中小企業のAI導入支援|カスハラ対応の記録と報告の仕組みづくりから

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コラムやり方

カスハラの記録は何を残す?記録の方法を14項目にし、運営者が書いた架空の3件で確かめた

カスハラの記録の方法は、項目を決めて事案ごとに書くことです。記録は、後で事実を確かめ、被害を受けた従業員への配慮と再発防止につなげるために残します。厚生労働省のマニュアルが本部への共有に挙げる6項目を土台に、言われた言葉・回数と時間・録音の有無・配慮の措置などを足した14項目で残すのが基本です。カスハラ報告ラインの主宰が架空の事案3件を自分で書き、自由記述の形で14項目に照らすと、42項目中26項目が欠けました。実在の報告書を集めた数字ではありません。(2026年10月時点)

全体の流れと費用はカスハラ対策の義務化ガイドのページにまとめています。

要点

  • 記録は、厚労省マニュアルの本部への共有項目6つに言動の言葉・回数と時間・録音の有無など7項目を足し、日時と場所を分けた14項目で残します。
  • 運営者が自分で書いた架空の事案3件の自由記述では、14項目のうち書けていたのは5・4・7項目で、計42項目中26項目が欠けました(実在の報告書の統計ではありません)。
  • 言葉どおりの言動、回数と続いた時間、現場監督者の指示の3項目は、自由記述の3件すべてで抜けていました。
  • 項目式で書くと字数は321〜403字と自由記述の3.5〜5.9倍になりますが、14項目がすべて埋まります。
  • 録音を事実の確認に使うなら、利用目的を特定して通知か公表をします(厚労省の解釈事項 問9)。
目次
  1. カスハラの記録には、何を書けばよいですか?
  2. 自由記述と項目式では、記録にどれだけ差が出ますか?
  3. 後で使える「何があったか」の書き方
  4. 録音や録画を記録に使うとき、何に気をつけますか?
  5. 書いた記録の使い手と使い道
  6. 記録は、労災の請求や紛争のときにも使えますか?
  7. 記録の保管期間の考え方
  8. このサイトで相談するには?
  9. よくある質問

この記事は、条文・指針・決定文などの原文を読んで整理したものです。社会保険労務士・弁護士の確認は受けていないため、個別の事案の判断は専門家に確かめてください。

カスハラの記録には、何を書けばよいですか?

厚生労働省のマニュアルが本部への共有に挙げる6項目を土台に、指針が事実の確認で見る要素を足して、14項目で残します。マニュアルの6項目は、対応日時・場所、対応従業員、顧客等からの要望の内容、顧客等の情報、現場監督者の指示、対応結果です(令和8年度改訂版、p.33)。

指針は、カスハラに当たるかを経緯や状況、言動の態様、頻度や継続性などを合わせて考えるとしています(指針2⑸)。事後の対応では、録音・録画などの証拠の確認と、相談者の心身の状況への配慮も挙げています(指針4⑶イ)。ここから7項目を足し、日時と場所を分けて14項目にしました。

項目 書く例 土台 書く人
1. 日時(始まりと終わり) 10月3日 17:42〜18:20 マニュアル 現場
2. 場所と手段 2番レジ/来店・電話・訪問 マニュアル 現場
3. 対応した従業員 最初の担当と、代わった人 マニュアル 現場
4. 顧客等の情報 分かる範囲。分からなければ「不明」 マニュアル 現場
5. 要望の内容 何をしてほしいと言ったか マニュアル 現場
6. 言動(言葉どおり) 「店長を出せ」、台をたたく 指針2⑸ロ 現場
7. きっかけと経緯 何の説明の後に始まったか 指針2⑸ 現場
8. 回数と続いた時間 同じ要求を何回、何分 指針2⑸・マニュアル 現場
9. 現場監督者の指示 誰が何を決めたか マニュアル 現場
10. 対応の結果 退店した、電話を切った マニュアル 現場
11. 録音・録画・目撃者 有無と、ファイルの置き場所 指針4⑶イ 現場
12. 本人の受け止め 本人の言葉で 指針4⑶イ 現場
13. 被害者への配慮 担当の変更、2人で対応 指針4⑶ロ 責任者
14. 再発防止と共有先 掲示の見直し、本部へ共有 指針4⑶ハ 責任者

項目の選び方は運営者の設計で、措置を満たしたかの判断ではありません。現場が書くのは1〜12、責任者が後から足すのは13と14です。報告の届け先はカスハラの報告フォームの作り方にまとめています。

自由記述と項目式では、記録にどれだけ差が出ますか?

運営者が架空の事案3件を両方の形で書き分けると、自由記述では14項目のうち5・4・7項目しか書けず、計42項目中26項目が欠けました。項目式では3件とも14項目が埋まり、字数は自由記述の3.5〜5.9倍でした。

数えたのはカスハラ報告ラインの主宰1人で、第三者の確認は受けていません。書き方の手順は次のとおりです。事案ごとに、場所と相手の言動、回数、結果を先に決めます。自由記述は、そのうち思い出しやすい1〜2文だけを書きます。項目式は、同じ事実を14の欄に分けて書きます。事案はスーパーのレジ、訪問介護、コールセンターの3件で、人物と店舗は架空です。自由記述は、忙しい日の終わりに思い出して書く短い文を想定しました。読んだ人がその項目の問いに答えられれば、書けていると判定しています。

自由記述の報告で書けていた記録項目自由記述の報告で、記録の14項目のうち書けていたもの(架空の事案3件)○=書けていた ×=欠けていた。項目式で書くと3件とも14項目すべてが埋まるA スーパーのレジB 訪問介護C コールセンター1. 日時(始まりと終わり)マニュアル××2. 場所と手段マニュアル3. 対応した従業員マニュアル4. 顧客等の情報マニュアル×5. 要望の内容マニュアル××6. 言動(言葉どおり)指針ほか×××7. きっかけと経緯指針ほか××8. 回数と続いた時間指針ほか×××9. 現場監督者の指示マニュアル×××10. 対応の結果マニュアル×11. 録音・録画・目撃者指針ほか××12. 本人の受け止め指針ほか×13. 被害者への配慮指針ほか・責任者×××14. 再発防止と共有先指針ほか・責任者×××書けていた項目5/14(欠け9)4/14(欠け10)7/14(欠け7)出典:カスハラ報告ラインの試し(2026年10月16日、架空の事案3件、scripts/figs/kiroku_koumoku.py)。項目の土台は厚生労働省マニュアル p.33 と指針4⑶
図1 自由記述の報告で書けていた項目。場所と従業員は3件とも書けていましたが、言葉どおりの言動、回数と続いた時間、現場監督者の指示は3件とも抜けていました。事案は架空です。
架空の事案 自由記述(字) 書けていた項目 項目式(字)
A スーパーのレジ 77 5/14 403
B 訪問介護 54 4/14 321
C コールセンター 93 7/14 321

責任者が書く13・14を除いても、欠けは36項目中20項目でした。項目式で字数が多かったのは、現場監督者の指示(3件で計102字)、きっかけと経緯(101字)、回数と続いた時間(98字)です。自由記述で抜けやすい項目ほど、書くと長くなります。

自由記述と項目式の字数と項目の数同じ事案を自由記述と項目式で書いた字数と、埋まった項目の数(架空の事案3件)字数は空白を除く。項目式は欄の名前を除き、書いた値だけを数えたA スーパーのレジ自由記述77字5/14項目項目式403字14/14項目B 訪問介護自由記述54字4/14項目項目式321字14/14項目C コールセンター自由記述93字7/14項目項目式321字14/14項目出典:カスハラ報告ラインの試し(2026年10月16日、架空の事案3件、scripts/figs/kiroku_koumoku.py)
図2 字数と埋まった項目の数。字数は空白を除き、項目式は欄の名前を除いた値だけを数えました。
# 自由記述で書けていた項目の番号と、判定の根拠にした語(1件ずつ書く)
JUDGE = {'A スーパーのレジ': {2: '「レジ」', 3: 'Bさんと店長', 4: '「男性客」', 10: '「帰ってもらった」', 12: '「かなり怖かった」'}, ...}
free_miss = 14 - len(JUDGE[case])            # 欠けた項目の数
form_chars = sum(L(v) for v in FORM[case])   # 項目式の字数(値だけ)

事案と文は運営者が作ったもので、実際の報告書を集めた数字ではありません。判定には人の判断が入るため、項目ごとの判定を図1に○×で示し、根拠にした語を上のコードの形で1件ずつ残しました。

後で使える「何があったか」の書き方

言われた言葉をかぎかっこで写し、回数と分数を数字で書きます。「大声で怒鳴られた」「長時間文句を言われた」は書き手の受け止めで、後から読んだ人は何があったかを確かめられません。

架空の事案Aの自由記述は「レジで男性客に大声で怒鳴られた」でした。項目式では言動を「『半額にしろ』『店長を出せ』と大声で繰り返し、レジ台を2回たたく」、回数を「10回ほど、店長に代わってから20分」と書きました。指針は要求の内容と、言動の手段や態様を分けて例を挙げています(指針2⑸イ・ロ)。言葉と回数が残っていれば、責任者や専門家が後で考えられます。

書くときに気をつける点は3つです。

  1. 「カスハラ」「悪質」と書き手が決めない。当たるかどうかは責任者が決める
  2. 時刻は始まりと終わりを書き、途中で代わった人と時刻も残す
  3. 分からない項目は空欄にせず「不明」と書く

厚労省のマニュアルも、時系列で整理すると引き継いだ人が対応しやすいと書いています。疑わしい場面では、録音・録画、対応記録、時間の計測など、第三者が確かめられる証拠を集めるとしています。

録音や録画を記録に使うとき、何に気をつけますか?

録音・録画を事実の確認に使うなら、その利用目的をできる限り特定し、通知か公表をします。厚生労働省の解釈事項の問9の答えです。公表の例として、プライバシーポリシーに書き、ホームページのトップから1回程度の操作で届く所に載せる方法を挙げています。

録音・録画を事実の確認に使うときの流れ録音・録画を事実の確認に使うときに決めておくこと(厚生労働省 解釈事項 問9・問10)① 利用目的を特定する「カスハラの事案の事実関係の確認に使う場合がある」とできる限り特定する② 通知するか、公表する公表の例:プライバシーポリシーに書き、ホームページのトップから1回程度の操作で届く所に載せる③ 記録に置き場所を書く録音・録画の有無と、ファイルの場所を記録の項目に(運営者の設計)その場で伝える義務までは、必ずしも含まない問10。ただし不正な手段で取ってはならない。その場で同意を得て録音することも、法令を守った対応の例に挙がっているカメラに気づけない置き方なら、気づける措置を問10。カメラの設置状況などから、本人が容易に認識できるといえない場合は、認識できるようにするための措置が要る出典:厚生労働省「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(令和8年9月30日改訂)問9・問10。③は運営者の設計。掲示やポリシーの文言は、個人情報保護法に詳しい専門家に確かめて決める。
図3 録音・録画を事実の確認に使うときの流れ。①②は解釈事項の問9、下の2つは問10の要約です。③は運営者の設計です。

問10は、通知・公表の義務が、録音していることをその場で伝える義務まで必ず含むものではないとしています。ただし不正な手段で取ってはならず、カメラの置き方から本人が気づけない場合は、気づけるようにする措置が要ります。その場で同意を得て録音することも例に挙がっています。

記録の側では、録音の有無とファイルの置き場所を項目11に書きます。誰がどう判断し何を変えたかは録音に残らないので、14項目の記録と組み合わせます。店内の掲示やポリシーの文言は、個人情報保護法に詳しい専門家と確かめてから決めてください。

書いた記録の使い手と使い道

現場の責任者が事実を確かめ、本部の担当者が配慮と再発防止を決めて、項目13・14を書き足します。指針4⑶ハは、事実が確認できなかった場合も再発防止の措置を講じるとしており、記録はどちらの場合にも材料になります。

同じ4⑶ハは、事案の内容や対応の経緯を記録し、個人情報に気をつけて関係部門に共有し、再発防止に使うことも挙げています。記録には本人の受け止めも入るので、見られる人を責任者と担当者に絞ります(指針4⑸イ)。

相談や、対応への協力で事実を述べたことを理由に、従業員を不利益に扱うことは禁じられています(労働施策総合推進法の第33条第2項)。様式の名前を「お客さまとのトラブルの記録」のように広くしておくと、報告をためらいにくくなります。措置を満たしたかどうかは、御社と社会保険労務士などの専門家が判断します。

記録は、労災の請求や紛争のときにも使えますか?

使えます。厚生労働省は2023年9月1日付けの通達(基発0901第2号)で精神障害の労災認定基準を改め、心理的負荷の評価表の出来事に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」を加えました。いわゆるカスタマーハラスメントです。

認定では、発病前おおむね6か月の間にどんな出来事があり、その後どうなったかを具体的に把握して、心理的負荷の強さを判断します(認定基準の第4の2⑴)。繰り返される言動は、6か月より前に始まっていても、続いていれば始まりからのすべてが評価の対象です(第4の2⑷ア)。14項目のうち言葉どおりの言動と回数・続いた時間、被害者への配慮の3つは、こうした場面で「いつ何が何回あり、会社がどうしたか」を示す材料です。記録があれば認定されるわけではなく、判断するのは労働基準監督署です。認定基準の読み方はカスハラで従業員が体調を崩したら労災になる?にまとめました。

労働契約法の第5条は、使用者に、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮を求めています。会社が何を知り、どう配慮したかが問われる場面でも、項目13の「被害者への配慮」と項目14の「再発防止」の記入が手がかりになります。

記録の保管期間の考え方

事案の記録の保存期間を定めた法律の条文はありません。労働施策総合推進法・指針・解釈事項・企業マニュアルの本文を2026年10月16日に確かめましたが、保存期間の記載はありませんでした。

決めるときの目安は、記録を使う手続きの期限です。労災の休業補償給付などを受ける権利は2年、障害補償給付などは5年で時効になります(労災保険法第42条第1項)。人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償の請求は、損害と加害者を知った時から5年です(民法第724条の2)。

手続き 期限 条文
労災の休業補償給付など 行使できる時から2年 労災保険法第42条第1項
労災の障害補償給付など 行使できる時から5年 労災保険法第42条第1項
生命・身体を害する不法行為の損害賠償 損害と加害者を知った時から5年 民法第724条の2

カスハラ報告ラインは、少なくとも5年を目安に、退職した人の分も消さずに残す決まりを勧めています。期間を過ぎた記録は消します。個人情報は、使う必要がなくなったら遅滞なく消すよう努めることになっているからです(個人情報保護法の第22条)。何年にするかは、顧問の社会保険労務士・弁護士と決めてください。

このサイトで相談するには?

14項目をそのまま使うか、業種に合わせて減らすかは、今の報告の流れをうかがいながら一緒に決められます。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。

準備は要りません。カスハラ報告ラインの無料で相談するからお送りください。

よくある質問

カスハラに当たるか分からない件も、記録しますか?
はい。厚労省のマニュアルは、カスハラに至らなかった申し出も含めて内容・経緯・結果を記録し共有する仕組みを紹介しています。当たるかどうかは、後で責任者が決めます。
相手の名前や連絡先が分からないときは?
空欄にせず「不明」と書きます。立ち去って連絡先も分からない場合は、相手から事実を確かめる必要はなく、周りの従業員の話や録音で確かめます(解釈事項 問12)。
記録は、社内の誰が見られるようにしますか?
対応する責任者と担当者に絞ります。指針4⑸イは、相談した人のプライバシーを守る措置と、その周知を求めています。
カスハラの記録は、何年残せばよいですか?
法定の保存期間はありません。労災の請求の時効(2年・5年)や損害賠償の請求の期限(知った時から5年)を目安に、少なくとも5年残す決まりを勧めています。
紙の報告書のままでも、14項目で残せますか?
はい。14項目を欄にした様式を作れば、紙でも同じ形で残せます。拠点が多く本部が早く知りたいときは、スマホのフォームのほうが早く届きます。

出典と数字の作り方

  1. 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」2026年9月8日更新。p.33 本社・本部まで報告・相談する際に共有すべき内容例(2026年10月16日確認)
  2. 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)2⑸・4⑶・4⑸(2026年10月16日確認)
  3. 厚生労働省 雇用環境・均等局「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(令和8年9月30日改訂)問9・問10・問12(2026年10月16日確認)
  4. e-Gov 法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」第33条(2026年10月16日確認)
  5. 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」(令和5年9月1日付け基発0901第2号。資料1 改正の概要・資料2 認定基準 第4の2)(2026年10月16日確認)
  6. e-Gov 法令検索「労働契約法」第5条(2026年10月16日確認)
  7. e-Gov 法令検索「労働者災害補償保険法」第42条(2026年10月16日確認)
  8. e-Gov 法令検索「民法」第724条・第724条の2(2026年10月16日確認)
  9. e-Gov 法令検索「個人情報の保護に関する法律」第22条(2026年10月16日確認)
  10. カスハラ報告ラインの試し(2026年10月16日、架空の事案3件を自由記述と項目式で書き分け、欠けた項目と字数を数えた。条件と判定の決まりは本文のとおり)(2026年10月16日確認)