図面の表題欄から、OCRで何を読めば台帳になる?5項目の選び方と、100枚で試した位置の見つけ方

表題欄は、図面番号や図名など図面を特定する事項をまとめた欄で、JIS Z 8311では図を描く領域の右下隅に置くのがよいとされています。OCRで台帳を作るなら、まず図番・版数・品名・材質・客先名の5項目を読み、客先ごとに違う項目名は言い換え表でそろえます。架空の図面100枚で表題欄の位置を枠線から自動で探すと70枚で当たり、部品欄が上に接する様式は20枚すべて外れました。(2026年10月時点)
全体の流れと読める項目は読み取りの進め方のページにまとめています。
要点
- 台帳に最初に読むのは、図番・版数・品名・材質・客先名の5項目で足ります。
- JIS Z 8311は表題欄の位置と長さ(170mm以下)を決めていますが、載せる項目の一覧は決めていません。
- 架空の図面100枚で、表題欄の位置を枠線から自動で探すと70枚で当たりました(様式5つ×20枚)。
- 部品欄が上に接する様式は20枚とも部品欄ごと切り出し、細い線の様式はスキャン相当で10枚とも見つかりませんでした。
目次
図面の表題欄には、何が書いてあるのですか?
表題欄は、図面番号や図名など、その図面を特定する事項をまとめて書く欄です。JIS Z 8311では、図を描く領域の右下隅に置くのがよいとされています。図面を特定する部分の長さは170mm以下です。
ただし、表題欄にどの項目を載せるかは、この規格では決めていません。規格の適用範囲の脚注に、表題欄の様式全体を定めるものではないと書かれています。そのため、図番・品名・材質の並びや項目名は会社ごとに違います。
項目の一覧を決めているのは、国際規格のISO 7200(2004年)です。表題欄の必須の項目を、所有者(会社名)・図面番号・発行日・シート番号・表題・承認者・作成者・文書の種類の8つとしています。版数(改訂の記号)は任意の項目で、材質はこの規格の項目にありません。ISO規格の本文は有料のため、項目の確認にはISO 7200:2004と同一内容のインド規格(IS 11665)の全文を使いました。
尺度・投影法・普通公差・表面性状は、使うときだけ表題欄の外に出す項目と位置づけています。日本の図面がこの規格どおりとは限らないので、客先の図面ごとに確かめます。
図面よみでは、台帳に入れるかどうかで表題欄の項目を次のように分けています。台帳は「どの図面が、どの版で、何でできているか」を探せれば役に立つので、最初は5項目に絞ります。
| 項目の例 | 台帳での使い道 | 最初に読むか |
|---|---|---|
| 図番(図面番号) | 図面を1つに決める鍵 | 読む |
| 版数(改訂記号) | 最新版かどうかを見分ける | 読む |
| 品名(名称・図名) | 人が探すときの手がかり | 読む |
| 材質 | 見積と材料の手配 | 読む |
| 客先名 | 客先ごとの絞り込み | 読む(メールの差出人からも取る) |
| 数量 | 見積の段取りの割り振り | 見積に使うなら読む |
| 普通公差の等級(例:JIS B 0405-m) | 加工の難しさの目安 | 見積に使うなら読み、人が確かめる |
| 表面粗さ・熱処理・硬度 | 工程と外注の手配 | 見積に使うなら読み、人が確かめる |
| 尺度・投影法・作成者・承認者 | 図面を読む人の確認用 | 後回し |
台帳を作るなら、どの項目から読めばよいですか?
図番・版数・品名・材質・客先名の5項目から読みます。この5つがあれば、図番で引く、最新版だけを見る、客先で絞るといった台帳の基本の使い方がそろいます。品名や材質は、似た図面を探す手がかりにもなります。
いちばん大事なのは、図番と版数を別の欄に分けて持つことです。図番は同じ部品を指し続け、改訂のたびに版数だけがA・B・Cと進みます。台帳では「図番+版数」で1行にし、同じ図番の中でいちばん新しい版に印を付けます。図番の末尾に版を続けて書く客先もあるので、どこまでが図番かを客先ごとに決めておきます。
客先名は、表題欄から読むと間違えやすい項目です。作成元の欄にあるのは図面を描いた会社の名前で、設計を別の会社に頼んだ図面では客先と一致しません。私が仕組みを作るときは、受け取ったメールの差出人や保存先のフォルダから客先名を入れます。
表面処理・尺度・作成日は、使い道が決まってから足します。項目を増やすほど、読み違いを人が確かめる手間も増えるからです。
見積にも使うなら、数量・普通公差の等級・表面粗さ・熱処理を足します。どれも加工の工程と時間を左右する項目です。普通公差は、JIS B 0405が「表題欄の中又はその付近」に規格番号と等級(例:JIS B 0405-m)を書くと定めているので、表題欄のまわりを読めば見つかることが多い項目です。表面粗さや熱処理は図の中や注記に書かれ、記号の読み違いも起きやすいので、読んだうえで人が確かめます。
客先ごとに項目名が違うときは、どうそろえますか?
項目名の言い換え表を1つ作り、読み取った項目名を台帳の5項目に当てはめます。たとえば「材質」「材料」「MATERIAL」は、どれも台帳の「材質」に入れます。
図面よみで作った言い換え表の例は次のとおりです。網羅ではなく、新しい客先の図面が届くたびに1行ずつ足していく前提の表です。
| 台帳の項目 | 表題欄でよく見る書き方の例 |
|---|---|
| 図番 | 図番、図面番号、図面No、DWG NO.、DRAWING NO. |
| 版数 | 版、版数、改訂、訂正、REV.、REVISION |
| 品名 | 品名、名称、部品名、図名、TITLE、PART NAME |
| 材質 | 材質、材料、MATERIAL、MAT’L |
| 客先名 | 客先、得意先、顧客、発注元、CUSTOMER |
当てはめの要点は、比べる前に表記の揺れを消すことです。全角と半角、大文字と小文字、空白とピリオドをそろえてから表を引きます。表にない項目名は、勝手に近い項目へ入れずに「要確認」で人に回します。
# 言い換え表の要点。表記をそろえてから言い換え表を引く
def key(s):
return unicodedata.normalize('NFKC', s).upper().replace(' ', '').replace('.', '')
INDEX = {key(n): field for field, names in ALIASES.items() for n in names}
def normalize(label):
return INDEX.get(key(label)) # 知らない項目名は None(要確認)
試すと「DWG No.」は図番、小文字の「material」は材質、「Rev.」は版数に入りました。「表面処理」は表にないので要確認です。
表題欄の位置は、画像処理で自動で見つけられますか?
決まった様式なら見つけられます。架空の図面100枚で、枠線だけを手がかりに表題欄の位置を探したところ、70枚で正しい位置を当てました。外れた30枚は、すべて2つの様式に集まりました。
実験に使ったのは、Pythonで作ったA3横の架空の図面です。表題欄の様式を5つ用意し、1様式につき20枚を作りました。20枚のうち10枚は、CADから出したPDFに近いきれいな画像です。残りの10枚には、1.5度までの傾き・ぼかし・汚れを加えてスキャン相当にしました。
探し方はOpenCVの画像処理だけで、文字は読んでいません。図枠の傾きを直し、8mmより長い縦横の線だけを残します。線で囲まれた小さなマスを集めて、図枠の隅に接するマスのかたまりを表題欄とみなしました。正しい枠との重なり(IoU)が0.9以上なら成功です。
乱数の種を固定しているので同じ結果が出ます(コードは相談のときにお見せします)。実際の客先図面は様式がもっと多く、手書きの書き込みもあるので、成功率はこの数字より下がると考えてください。
自動で外れたのは、どんな表題欄の図面ですか?
外れたのは、部品欄が表題欄の真上に接している様式と、線が細い様式のスキャンでした。どちらも、線だけを見る方法の弱点がそのまま出ています。
部品欄が接する様式Bでは、20枚すべてで部品欄ごと切り出しました。部品欄も表題欄と同じ格子なので、線だけでは境目が分かりません。正しい枠との重なりは0.43〜0.61にとどまりました。
線の細い様式D(線の太さ約0.17mm)は、きれいな画像なら10枚とも当たりました。スキャン相当では、白黒に変えた段階で線が消え、10枚とも見つかりませんでした。
図面よみでは、この弱点を2つの方法で補います。
1つは、客先ごとに表題欄の位置と項目の並びを一度登録しておくことです。同じ客先の図面が同じ様式で届くなら、登録した様式から、線に頼らず場所が分かります。もう1つは、位置が見つからない図面や、図番が読めない図面を「要確認」に回すことです。人が見るのはその図面だけで済みます。
このサイトで相談するには?
表題欄の様式が客先ごとに違う、台帳の項目を決めかねている段階でも、図面よみの無料で相談するからどうぞ。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。準備は要りません。図面をお見せいただかなくても、御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。
よくある質問
- 表題欄に載せる項目は、JISで決まっていますか?
- JIS Z 8311が決めているのは位置と長さ(170mm以下)だけです。項目の一覧は国際規格ISO 7200にあり、所有者・図面番号・発行日・表題・承認者・作成者などを必須としています。
- 表題欄のない図面は、台帳にできませんか?
- できます。図番が図の近くや余白にある図面は、その場所を客先ごとに一度登録して読みます。図番がない図面は、人が番号を付けて台帳に入れます。
- 客先名が表題欄にない図面は、どうしますか?
- 受け取ったメールの差出人や、保存するフォルダ名から入れます。作成元の欄は図面を描いた会社の名前で、客先と一致しないことがあるからです。
- 表題欄の位置を探すのに、AIは必須ですか?
- いいえ。今回の実験は、線を拾う画像処理(OpenCV)だけで100枚中70枚の位置を当てました。外れた様式は、客先ごとに位置を登録して補います。
出典
- JIS Z 8311:1998 製図−製図用紙のサイズ及び図面の様式(5.1 表題欄の位置、5.2 寸法)。日本産業標準調査会(JISC)のJIS検索で閲覧できる(2026年10月16日確認)
- JIS Z 8311:1998 の全文(民間の転載。確認の補助。正本は上のJISC)(2026年10月16日確認)
- ISO 7200:2004 Technical product documentation — Data fields in title blocks and document headers(Table 1〜3 の必須・任意の区分)。国際標準化機構(ISO)の規格ページで閲覧できる。本文の確認には同一内容のインド規格 IS 11665 の全文を補助に使った(2026年10月16日確認)
- JIS B 0405:1991 普通公差−第1部(5. 図面上の指示)。JISCのJIS検索で閲覧できる(全文の民間転載 kikakurui.com を補助に使用)(2026年10月16日確認)
- 図面よみの実験(2026年10月16日)。架空のA3図面100枚(表題欄の様式5つ×20枚)で、枠線から表題欄の位置を探した成功率。コードは相談のときにお見せします(2026年10月16日確認)


