類似図面検索は、どんな仕組みで似た図面を探す?形と文字の探し方を架空の図面200枚で比べた

類似図面検索は、図面の形の特徴か、表題欄の文字(品名・材質・板厚)と寸法の近さで、過去の図面を似た順に並べる仕組みです。架空のプレート・ブラケット図200枚で試すと、同じ系列の兄弟図面4枚が上位5件に入った割合は、形だけで70.6%、文字だけで90.0%、両方を半分ずつ足すと96.3%でした。図面よみが手元のPCで行った実験です。(2026年10月時点)
全体の流れと読める項目は読み取りの進め方のページにまとめています。
要点
- 類似図面検索は、図面の形の特徴か表題欄の文字の近さで、過去の図面を似た順に並べる仕組みです。
- 架空の図面200枚では、同じ系列の4枚が上位5件に入った割合が形70.6%・文字90.0%・両方96.3%でした。
- 文字だけの検索は、材質を変えた兄弟図面では78.2%に下がり、形を半分足すと93.0%まで戻りました。
- 形の重みは0.3〜0.5がよく、形だけに寄せると70.6%に落ちました。同じ系列で品名をそろえて作った図面なので、実際の図面では文字の検索が下がりえます。
目次
類似図面検索は、どんな仕組みで似た図面を探すのですか?
類似図面検索は、図面1枚ごとに「形の特徴」と「文字の情報」を数値にしておく仕組みです。問い合わせの図面と近い順に、過去の図面を並べます。形だけ、文字だけでも探せますが、両方を足した方が上位に正解が入りやすくなります。
架空のプレート・ブラケット図200枚で、3つの探し方を比べました。どの探し方でも、問い合わせの1枚を除いた199枚から上位5件を出しています。両方を足した探し方が、2つの数字とも最も高くなりました。
| 探し方 | 比べるもの | 同じ系列の4枚が上位5件に入った割合(%) | 1位が同じ系列だった割合(%) | 外しやすい図面 |
|---|---|---|---|---|
| 形 | 図の線の向きの分布(HOG) | 70.6 | 81.5 | 形がそっくりな別の部品 |
| 文字 | 品名・材質・板厚・表面処理・外形寸法・穴の注記 | 90.0 | 95.0 | 材質を変えた兄弟の図面 |
| 両方 | 形と文字の点を半分ずつ | 96.3 | 98.0 | 上位5件を外したのは200枚中1枚 |
形で探す検索と、文字で探す検索は、何が違うのですか?
形で探す検索は図面の線の並び方を比べ、文字で探す検索は表題欄や寸法に書かれた値を比べます。形は見た目が近い図面に強く、文字は材質や板厚が同じ図面に強い、という違いがあります。
今回の形の特徴は、HOG(画像を小さな区画に分け、線の向きの分布を数えた数値)です。2005年の論文で発表された方法です。図面のうち、表題欄を除いた部分から作りました。
文字の方は、表題欄の品名・材質・板厚・表面処理と、外形寸法・穴の注記をOCRで読みました。OCRは社外に送らないものを使い、項目ごとの一致や近さを点数にして足しています。
外し方も違います。形の検索は、外形と穴の並びが似ていれば、材質や板厚が違う別の部品も上位に出します。文字の検索は、客先の都合で材質だけ変えた兄弟の図面を、別の部品と見なしやすくなります。
架空の図面200枚では、どの探し方が当たりましたか?
同じ系列の4枚が上位5件に入った割合は、形だけ70.6%、文字だけ90.0%、両方96.3%でした。上位5件に1枚でも正解が入った割合は、形98.5%・文字98.5%・両方99.5%で、どれも高い値です。
図面は、プレート・長穴プレート・L型・リブ・フランジ・コの字の6形状から40系列を作り、1系列5枚にしました。2〜5枚目は、縦横の寸法を±12%の範囲で変え、3割の確率で穴数、3割で材質、1割で板厚を変えています。材質・板厚・表面処理は、よく使うもの(SS400、t3.2、表面処理なし)に集まるよう重みを付けました。重みは仮定で、実在の統計ではありません。
使ったコードの要点は次の数行です(全体は相談のときにお見せします)。
# 形と文字の類似度を、問い合わせごとに標準化して足す(w は形の重み)
S_shape = F @ F.T # HOG ベクトルのコサイン類似度
S_text = [[text_sim(T[i], T[j]) for j in range(n)] for i in range(n)]
sc = w * zs(S_shape[i][mask]) + (1 - w) * zs(S_text[i][mask])
top5 = np.argsort(-sc)[:5] # 上位5件に同じ系列が何枚入ったか数える
200枚の作図と読み取り、特徴づくりは、手元のPC(CPUのみ)で1回4〜6分でした。OCRは7項目×200枚のうち1,300項目が正解と一字も違わず読めました。残り100項目はφをΦと読んだもので、比べる前にそろえています。
形と文字は、どんな割合で組み合わせればよいですか?
今回の図面では、形の重みを0.3〜0.5にしたときが最もよい結果でした。同じ系列の4枚が上位5件に入った割合は96.3〜96.4%です。形だけ(重み1)に寄せると70.6%、文字だけ(重み0)では90.0%です。
**組み合わせが効いたのは、材質を変えた兄弟の図面です。**同じ系列の800組のうち、材質が問い合わせと違う358組では、文字だけの検索は78.2%しか上位5件に入りませんでした。形を半分足すと93.0%になります。材質が同じ442組では、文字だけでも99.5%でした。
最適な重みは、図面の種類と、どの図面を「似ている」とするかで変わります。私が仕組みを作るときは、過去に流用した図面の組を数十組集め、その組が上位に来る重みを手元で探します。
実験の数字は、実際の図面にそのまま当てはまりますか?
当てはまりません。今回の図面は、CADから出した画像に近いきれいなもので、スキャンのかすれや傾き、手書きの書き込みはありません。表題欄と寸法の位置も分かっている前提で読み取りました。
ほかにも限界があります。系列は乱数で作った40個で、材質や板厚の偏りは仮定です。形の重み(0.3〜0.5がよい)は、測ったのと同じ200枚で選びました。選ぶ図面と測る図面を分けていないので、96.3%は楽観的な値です。形の検索の70.6%は、2005年に発表された古い特徴(HOG)による値です。製品の形の検索の性能を示すものではありません。
いちばん大きいのは、文字の検索に有利な作り方をしている点です。同じ系列の5枚は、品名と表面処理を同じ書き方でそろえ、板厚も9割は同じにしました。客先ごとに品名の書き方が違う実際の図面(「ブラケット」と「BRKT」、「取付金具」など)では、文字の検索は90.0%より下がりえます。文字だけに頼らず、形と両方で探す形にしておくのはそのためです。
形の特徴は2005年の方法を使ったので、深層学習で作った特徴に替えれば形の検索の数字は変わる可能性があります。表題欄の位置を自動で探す難しさは、図面の表題欄から何を読めば台帳になるかで試しました。スキャンでの読み取りの落ち方は、図面の読み取りAIの精度で測っています。
製品にも両方を使うものがあります。B社は2026年5月に「形状と文字のハイブリッド検索」を載せた版を出しました。S社は、形での検索に材質や顧客名の条件を組み合わせられると書いています。
| 依頼先 | 探し方(公式の説明) |
|---|---|
| A社 | 3D・2Dから形状・仕様値を読み、類似の部品や図面を関連付ける |
| B社 | 形状と文字のハイブリッド検索(Ver.3.3) |
| S社 | 形で探す検索に、材質・顧客名などの条件を組み合わせる |
A社・B社・S社は、実在の製品の公開情報をもとに名前を伏せて書いています(2026年10月16日に確認)。金額と範囲の違いは頼み先の比較に並べています。
どの方法でも、手元の図面で上位5件を目で確かめるのが確実です。見積の下書きにつなげる流れは図面から見積を自動で出す手順にまとめています。
類似図面検索を自社の図面で試す相談をするには?
御社の図面で、形と文字のどちらをどれだけ効かせるとよいかは、図面よみの相談で一緒に確かめられます(無料で相談する)。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。図面をお見せいただかなくても、御社のやり方に合わせて進め方を一緒に考えます。準備は要りません。
よくある質問
- 3D CADのデータがなくても、類似図面検索はできますか?
- はい。今回の実験は、2Dの図面を画像にしたものだけで行いました。紙の図面も、スキャンした画像から形と文字の両方を使えます。
- 手書きの古い図面も、似た順に並べられますか?
- 形の特徴は使えます。手書きの表題欄は読み違いが増えるので、文字の点は人が直した台帳の値から取る形にします。
- 何枚くらいの図面があれば役に立ちますか?
- 決まった枚数はありません。今回は200枚で試しました。同じような部品を寸法違いで何度も受けている会社ほど、効き目が出やすくなります。
- 似た図面から、見積まで自動で出せますか?
- 下書きまでです。似た図面の過去の見積と加工時間を並べ、値決めは人が行います。流れは図面からの見積の手順のページにまとめています。
出典
- 図面よみの実験(2026年10月16日)。架空のプレート・ブラケット図200枚(40系列×5枚)を、形(HOG)・表題欄と寸法の文字(RapidOCR PP-OCRv5 で読み取り)・両方の3通りで検索。実験のコードは相談のときにお見せします(2026年10月16日確認)
- scikit-image「skimage.feature.hog」(HOG の計算手順。参考文献 Dalal, N. and Triggs, B., CVPR 2005)(2026年10月16日確認)
- B社のプレスリリース「形状と文字のハイブリッド検索」を載せた新バージョン(Ver.3.3)の発表(2026年5月15日配信、リリースは2026年5月1日)(2026年10月16日確認)
- S社(図面管理のクラウド)公式サイト(形での検索と材質・顧客名の条件の組み合わせ)(2026年10月16日確認)
- A社(製造業向けの図面データの製品)公式サイト(料金の記載なし。3D・2Dデータから形状・構造・仕様値を読み取り、類似する部品や図面を関連付けると説明)(2026年10月16日確認)


