図面の公差と表面粗さ記号はAIで読める?表記6種類を各30個、3つの条件で読ませた

図面の公差は、表記の種類で読み取りの結果が大きく分かれます。架空の図面30枚に6種類の表記を30個ずつ(計180個)載せ、社外に送らないOCRに3つの条件で読ませると、±の両側公差は90個すべて正しく、幾何公差の枠は70.0%(90個中63個)、上下に積む片側公差は0%でした。後ろの2つは人の確認が要ります。全項目の精度は別の記事で、この記事は公差と記号だけを扱います。(2026年10月時点)
全体の流れと読める項目は読み取りの進め方のページにまとめています。
要点
- 図面の公差は、表記の種類で読み取りの正解率が0%から100%まで分かれます。
- 架空の図面30枚に各30個、計180個を3条件で読ませると、±の両側公差は90個すべて、表面粗さのRa・Rzは97.8%、幾何公差の枠と面取りは各70.0%でした。
- 上下に積む片側公差(+0.02/0など)は90個中0個で、小さな「0」が文字として見つかりませんでした。
- 種類が両側公差かRa・Rzで、OCRの自信が0.95以上なら158回の読み取りで誤りは0件でした。それ以外は人が確かめます。
目次
公差のどの表記が、AIに読みにくいですか?
最も読みにくかったのは上下に積む片側公差で、90個中0個でした。幾何公差の枠と面取りは各70.0%、はめあいは82.2%、±の両側公差は90個すべて、表面粗さのRa・Rzは97.8%です。
全項目の精度は図面の読み取りAIの精度の記事に書きました。この記事は、その表の「公差」の1行を表記の種類ごとに測り直したもので、扱うのは公差と記号だけです。次の表は、6種類を各30個、3つの条件で読ませたときの正解率です。読んだ文字が正解と全部一致したものだけを正解にしています。
| 表記の種類(各30個) | CADのPDF(%) | スキャン相当(%) | FAX標準相当(%) | 3条件の合計(90個) |
|---|---|---|---|---|
| 両側公差(50±0.05) | 100 | 100 | 100 | 100%(90個) |
| 片側公差(30に+0.02と0を上下に積む) | 0 | 0 | 0 | 0%(0個) |
| はめあい記号(φ10H7) | 96.7 | 100 | 50.0 | 82.2%(74個) |
| 幾何公差の枠(値と基準文字) | 56.7 | 76.7 | 76.7 | 70.0%(63個) |
| 表面粗さ(Ra1.6、Rz6.3) | 100 | 93.3 | 100 | 97.8%(88個) |
| 面取り(C0.5) | 60.0 | 56.7 | 93.3 | 70.0%(63個) |
| 6種類の合計(180個) | 68.9 | 71.1 | 70.0 | 70.0%(378個) |
条件が悪いほど下がるとは限りません。面取りはCADのPDFが60.0%で、FAX標準相当が93.3%でした。0とOの取り違えが、CADのPDFとスキャン相当で各12件、FAX標準相当で2件ありました。
架空の図面30枚で、どうやって測りましたか?
A4横の架空の図面30枚に、6種類の表記を1つずつ載せました。各30個で計180個、3つの条件で読むので、読み取りは540回です。図面の作り方、3つの条件(CADのPDF・200dpiのスキャン相当・FAX標準相当)、表記ゆれをそろえる採点は、全項目の記事と同じコードの部品です。OCRも同じRapidOCRで、図面を社外に送っていません。
上下に積む片側公差は、寸法・上の値・下の値の3つの数字がそろえば並び順を問いません。幾何公差の枠は、公差の値と基準の文字(AやB)で採点します。
記号のセルの絵が位置度なのか平面度なのかは、文字を読むOCRでは読めないので採点に入れていません。記号の種類は、人が図面を見て確かめます。
ok = sorted(NUMRE.findall(g)) == sorted(norm_parts(it)) # 片側公差:寸法・上・下の3つ
ok = g == t # そのほか:正規化後の全文字一致
全項目の記事の60枚にも横向きの公差があります。同じ分け方で数え直すと、両側公差の48件はCADのPDFで97.9%(スキャン相当とFAX標準相当は100%)、下側が0の片側公差10件は3条件とも0件でした。今回の結果と同じ向きです。
限界もあります。図面は1つの書体の印字で、公差は横向きだけ、OCRは1種類で、手書きは入れていません。実際の図面では結果が変わります。
小数点と±は、なぜ落ちるのですか?
今回の180個では、寸法に付いた±が落ちたのは0件で、小数点が1つ以上無くなった誤りは9件(スキャン相当3件、FAX標準相当6件)でした。誤り162件の多くは、別の原因です。
いちばん多かったのは片側公差で、90個すべてが誤りでした。下側が「0」の公差では、高さ2.5mmの「0」が読み取り結果に出ない例が29件あり、「35 +0.05」だけが残ります。「-0.1」の「-」が別の記号になる、「45」のあとに下側の0が続いて「450+0.02」になる、といった崩れもありました。
面取りの「C0.3」は、0が英字のOに替わって「CO.3」になりました(26件)。はめあいはFAX標準相当で、小さなφが抜けて「φ10H7」が「10H7」になりました(16件中15件)。幾何公差の枠は、記号のセルの線が「/」や「□」の文字として前に混ざった例が22件あります。
±については、別の場所で崩れました。全項目の記事では、注記の文中の「±」が「土」や「士」に読み違えられた例が、CADのPDFで15件中13件ありました。寸法に付いた±と、文中の±は分けて確かめます。
読み取った値を信用してよいのは、どんなときですか?
今回の180個では、表記が両側公差かRa・Rzで、OCRの自信が0.95以上のものは158回の読み取りで誤りが0件でした。ほかの種類は、自信の数字だけでは決められません。
自信が低いものを人に回す方法を、540回の読み取り(誤り162件、正しい378件)で比べると次のとおりです。自信は、1つの項目を作る文字の自信のうち最も低い値です。
| 人に回す基準 | 拾える誤り | 正しいのに回る数 |
|---|---|---|
| 自信が0.8未満 | 64件(39.5%) | 5件(1.3%) |
| 自信が0.9未満 | 117件(72.2%) | 92件(24.3%) |
| 自信が0.95未満 | 143件(88.3%) | 151件(39.9%) |
0.95未満を見ても、誤り19件が残りました。自信が1.0のφの抜けや、0.98の片側公差の誤りがあります。OCRは、読めなかった文字を自信の低い文字としては返しません。
自信の数字に、種類ごとの書式の検査を足します。たとえば面取りは「Cの次のOを0に直す」規則を足すと、同じ180個で面取りの誤りが90個中1個に減りました。同じデータで作った規則なので、実際の図面ではもう少し下がります。
見積に使うとき、人はどこを見ればよいですか?
見積に使う図面では、公差は工程や検査の前提になる値です。私が仕組みを作るときは、今回の結果から種類ごとに次のように分けます。
- 片側公差と幾何公差の枠は、全件を人が見る(片側公差は上下2つの値がそろわないものを先頭に並べる)
- 幾何公差の記号の種類は、常に人が見る
- はめあいは、φが付いているかを穴の寸法と照らして確かめる
- 両側公差とRa・Rzは、自信が0.95以上なら任せ、未満を人が見る
- FAXで届いた図面は、種類を問わず1枚ずつ人が確かめる
論文では、図面OCRのeDOCrが寸法と幾何公差の枠を対象に、図面7枚で検出の適合率・再現率90%、文字誤り率8%と報告しています。ただし、公差や枠の種類別の正解率は載っておらず、最大実体公差の記号は認識されなかったと書かれています(論文の記事)。種類別の数字は、自社の図面で測り直します。表題欄の図番・版数・材質の読み方は表題欄の記事に、図面から見積を出す流れは見積の手順に書きました。
このサイトで相談するには?
お手元の図面で、どの公差までAIに任せられるかを知りたいときは、図面よみの無料で相談するからお尋ねください。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。準備は要りません。図面をお見せいただかなくても、届き方と公差の書き方をうかがえば、御社のやり方に合わせて進め方を一緒に考えます。
よくある質問
- 公差は、OCRで読めば見積に使えますか?
- 種類によります。±の両側公差とRa・Rzは今回の実験でほぼ読めましたが、片側公差と幾何公差の枠は人の確認が要ります。公差は工程や検査の前提になるので、読み違いは見積の前提の違いになります。
- 幾何公差の記号(位置度・平面度など)の種類もAIで読めますか?
- 文字を読むOCRでは読めません。今回は記号のセルの中の絵を採点に入れていません。記号の種類は図面を見て人が確かめます。
- 手書きの公差や、縦向きの公差でも同じ結果になりますか?
- この実験では測っていません。図面はすべて印字の文字で、公差はすべて横向きです。手書きや縦向きは、別に試す必要があります。
- OCRの自信の数字だけで、人に回す項目を決めてよいですか?
- いいえ。自信が0.95以上でも、はめあいのφの抜けや片側公差の「0」の抜けが残りました。自信の数字に、書式の検査と種類ごとの決めごとを合わせます。
出典
- 図面よみの実験(2026年10月17日)。架空の図面30枚に公差の表記6種類を各30個(計180個)載せ、CADのPDF・200dpiスキャン相当・FAX標準相当の3条件で、RapidOCR 3.6+PP-OCRv5 mobile(CPUのみ)に読ませた正解率と誤りの分類(scripts/figs/drawing_tolerance_test.py。コードは相談のときにお見せします)(2026年10月17日確認)
- 図面よみの実験(2026年10月16日)。架空の部品図60枚(748項目)の項目別の正解率。公差131件のうち横向きの公差を、同じ分け方で数え直した(2026年10月17日確認)
- Villena Toro, Wiberg, Tarkian「Optical character recognition on engineering drawings to achieve automation in production quality control」Frontiers in Manufacturing Technology 3(2023年3月、評価は図面7枚)。公差・幾何公差の枠の種類別の正解率は載っていない(2026年10月17日確認)
- RapidAI「RapidOCR」(オープンソースのOCR、Apache-2.0、ONNX Runtime で社内のPCだけで動く)(2026年10月17日確認)


