中小企業のAI導入支援|カスハラ対応の記録と報告の仕組みづくりから

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コラムやり方

カスハラ研修は何時間必要?シフト制で全員が受けるまでの回数を、20人・定員10人で1,000回試した

カスハラ研修を従業員20人の全員が1回ずつ受けるには、定員10人・出勤率80%・欠勤率5%でも、開催は中央値で3回、10回のうち9回は5回までに終わる回数が必要です(試算、n=1,000試行)。研修の時間や回数は法令に書かれていません。カスハラ報告ラインが回数を計算し、30分で教える内容と、最低賃金で数えた人件費も示します。(2026年10月時点)

全体の流れと費用はカスハラ対策の義務化ガイドのページにまとめています。

要点

  • 従業員20人・定員10人・出勤率80%・欠勤率5%で全員が1回ずつ受けるまでの開催は、1,000試行の中央値で3回、90%点で5回でした(試算)。
  • 定員を10人から20人にしても中央値は3回のままで、出勤率が80%から60%に下がると5回に増えました。
  • 30分の研修を3回開いたときの人件費は、全国加重平均の最低賃金1,177円で最低でも13,535円〜です。
  • 指針と厚労省の企業マニュアルは、研修を全員が定期的に受けることを求めても、時間や回数の数字は示していません。
目次
  1. カスハラ研修は、全員が受けるまでに何回開けばよいですか?
  2. 全員が受けるのに、なぜ人数÷定員より多く開くのですか?
  3. 研修の人件費の最低額
  4. 研修の時間と回数に関する法令の定め
  5. 30分の研修で教える内容
  6. このサイトで相談するには?
  7. よくある質問

カスハラ研修は、全員が受けるまでに何回開けばよいですか?

従業員20人の会社で定員10人なら、全員が1回ずつ受け終えるまでの開催は、中央値で3回、90%点で5回です。出勤率80%、当日の欠勤率5%と置いて、乱数で1,000回試した結果です。10人ずつ2回で済むとは限りません。

次の表は、条件を変えたときの回数です。出勤率が下がると回数が増え、定員を広げても減りにくいことが分かります。

条件(欠勤率は5%) 中央値(回) 90%点(回)
20人・定員10・出勤率100% 2 3
20人・定員10・出勤率80% 3 5
20人・定員10・出勤率60% 5 7
20人・定員5・出勤率80% 5 6
20人・定員20・出勤率80% 3 4
50人・定員20・出勤率80% 4 6
研修を全員が受けるまでの開催回数全員が1回ずつ受けるまでに開く回数(1,000試行の中央値と90%点)濃い棒=中央値 薄い棒=90%点。欠勤率は5%で共通20人・定員10・出勤率100%2回 / 3回20人・定員10・出勤率80%3回 / 5回20人・定員10・出勤率60%5回 / 7回20人・定員5・出勤率80%5回 / 6回20人・定員20・出勤率80%3回 / 4回50人・定員10・出勤率80%6回 / 8回50人・定員20・出勤率80%4回 / 6回100人・定員20・出勤率80%7回 / 8回出典:カスハラ報告ラインの試算(2026年10月17日、乱数シード20261017、scripts/figs/kenshu_keisan.py)。従業員の出勤は独立に決まると仮定した計算値
図1 全員が1回ずつ受けるまでの開催回数(試算)。濃い棒が1,000試行の中央値、薄い棒が90%点です。

厚生労働省の企業マニュアル(令和8年度改訂版)は、研修を全員が受講し、定期的に実施することが重要としています。パート・アルバイト等にも、入社時に研修か説明をして、漏れなく受けられるようにするという書き方です(p.34)。漏れなく、の中身を数字にしたのが上の表です。

全員が受けるのに、なぜ人数÷定員より多く開くのですか?

研修の日にいる人しか受けられないからです。20人を定員10人で割ると2回ですが、1回目は20人のうち15人ほどが出勤して定員の10人がそろっても、2回目は残り10人のうち出勤しているのが7〜8人にとどまります。最後の数人が出勤する日を待つ回が、そのあとも続きます。

定員を20人にしても、中央値は3回のままでした。回数を決めているのは部屋の広さより、出勤率と欠勤率です。欠勤率だけを変えると、見出しの条件(20人・定員10・出勤率80%)で中央値は0%と5%で3回、10%と20%で4回、90%点は4回から6回でした。

研修後の人数 1回開いた後 2回開いた後 3回開いた後
まだ受けていない人(平均、人) 10.0 2.5 0.6

2回開いた時点でも、平均で2.5人、つまり1割を超える人が未受講です。ここで終えると、受講漏れが出ます。

20人・定員10人の開催回数の分布20人・定員10人・出勤率80%の1,000試行で、何回かかったか棒の上の数字は試行の数。濃い棒は中央値まで、薄い棒は90%点まで、赤い棒はそれより多くかかった試行712回4783回3244回955回226回107回以上中央値 3回、90%点 5回(90%の試行はこの回数までに全員が終わる)出典:カスハラ報告ラインの試算(2026年10月17日、乱数シード20261017、n=1,000試行)
図2 見出しの条件の回数の分布。2回で終わったのは71試行(7.1%)でした。

数えた方法は次のとおりです。各回に、まだ受けていない人がそれぞれ「出勤率×(1−欠勤率)」の確率でその日にいるとします。いる人のうち定員までが受け、残りは次回に回します。シードは固定してあり、同じコードで同じ数字になります。

import random, statistics
def kai(n, teiin, shukkin, kekkin, rng):
    nokori, k = n, 0
    while nokori > 0:
        k += 1
        iru = sum(rng.random() < shukkin * (1 - kekkin) for _ in range(nokori))
        nokori -= min(teiin, iru)
    return k
rng = random.Random(20261017)
xs = sorted(kai(20, 10, 0.8, 0.05, rng) for _ in range(1000))
print(statistics.median(xs), xs[899])  # 3.0 5

この計算の限界は、全員の出勤が独立で同じ確率という仮定です。夜勤だけの人のように、特定の日にしか出られない人は、この計算より回数が増えます。全体のコードは「kenshu_keisan.py」という名前のファイルにあります。

研修の人件費の最低額

20人・定員10人・出勤率80%で3回開くなら、30分の研修の人件費は最低でも13,535円〜です。全国加重平均の最低賃金1,177円を時給の下限として計算しました。実際の賃金に置き換える式は、次のとおりです。

人件費 = 時給 × 研修の時間(時間) ×(受講者数 + 開催回数)

受講者はn人が1回ずつ、進行役は開催のたびに1人が30分かかると数えています。20人・3回なら、1,177円 × 0.5時間 ×(20 + 3)で13,535.5円、円未満を切り捨てて13,535円です。

条件 開催回数 人件費(最低でも)
20人・定員10・出勤率80%(中央値) 3回 13,535円〜
同じ条件(90%点) 5回 14,712円〜
20人・定員10・出勤率60%(中央値) 5回 14,712円〜
50人・定員20・出勤率80%(中央値) 4回 31,779円〜

令和8年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円です(厚生労働省、2026年9月3日公表)。都道府県では最低額1,085円から最高額1,280円まで違い、社会保険料や交通費は入っていません。御社の時給が1,800円なら、式の時給を1,800円にします。20人・3回なら20,700円です。

この金額は人件費だけで、会場や教材、外部講師の費用は含みません。回数が1回増えるごとに、進行役の人件費が588円増えるだけで、大きいのは受講者の時間です。回数を減らしたいときは、定員を広げるより、未受講の人が出勤している日を選んで開くほうが効きます。

研修の時間と回数に関する法令の定め

決めていません。指針も厚労省の企業マニュアルも、研修の例は挙げていますが、何時間・年何回という数字は書いていません。2026年10月17日に、指針と企業マニュアルの本文で確かめました。

指針で研修が出てくるのは、措置を講じていると認められる例の中です。

指針の箇所 研修が出てくる場面
4⑴イ(例②) 方針の周知・啓発のため、対処の内容と併せて研修、講習等を実施する
4⑴ロ(例③) カスハラの内容と対処の内容を周知するための研修、講習等を実施する
4⑵ロ(例③) 相談窓口の担当者に、相談を受けた場合の対応についての研修を行う
4⑶ハ(例②) 再発防止として、方針と対処の内容を周知する研修、講習等を改めて実施する
4⑸イ(例②) 相談窓口の担当者に、プライバシー保護に必要な研修を行う

4⑷の悪質な事案への対処には、研修の例はありません。6⑴の望ましい取組では、接客や苦情対応の研修などで、顧客等への対応力を高めることが挙がっています。どれも例で、研修をしなければ義務違反という書き方ではありません。措置を満たしたかの判断は、御社と社会保険労務士などの専門家が行います。

企業マニュアルのp.36は、相談窓口担当者には定期的な研修が有効としています。全員向けとは別に、窓口担当者向けの時間も考えておきます。

30分の研修で教える内容

全員向けの30分なら、定義5分、線引き5分、記録の14項目10分、報告の手順5分、事例5分の構成が組めます。これはカスハラ報告ラインの構成案で、厚労省が決めた分数ではありません。企業マニュアルの研修の内容例(p.34)から、記録の作成方法を中心に選びました。

時間 内容 土台になる記事
5分 方針とカスハラの定義(指針2⑴の3要素) 対応マニュアルのひな形
5分 正当なクレームとの線引き(内容4類型・態様5類型) 線引きの記事
10分 記録の14項目。言葉どおりに、回数と分数を数字で書く 記録の項目の記事
5分 報告の手順。誰に、いつまでに、何で伝えるか 御社の窓口の表
5分 事例1つを14項目で書いてみる 架空の事案
30分の研修の構成案30分で教える構成案(5分・5分・10分・5分・5分)記録の14項目に10分。厚労省が決めた分数ではなく、運営者の構成案5分方針と定義指針2⑴の3要素5分線引き正当なクレームとの違い(9類型)10分記録の14項目言葉どおり・回数と分数5分報告の手順誰に・いつまでに・何で5分事例1つを書く架空の申し出で練習出典:企業マニュアル(令和8年度改訂版)p.34 の研修の内容例から運営者が選んだ構成(2026年10月17日)。記録の14項目は記事 kasuhara-kiroku-koumoku
図3 30分の構成案。運営者の設計で、厚生労働省が分数を決めたものではありません。

14項目を10分で全部書けるようにするのは難しいものです。まず日時、言葉どおりの言動、回数と続いた時間、現場監督者の指示の4つを、自分で書く練習にします。残りの項目は、様式を見ながら埋められれば足ります。

事例は、実際の事案ではなく架空の申し出を使います。研修の内容全体の位置づけは、カスハラ対策の義務化のガイドにまとめました。

このサイトで相談するには?

研修の回数や日の組み方と、報告の様式を合わせて決めることは、カスハラ報告ラインの相談で一緒に進められます(無料で相談する)。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。準備は要りません。

よくある質問

カスハラ研修は、法律で何時間と決まっていますか?
いいえ、時間も回数も決まっていません。指針は研修を措置の例として挙げ、厚労省の企業マニュアルは全員が定期的に受けることが重要としていますが、数字は書いていません。
パートやアルバイトも、研修の対象にしますか?
はい。指針2⑶の労働者はパート・契約社員等を含む全員で、企業マニュアルも、パート・アルバイト等に入社時に研修や説明を行い、漏れなく全員が受けられるようにするとしています。
20人の会社で、研修は何回開けば全員が受けられますか?
定員10人・出勤率80%・欠勤率5%なら、中央値で3回、90%点で5回です。出勤率が60%なら5回と7回です。御社の出勤率に置き換えて計算してください。
1回の研修は、何分で足りますか?
構成案は30分です。定義、線引き、記録の14項目、報告の手順、事例1つを入れました。厚労省が分数を決めたものではないので、御社で増減してください。
録画の研修で済ませてもよいですか?
指針は「研修、講習等」の実施を例に挙げ、形式は指定していません。録画の研修を使うなら、見た人の記録を残し、社会保険労務士に確かめてから決めてください。

出典と数字の作り方

  1. 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)4⑴イ・4⑴ロ・4⑵ロ・4⑶ハ・4⑷・4⑸イ・6⑴(2026年10月17日確認)
  2. 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」2026年9月8日更新。p.34 社内対応ルールについての従業員への教育・研修、p.36 相談窓口担当者への研修(2026年10月17日確認)
  3. 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金改定状況」(2026-09-03 公表。全国加重平均額 1,177円、都道府県の最低額1,085円・最高額1,280円)(2026年10月17日確認)
  4. カスハラ報告ラインの試算(2026年10月17日、乱数シード20261017。従業員n人・定員・出勤率・欠勤率を決め、全員が1回受け終わるまでの回数を1条件1,000回試した。条件とコードは本文のとおり)(2026年10月17日確認)