図面の最新版が分からないのはなぜ?旧版が残る6つの経路と、回収漏れの確率の計算

図面の最新版が分からなくなるのは、改訂のたびにコピーが増え、古い紙を回収しきれないからです。配ったコピー10部を1部ずつ98%の確率で回収できても、1部以上が現場に残る確率は18.3%になります(計算値)。配る部数を減らし、新版を登録したら旧版を自動で無効にして、現場が最新版しか開けない形にすると止められます。(2026年10月時点)
全体の流れと読める項目は読み取りの進め方のページにまとめています。
要点
- 図面の最新版が分からなくなるのは、改訂のたびにコピーが増え、古い紙を全部は回収できないからです。
- 1部ずつ98%の確率で回収できても、10部配れば1部以上が残る確率は18.3%、20部なら33.2%です(計算値)。
- 同じ10部・98%で年5回改訂すると、どこかの改訂で旧版が残る確率は63.6%まで上がります(計算値)。
- 紙の部数を2部に絞れば4.0%に下がり、端末で旧版を開けなくすれば「開いた図面が旧版」の経路は消えます。
目次
図面の最新版が分からなくなるのは、なぜですか?
改訂のたびにコピーが増え、古い紙を全部は回収できないからです。新しい図面を配っても、前の版が1部でも現場に残れば、どちらが新しいかを見分けるのは手に取った人の注意だけになります。
客先からB版の図面が届き、事務所が印刷して現場に配る。数か月後にC版が届き、また印刷して配り直す。この流れでは、改訂のたびに「配る」と「回収する」の2つの作業が発生します。配るのは事務所の都合で進みますが、回収は現場の全員の協力が要るので、どこかで漏れます。
図面よみでは、原因ごとに止め方を次のように整理しています。原因の多くは紙の部数と回収の手間です。仕組みで消せる原因もあれば、人の確認で補う原因もあります。
| 原因 | 起きること | 止め方 |
|---|---|---|
| 配る部数が多い | 回収漏れの1部が残る | 紙の部数を減らす |
| 旧版を人が回収する | 回収したかを誰も数えていない | 新版の登録で旧版を無効にする |
| 版数が紙面で目立たない | B版とC版を見比べないと分からない | 版数を表題欄の近くに大きく出す |
| 旧版から作った物が残る | NCプログラム・検査表が古いまま | 改訂時の見直し先を一覧にする |
旧版の図面は、どこから現場に戻ってくるのですか?
回収の手が届かない6つの場所から戻ってきます。配った紙の回収漏れのほかに、個人の控え、機械の横に貼った紙、外注先に渡した紙があります。紙以外では、PCに残ったPDFと、旧版から作ったNCプログラムや検査表です。
①〜④は紙の問題で、回収の対象に入っているかどうかが分かれ目です。個人の控えや外注先に渡した紙は、配布の記録に載っていないことが多く、回収の声がかかりません。
⑤のPDFは、メールの添付や共有フォルダーの古い階層に残ります。ファイル名に版数がないと、開いた人は最新かどうかを確かめようがありません。
⑥は見落とされやすい経路です。旧版の図面から作ったNCプログラム、検査表、治具は、紙を回収しても機械の中や棚に残ります。図面を差し替えたら、そこから作った物も見直す先として一覧にしておきます。
配った紙を全部回収できる確率は、どれくらいですか?
1部ずつの回収率が高くても、部数が増えると1部以上残る確率はすぐに上がります。1部ずつの回収率が98%なら、10部配ると18.3%、20部配ると33.2%の確率で旧版が残ります(計算値)。
計算は単純です。N部のコピーを1部ずつ同じ回収率で集めるなら、全部回収できる確率は回収率のN乗です。1部以上残る確率は、1からそれを引いた値になります。部数と回収率(表の「p=」)を変えた結果は次の表のとおりで、回収率99%でも20部なら18.2%です。
| 配ったコピー(部) | p=0.90 | p=0.95 | p=0.98 | p=0.99 |
|---|---|---|---|---|
| 3 | 27.1% | 14.3% | 5.9% | 3.0% |
| 5 | 41.0% | 22.6% | 9.6% | 4.9% |
| 10 | 65.1% | 40.1% | 18.3% | 9.6% |
| 15 | 79.4% | 53.7% | 26.1% | 14.0% |
| 20 | 87.8% | 64.2% | 33.2% | 18.2% |
改訂は1回で終わりません。同じ10部・98%で年に5回改訂すると、どこかの改訂で旧版が残る確率は1−(0.98^10)^5で63.6%です。式は1−p^Nなので、表計算ソフトでも同じ値を再現できます。
def remain(n, p):
return 1 - p ** n # n部のうち1部以上が回収されずに残る確率
この計算は、どのコピーも同じ確率で、互いに関係なく回収されると仮定しています。実際は、外注先の紙だけ回収率が低いなど、偏りがあります。回収率の値も仮定で、実際の現場で測った数字ではありません。
旧版で加工する事故は、どう止めればよいですか?
紙の部数を減らし、新版を登録した時点で旧版を無効にして、現場の端末が最新版しか開けない形にします。回収を人の注意に頼る部分を、仕組みに置き換えるのが要点です。
- 図面を「図番+版数」で1行の台帳にし、どれが最新かの印を付ける
- 新版を登録したら、同じ図番の前の版を自動で無効にする(データは履歴として残す)
- 現場のタブレットやPCは、台帳から最新版だけを開く
- 紙が要る場所(機械の横など)を決め、部数と置き場所を台帳に記録する
- 改訂のたびに、NCプログラム・検査表・治具の見直し先を確かめる
部数の効き目は大きく、回収率98%のまま紙を2部に絞れば、1部以上残る確率は4.0%まで下がります(計算値)。端末で旧版が開けなければ、「開いた図面が旧版だった」という経路そのものがなくなります。
旧版のデータは消さずに残します。客先から「いつ、どの版で作ったか」と聞かれたときや、設計変更の追加の工数を確かめるときに、版ごとの記録が要るからです。
紙をなくせない現場では、何から始めればよいですか?
配った紙の一覧を作るところから始めます。誰に何部渡したかが分からなければ、回収できたかどうかも確かめられません。
一覧には、図番、版数、渡した日、渡した相手(班・機械・外注先)、回収した日を書きます。Excelの表で十分です。外注先に渡した紙も、同じ一覧に載せます。
次に、紙面の版数を目立たせます。表題欄の版数の欄は小さく、B版とC版を並べて見比べないと違いが分かりません。印刷するときに、版数と「この紙の有効期限は次の改訂まで」を余白に大きく入れると、手に取った人が気づきやすくなります。改訂の中身の見つけ方は、前後の図面を重ねる差分の記事にまとめました。
紙図面が多い会社では、スキャンして図番と版数を読み取り、台帳を作るところから自動にできます。導入例(イメージ)では、紙図面約3,000枚の板金・製缶の会社(架空)を例にしています。旧版の無効化と、現場タブレットでの閲覧までを書きました。詳しくは導入例(イメージ)をご覧ください。
このサイトで相談するには?
版がそろわない、回収が追いつかないといったお困りごとは、図面よみの無料で相談するからどうぞ。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。準備は要りません。図面をお見せいただかなくても、今の配り方をうかがえば、御社のやり方に合わせて進め方を一緒に考えます。
よくある質問
- 「旧版」の赤いスタンプを押せば、回収しなくてもよいですか?
- いいえ。スタンプは回収できた紙にしか押せません。回収漏れの1部には何も印が付かないので、まず配る部数を減らします。
- 回収率を上げれば、紙のままでも大丈夫ですか?
- 部数しだいです。98%で回収できても20部なら33.2%で1部以上残ります。99%でも20部では18.2%です(計算値)。
- 図番と版数は、どう分けて持てばよいですか?
- 図番は同じ部品を指し続け、版数(A・B・Cなど)を別の欄に持ちます。台帳では「図番+版数」で1行にし、最新かどうかの印を付けます。
- 旧版のデータは消してしまってよいですか?
- 消さずに「無効」として残します。客先との間で、いつどの版で作ったかを確かめるときに要るからです。現場の端末から見えなくするだけにします。
出典
- 図面よみの計算(2026年10月16日)。配ったコピーN部が1部ずつ独立に確率pで回収されるときに1部以上残る確率 1−p^N、N=3〜20・p=0.90〜0.99(2026年10月16日確認)


