材料費等記載見積書とは?建設業法 第20条で書く内訳と工程の日数

材料費等記載見積書は、工事の種別ごとの材料費・労務費・法定福利費などの内訳と、工程ごとの作業と準備の日数を書いた見積書です。建設業法 第20条第1項(2025年12月12日施行)で建設業者は作るよう努めるとされ、注文者から請求されたら契約が成立するまでに交付する義務があります(第4項)。架空の浴室リフォームの見積(税抜1,153,760円)を工程ごとに組み替えると、材料費等は約84%でした(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は製造業の見積の自動化のページにまとめています。
要点
- 材料費等記載見積書は、材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建退共の掛金と、工程ごとの日数を書く見積書です。
- 作るのは努力義務ですが、注文者から請求されたら、建設業者は契約が成立するまでに交付する義務があります(第20条第4項)。
- 架空の浴室リフォーム1,153,760円を組み替えると、材料費等は970,143円(約84%)、法定福利費は労務費の15.51%で27,143円でした。
- 発注者への勧告(第7項)は、工事に通常必要な費用が500万円以上の契約が対象です(1,500万円以上となるのは建築一式工事)。
- 作った材料費等記載見積書は、建設業法施行規則で保存する図書とされ、保存期間は引渡しから10年です。
目次
材料費等記載見積書とは、どんな見積書ですか?
材料費等記載見積書は、工事の種別ごとの材料費・労務費・「不可欠な経費」の内訳と、工程ごとの日数を書いた見積書です。建設業法第20条第1項が定めています。見積帳場が条文と国土交通省の資料から整理すると、書く項目は次の6つです。
| 書く項目 | 根拠 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| ① 材料費 | 法 第20条第1項 | 工程ごとに部材を書く。支給材はその旨 |
| ② 労務費 | 法 第20条第1項 | 工程ごとの人工×労務単価 |
| ③ 法定福利費(事業主負担分) | 施行規則 第13条の12第1号 | 労務費×会社負担の率 |
| ④ 安全衛生経費 | 同 第2号 | 保護具・送風機など |
| ⑤ 退職金共済(建退共)の掛金 | 同 第3号 | 対象者がいなければ0円 |
| ⑥ 工程ごとの作業と準備の日数 | 法 第20条第1項 | 準備と作業を分ける |
①〜⑤を、条文は「材料費等」と呼びます。国土交通省の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」(第8版、令和8年1月)も、①〜⑥を並べています。見積書に「最低限明示するように努めなければならない」事項という位置づけです。様式は決められていません。
建設業法 第20条は、作る側と注文者に何を求めていますか?
第20条は、作る側の建設業者には、作る努力と、著しく低く書かないこと、請求されたら交付することを求めています。注文者には、見積期間を設けることと、著しく下回る変更を求めないことを求めています。2025年12月12日施行の条文を項ごとに分けると、次のとおりです。
| 項 | 作る側(建設業者) | 注文者 | 強さ |
|---|---|---|---|
| 第1項 | 材料費等記載見積書を作る | なし | 努力義務 |
| 第2項 | 材料費等を通常必要な額より著しく低く書かない | なし | 禁止 |
| 第3項 | なし | 工事内容を具体的に示し、見積期間を設ける | 義務 |
| 第4項 | 請求されたら契約成立までに交付する | 内容を考慮する | 交付は義務 |
| 第5項 | 承諾を得て電子で提供できる | 承諾する | 方法 |
| 第6項 | なし | 材料費等が著しく下回る変更を求めない | 禁止 |
| 第7項 | なし | 第6項に違反した発注者は勧告を受けうる | 勧告 |
見積期間は、予定価格500万円未満で1日以上、5,000万円未満で10日以上、それ以上で15日以上です(施行令第5条の9)。第7項の勧告の相手は、最初の注文者である「発注者」です。対象は、工事に通常必要な費用が500万円以上の契約です(1,500万円以上となるのは建築一式工事。施行令第6条の2)。
第6項は、請求せずに受け取った見積書にも当てはまります。「著しく下回る」かどうかは、ガイドラインでは乖離の大きさ・理由・協議の状況から個別に判断されます。労務費の指標は「労務費に関する基準」(令和7年11月、中央建設業審議会の勧告)です。
一式見積を内訳つきに組み替えると、どうなりますか?
一式1行の見積を工程ごとに分けると、合計は同じまま、材料費・労務費・法定福利費の額が見えるようになります。架空の浴室リフォーム(ユニットバス交換)で、「浴室改修工事、1,153,760円(税抜)」の1行だけの一式見積を、見積帳場の計算で組み替えました。
| 工程 | 準備+作業(日) | 人工 | 材料費(円) | 労務費(円) |
|---|---|---|---|---|
| 養生・解体・撤去 | 0.5+1.0 | 2.0 | 5,000 | 50,000 |
| 給排水・給湯の配管 | 0+1.0 | 1.0 | 35,000 | 25,000 |
| 電気(換気扇・照明) | 0+0.5 | 0.5 | 15,000 | 12,500 |
| ユニットバスの組立 | 0.5+1.0 | 2.0 | 680,000 | 50,000 |
| 脱衣所側の壁・ドア枠 | 0+1.0 | 1.0 | 25,000 | 25,000 |
| 清掃・試運転・引渡し | 0+0.5 | 0.5 | 0 | 12,500 |
労務費は7人工×25,000円(架空の労務単価)で175,000円です。法定福利費の率は15.51%です。厚生年金18.3%と協会けんぽ全国平均9.90%の半分ずつに、建設の事業の雇用保険の事業主負担1.05%と、事業主だけが払う子ども・子育て拠出金0.36%を足しました。労務費に掛けると27,143円になりました。
安全衛生経費8,000円と建退共の掛金0円を足すと、材料費等は970,143円です。残りは処分費と運搬費60,000円、諸経費123,617円(架空の率12%)です。15.51%は40歳未満の社員の率で、労災保険料と介護保険料、令和8年4月分から始まった子ども・子育て支援金(0.23%の労使折半で事業主0.115%)は入れていません。
工程ごとの作業と準備の日数は、どう書けばよいですか?
工程ごとに、養生や搬入などの準備の日数と、作業の日数を分けて書きます。架空の浴室リフォームでは、6工程で準備1日・作業5日の合計6日です。人工の合計7と並べると、日数と人数の釣り合いを注文者が確かめられます。
国土交通省のガイドラインは、週休2日や猛暑日などを踏まえて日数を見積るよう求めています。根拠は「工期に関する基準」(令和2年7月、中央建設業審議会の勧告)です。例の6日を月曜から土日を休んで進めると、終わりは翌週の月曜で、暦では8日です。
建設業法第19条の5は、著しく短い工期の契約を、注文者と建設業者の両方に禁じています。乾燥待ちのような作業のない日も、備考に書いておきます。
材料費等記載見積書の決まりが当てはまらないのは、どんな場合ですか?
建設業の許可を受けていない事業者と、建設工事の請負ではない取引には、第20条第1項は当てはまりません。「建設業者」は許可を受けて建設業を営む者です(法第2条第3項)。許可の要らない軽微な工事だけを請け負う事業者は含まれません。軽微な工事は1件500万円未満の工事で、1,500万円未満か延べ150㎡未満の木造住宅という基準は建築一式工事に使います(施行令第1条の2)。
部材を売るだけの取引も対象外です。罰則の章(第45条以下)に、第20条を挙げた規定はありません。ただし第28条第1項により、法律の規定に違反した建設業者は、許可行政庁から指示を受けることがあります。
軽微な工事に当たるかは、許可を受けた地方整備局か都道府県の建設業の窓口に聞きます。値引きの求めが第6項に当たりそうなときは、弁護士に相談します。法定福利費の率を健康保険組合の率で置き直すときは、社会保険労務士に確かめます。
材料費等記載見積書が書けているかは、どう確かめればよいですか?
出す前に、6項目と交付・保存を確認表で見ます。見積帳場が条文から作った確認表を、架空の浴室リフォームの見積に当てはめました。
| 確認すること | 根拠 | 架空の見積での状態 |
|---|---|---|
| 材料費・労務費が工程ごとに分かれている | 法 第20条第1項 | 6工程すべて |
| 法定福利費・安全衛生経費・建退共の行がある | 施行規則 第13条の12 | 建退共は0円と記載 |
| 工程ごとに準備と作業の日数がある | 法 第20条第1項 | 準備1日・作業5日 |
| 請求された日と交付した日の記録 | 法 第20条第4項 | 契約の成立より前 |
| 電子で渡すときの注文者の承諾 | 法 第20条第5項 | PDF送付の承諾を記録 |
| 見積書と打合せの記録の保存 | 施行規則 第26条第5項 | 引渡しから10年 |
作った材料費等記載見積書と、その内容の打合せの記録は、保存する図書です(建設業法の施行規則第26条第5項)。期間は引渡しから10年です(同第28条第2項)。メールで送った見積書の電子帳簿保存法の扱いは、見積書をメールで送ったら保存は必要?で書いています。
見積書に内訳と工程の日数を入れるには?
見積帳場では、部材の単価表と工程ごとの日数から、内訳と日数つきの見積書が出る画面を作ります。
何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。準備は要りません。見積書の形に迷っているときも、無料で相談するのページから連絡できます。
よくある質問
- 小さなリフォームでも材料費等記載見積書は要りますか?
- 建設業の許可を受けた会社なら、工事の大きさにかかわらず第20条第1項の作る努力の対象です。許可を受けずに軽微な工事だけを請け負う事業者は「建設業者」に当たりません。
- 見積書をPDFでメールに添付して渡してもよいですか?
- はい。注文者の承諾を得れば、電子で提供でき、交付したものとみなされます(第20条第5項)。承諾をもらった記録を残しておきます。
- 法定福利費は何%で書けばよいですか?
- 決まった率はありません。見積帳場の架空の例では、40歳未満・協会けんぽ全国平均・建設の事業の雇用保険と子ども・子育て拠出金で、事業主負担を15.51%と計算しました。
- 下請の会社も材料費等記載見積書を作りますか?
- はい。第20条の「建設業者」と「注文者」は元請と発注者に限らず、元請から見積を頼まれた下請の建設業者にも当てはまります。
この数字はどう出したか
このページの実験と計算の数字は、実際のお客さまの取引ではなく、架空のデータや架空の入力例から主宰が出したものです。計算はPythonのコード(scripts/figsの再現コードと、画面の計算機と同じ式のsrc/lib/calc.ts)で組み、同じ入力なら同じ数字が出ます。
更新 ・ 事実の確認
出典
- 建設業法 第2条第3項・第19条の5・第20条・第28条第1項・第40条の3(昭和24年法律第100号、e-Gov 法令検索、2025年12月12日施行の改正後)(2026年10月16日確認)
- 建設業法施行令 第1条の2・第5条の9・第6条の2(昭和31年政令第273号、e-Gov 法令検索、2026年4月1日施行の版)(2026年10月16日確認)
- 建設業法施行規則 第13条の12・第26条第5項・第28条第2項(昭和24年建設省令第14号、e-Gov 法令検索、2026年7月1日施行の版)(2026年10月16日確認)
- 国土交通省 不動産・建設経済局 建設業課「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」令和8年1月(1.(5)(6)、PDF 10〜11頁)(2026年10月16日確認)
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(保険料率18.3%、労使折半)・全国健康保険協会 大阪支部「保険料率の推移」(令和8年3月分から全国平均9.90%)(2026年10月16日確認)
- 厚生労働省 山形労働局「令和8年度の雇用保険料率について」(建設の事業 事業主負担10.5/1,000、令和8年4月1日〜令和9年3月31日)(2026年10月16日確認)
- 見積帳場の計算(架空の浴室リフォームの見積の組み替えと図。金額・人工・労務単価・日数はすべて架空。scripts/figs/itemized_quote.py、2026-10-16 実行)(2026年10月16日確認)


