導入の後も、決められた年度に効果報告を出す
補助金を使うかどうかは、何で決めればよいですか?
登録済みの製品で今の台帳の項目と流れが収まるなら、補助金を使う価値があります。収まらず追加開発が要るなら、補助の対象から外れる部分が増え、補助の手続きと期限だけが残ります。
あつらえアプリが作る自社専用のアプリは、御社のためだけに作るものです。登録要領の(サ)にある「特定の顧客向けに限定され、一般市場に販売されていないもの」に当たるため、この補助金は使えません。私が相談を受けるときも、登録済みの製品で足りそうなら、そちらで補助を使う道を先にお伝えします。
迷ったときは、次の3つの場面で専門の窓口に確かめてください。
- 見積もりの費用が対象かどうか:選んだIT導入支援事業者に、ツール名と経費区分を聞く
- 締切や要件の変更:事務局のコールセンター(0570-666-376)に聞く
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金や省力化投資補助金で開発費を見る:計画が事業の条件に当たるかを、それぞれの事務局に聞く
このサイトで相談するには?
補助金を使うか、自社専用に作るかで迷っている段階でも無料で相談するからお声がけください。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。準備は要りません。あつらえアプリの主宰が、御社のやり方に合わせて進め方を一緒に考えます。
よくある質問
- ノーコードの作成ツールなら、補助の対象になりますか?
- 事務局に登録されていれば対象になりえます。ITツール登録要領は共P-05の例に、ノーコード・ローコードのビジネスアプリ作成ツールを挙げています。登録の有無はITツール検索で確かめます。
- 交付決定の前に契約してもよいですか?
- いいえ。公募要領は、交付決定前に契約・発注したITツールを補助の対象外としています。見積もりと商談までにとどめ、契約は交付決定の後にします。
- 補助金は、いつ受け取れますか?
- 後払いです。交付決定の後に契約・導入・支払いを済ませ、実績報告を出して額が確定してから交付されます。いったん全額を払う前提で資金を見ておきます。
- 申請書は、誰が作るのですか?
- 申請者とIT導入支援事業者が一緒に作ります。公募要領の流れでは、支援事業者が申請マイページに招待し、申請者が提出します。申請代行費は補助の対象外です。
出典
- 中小企業庁 ミラサポplus「デジタル化・AI導入補助金」(補助率1/2〜4/5、補助上限最大450万円、申請受付2026年3月30日〜10月30日、公募要領の公開2026年2月27日)(2026年10月16日確認)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」2026年2月27日新規作成(2026年10月16日確認)
- 同事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」第7回公募から、2026年10月9日作成(2026年10月16日確認)
- 同事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 ITツール登録要領」2026年1月23日新規作成、5月15日改訂(2-3(1)「ITツール登録の対象外となるもの」)(2026年10月16日確認)
- 同事務局「事業スケジュール」(通常枠1〜6次の締切2026年10月30日17:00、交付決定2026年12月10日予定、実績報告期限2027年5月31日予定)(2026年10月16日確認)
- 同事務局「第7次公募回以降における制度変更のお知らせ」2026年10月9日(2026年10月16日確認)
- J-Net21(中小機構)デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠の補助率・補助額、2026年3月18日(2026年10月16日確認)
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)」1.2版、2026年8月(1-2 補助対象事業枠、1-6-1 補助対象経費の区分、事前着手の禁止)(2026年10月16日確認)
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)、2026年8月(1-2 定義、1-4 補助対象事業、3-1 補助対象経費、補助対象外の経費)(2026年10月16日確認)
- A社(ノーコードの業務アプリ基盤)の公式の料金ページ。スタンダード1ユーザー月1,800円(税抜)(2026年10月16日確認)


