図面の読み取りAI(OCR)の精度は、項目でどれくらい違う?架空の部品図60枚を3つの条件で読ませた

図面の読み取りAIの精度は、読む項目と図面の状態で大きく変わります。架空の部品図60枚(1つの様式)を社外に送らないOCRで読ませると、CADのPDF(300dpiの画像)では図番・品名・材質・版数が60枚すべて正しく、見出しから位置を探す条件でも同じでした。縦向きの寸法は27.2%、全項目が正しい図面は60枚中5枚です。FAX標準相当では品名が80.0%に下がりました。精度は項目ごとの正解率で確かめます。(2026年10月時点)
全体の流れと読める項目は読み取りの進め方のページにまとめています。
要点
- 図面の読み取りAIの精度は、項目と図面の状態で変わるため、項目ごとの正解率で確かめます。
- 架空の部品図60枚をCADのPDF(300dpiの画像)で読ませると、図番・品名・材質・版数は60枚すべて正しく読めました。見出しの文字から値を探す条件でも同じでした。
- FAX標準相当で見出しから値を探すと、見出しの「材質」を読み違えて材質は0%、図番は70.0%に下がりました。
- 同じPDFでも縦向きの寸法は27.2%、全項目が正しい図面は60枚中5枚で、FAX標準相当では品名が80.0%に下がりました。
- AIの自信が低い項目だけを見ても誤りの74.5%しか拾えないので、表題欄以外の項目とFAXの図面は人が確かめます。
目次
図面の読み取りAIの精度は、項目ごとにどれくらい違いますか?
CADのPDFでも、項目によって68.6〜100%の開きがありました。架空の部品図60枚では、表題欄の図番・品名・材質・版数がCADのPDFで60枚すべて正しく読めました。寸法は68.6%、注記は91.2%です。図面の状態が悪くなるほど、どの項目も下がります。
図面よみが2026年10月に測った正解率は、次の表のとおりです。全項目が正しかった図面は、CADのPDFでも60枚中5枚でした。
正解としたのは、全角と半角、空白、φやマイナスの字形をそろえたうえで、正解の文字列と一致したものです。表題欄の見出し(「品名」など)は外して値だけを比べ、上下に積んだ公差は3つの値がそろえば順番は問いません。OCRはページ全体を読み、読んだ文字がどの項目に当たるかは正解の座標で割り当てました。項目の位置を探す失敗は、この表の数に入っていません(位置を探す条件は、後の節で測り直しました)。
| 項目 | 件数 | CADのPDF(%) | スキャン相当(%) | FAX標準相当(%) |
|---|---|---|---|---|
| 図番 | 60 | 100 | 96.7 | 100 |
| 品名 | 60 | 100 | 100 | 80.0 |
| 材質 | 60 | 100 | 98.3 | 100 |
| 版数 | 60 | 100 | 100 | 100 |
| 寸法 | 229 | 68.6 | 64.2 | 56.8 |
| 公差 | 131 | 90.1 | 77.9 | 70.2 |
| 注記 | 148 | 91.2 | 64.9 | 63.5 |
| 全項目が正しい図面 | 60 | 8.3 | 1.7 | 0 |
注:CADのPDFも300dpiの画像にしてからOCRで読みました。項目の位置は正解の座標で割り当てて採点しました(位置を探す失敗は含みません)。全角半角・空白などはそろえてから比べています。
架空の図面60枚で、どうやって精度を測りましたか?
Pythonで部品図60枚をPDFとして作り、3つの条件の画像にして、社内のPCで動くOCRに読ませました。OCRはオープンソースのRapidOCRで、図面を社外に送っていません。
図面はA4横で、右下に表題欄、左下に注記、右上に訂正欄があります。品名・材質・図番・寸法は乱数で変え、1枚に12〜13項目、計748項目の正解を持たせました。
- CADのPDF:PDFを300dpiの画像にしたもの
- スキャン相当:200dpiのグレー、傾き±0.7度以内、ぼけ・紙の色・汚れを足したもの
- FAX標準相当:ITU-T T.4の標準(横8点/mm、縦3.85本/mm)の白黒
コードの要点は、FAXの解像度に落とす次の数行です(全体は相談のときにお見せします)。A4横の図面を縦向きに送る想定なので、図面の横方向が3.85本/mmになります。
small = im.resize((round(297 * 3.85), round(210 * 8)), Image.BOX)
bw = small.point(lambda v: 255 if v > 128 else 0)
限界もあります。手書きは入れていません。表の数字は、項目の位置を正解の座標で割り当てたもので、位置を探す処理の失敗は数えていません。60枚は1つの様式なので、客先ごとに様式が違う実物の図面では、結果はこれより悪くなりえます。
表題欄の位置を知らなくても、4項目を読めますか?
CADのPDFなら読めました。正解の座標を使わず、OCRの結果だけから値を探す条件で測り直すと、図番・品名・材質・版数は60枚すべて正しく読めました。FAX標準相当では材質0%・図番70.0%まで下がりました。
探し方は単純です。OCRの結果から「品名」「材質」「図番」「版」の見出しを探し、同じ見出しが複数あれば用紙の右下にいちばん近いものを選びます。見出しと同じ行で右にある、いちばん近い文字を値とします。同じ60枚・同じOCRで、2026年10月16日に測りました。
| 項目(60枚) | CADのPDF:座標で割り当て | CADのPDF:見出しから探す | FAX標準相当:座標で割り当て | FAX標準相当:見出しから探す |
|---|---|---|---|---|
| 図番 | 100% | 100% | 100% | 70.0% |
| 品名 | 100% | 100% | 80.0% | 80.0% |
| 材質 | 100% | 100% | 100% | 0% |
| 版数 | 100% | 100% | 100% | 100% |
FAX標準相当で材質が0%になったのは、値ではなく見出しの読み違いです。60枚中52枚で見出しの「材質」が読めず、残る8枚では右上の訂正欄にある「材質変更」の文字を見出しと取り違えました。値の「SUS304」などは読めていても、場所が分からなければ台帳に入りません。
この60枚は表題欄の様式が1つだけです。様式が違う図面では、表題欄の枠そのものを探す処理も要ります。様式5つ・100枚のうち70枚で位置を当てられました(表題欄の項目の記事)。客先ごとに図枠が違う会社では、客先ごとに見出しの位置を覚えさせる形にします。
寸法・公差・注記では、どんな読み違いが起きましたか?
多かったのは、縦向きの短い寸法の読み違いです。CADのPDFでも、縦向きの寸法92件のうち正しく読めたのは27.2%でした。横向きの寸法は137件中96.4%なので、同じ数字でも向きで大きく変わります。
縦向きの2けたの数字は、読み落とし(CADのPDFで31件)や、別の数字への読み違いが目立ちました。縦向きでも「70±0.05」のように長い公差は28件すべて正しく読めています。文字の並びが短いと、向きの判定を誤りやすいようです。
ほかに目立った読み違いは次の3つです。
- 注記の「±」が漢字の「土」や「士」になる(CADのPDFで15件中13件)
- 上下に小さく積んだ公差の値が抜ける(正解は31件中、CADのPDFで19件、スキャン相当とFAX標準相当で各2件)
- FAXでは、引出線が数字に触れて「2-φ9」が「12-φ9」になる(31件中21件)
「±」のように形の似た字の取り違えは、OCRが自信を持って出すので、AIの自信の数字では見つかりません。
FAXやスキャンの図面では、精度はどこまで下がりますか?
表題欄の4項目がそろって正しかった図面は、CADのPDFで60枚、スキャン相当で57枚、FAX標準相当で48枚でした。全748項目で見ると、86.9%・77.8%・72.7%と下がります。
FAX標準相当の表題欄で下がったのは、品名(80.0%)だけです。誤りの12件のうち11件は、「プ」「ペ」の半濁点を濁点と読んだものでした。図番・材質・版数は、FAX標準相当でも60枚すべて正しく読めています。
スキャン相当では、表題欄はほぼ読めた一方、注記が91.2%から64.9%に下がりました。「表面処理」の「面」や「クロメート」のカタカナを読み落とす例が目立ちました。
「精度99%」という数字は、図面にも当てはまりますか?
当てはまるとは限りません。何を1件と数えたかで、同じ読み取りでも数字が変わるからです。今回のCADのPDFは、項目で数えると86.9%ですが、図面1枚の全項目が正しかった割合は8.3%でした。
「図面」「OCR」「精度」の3語で検索し、上位の記事を2026年10月16日に読みました。図面を実際に読ませた結果と条件を載せた記事は、見当たりませんでした。99%という数字は、製品のカタログの値や帳票全般の目安として書かれ、図面で測った条件は示されていません。
研究では、図面OCRのツールeDOCrの論文(2023年)があります。文字誤り率8%などを報告していますが、評価した図面は7枚で、うち3枚は表題欄と枠の上の検出が採点から外されていました。数字を見るときは、件数・項目・図面の状態の3つを確かめます。
人が確認するのは、どの項目にすればよいですか?
CADのPDFでは、表題欄の4項目はAIに任せ、寸法・公差・注記はすべて人の確認に回す形が安全です。AIの自信の数字が低い項目だけを見る方法では、誤りの約4分の1を見逃しました。
| 確認する項目の決め方 | 確認する割合(CADのPDF) | 拾えた誤り(CADのPDF) | 拾えた誤り(FAX標準相当) |
|---|---|---|---|
| AIの自信が0.9未満の項目だけ | 17.0% | 74.5% | 79.4% |
| 上に加え、表題欄以外は全部 | 68.3% | 100% | 94.6% |
FAX標準相当では、表題欄以外を全部見ても誤りの94.6%しか拾えませんでした。「ブ」と「プ」の取り違えは、表題欄の中で自信を持って起きるからです。FAXで届いた図面は、表題欄も含めて1枚ずつ人が確かめます。
私が仕組みを作るときは、客先の図面を数十枚ずつ条件別に読ませ、項目ごとの正解率から確認する範囲を決めます。「±」と「土」のような取り違えには、数字の前の「土」を「±」に直す規則を足します。
このサイトで相談するには?
お手元の図面でどの項目まで任せられるかは、図面よみの無料で相談するからお尋ねください。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。準備は要りません。図面をお見せいただかなくても、届き方と枚数をうかがえば、御社のやり方に合わせて進め方を一緒に考えます。
よくある質問
- 手書きの図面でも、同じくらい読めますか?
- この実験では測っていません。架空の図面はすべて印字の文字で作りました。手書きの注記や赤字の修正は、別に試す必要があります。
- 図面を社外に送らずに、精度を試せますか?
- はい。この実験はノートPCのCPUだけで動かし、図面を外に送っていません。1枚あたりの読み取りは平均8〜14秒でした。
- CADのPDFなら、OCRを使わずに文字を取り出せませんか?
- PDFに文字の情報が残っていれば取り出せます。客先のPDFが画像だけのこともあるので、届いた図面ごとに確かめます。
- 何枚の図面で試せば、精度が分かりますか?
- 項目ごとに数十件は数えられる枚数が目安です。60枚で、図番は60件、寸法は229件、注記は148行になりました。
出典
- 図面よみの実験(2026年10月16日)。架空の部品図60枚(748項目)を3条件の画像にし、RapidOCR 3.6+PP-OCRv5 mobile(CPUのみ)で読んだ項目別の正解率と、表題欄の4項目を見出しの文字から探した正解率(実験のコードは相談のときにお見せします)(2026年10月16日確認)
- Villena Toro, Wiberg, Tarkian「Optical character recognition on engineering drawings to achieve automation in production quality control」Frontiers in Manufacturing Technology 3(2023年3月、評価は図面7枚)(2026年10月16日確認)
- ITU-T Recommendation T.4(グループ3ファクシミリの標準。横8点/mm、縦は標準3.85本/mm)(2026年10月16日確認)
- RapidAI「RapidOCR」(オープンソースのOCR、Apache-2.0、ONNX Runtime で社内のPCだけで動く)(2026年10月16日確認)


