中小企業のAI導入支援|カスハラ対応の記録と報告の仕組みづくりから

カスハラ報告ライン中小企業のAI導入支援|カスハラ対応の記録と報告の仕組みづくりからカスハラ対応の記録と報告の仕組みづくり 専門

分野の入口

カスハラ対策の義務化、中小企業は何をする?措置10項目と記録

カスハラ対策は、2026年10月1日から、労働者を1人でも雇うすべての事業主の義務です(改正労働施策総合推進法 第33条)。中小企業の猶予はなく、措置は指針の4⑴〜⑸の10項目で、運営者の分類では、報告と台帳の記録で示しやすいのは4項目です。厚生労働省の調査を従業員300人未満の企業(99人以下と100〜299人)の3,366社だけで計算し直すと、何も実施していない企業は40.4%でした(運営者の計算)。

書いた人
カスハラ報告ライン 主宰(元AIエンジニア)
公開
更新
事実の確認

カスハラ対策の義務化は、いつから、誰が対象か?

2026年10月1日からで、労働者を1人でも雇う事業主はすべて対象です。従業員の数による猶予はなく、パートや契約社員も守る相手に含まれます。

根拠は、改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号、2025年6月11日公布)で加わった第33条です。事業主は、顧客等の言動で労働者の就業環境が害されないよう、相談に応じて適切に対応する体制の整備、抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(第33条第1項)。何をするかは、厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号、2026年2月26日公表)に書かれています。

指針は、店舗や施設の対面だけでなく、電話やSNSなどでの言動も含むとしています。顧客の自宅や打合せの飲食店でも、業務をする場所なら「職場」です(指針2⑵)。派遣で受け入れている人については、派遣先も措置を講じます(指針2⑶)。

カスハラに当たるのは、顧客等の言動で、業務の性質などに照らして社会通念上許される範囲を超え、労働者の就業環境が害されるもの、の3つをすべて満たす場合です(指針2⑴)。正当な申入れは当たりません。範囲を超えるかは、言動の内容と手段・態様の両方から総合的に見ます(指針2⑸)。表はカスタマーハラスメントとは、線引きの考え方は線引きの記事にあります。カスハラ報告ラインは、当たるかどうかを判断しません。

指針の措置10項目のうち、記録で示しやすいものはどれか?

運営者の分類では、事実の確認・被害者への配慮・再発防止・プライバシーの保護の4つが、報告と台帳の記録で示しやすい措置です。方針や窓口の4つは文書と周知の記録で示し、残る2つは人の対応と社内の決まりが要ります。

指針の4⑴〜⑸を、運営者が項目に分けると10になります。下の表の右の列は、記録や仕組みとの関係を運営者が分けたもので、措置を満たしたかどうかの判断ではありません。

指針の番号 措置の中身 記録との関係(運営者の分類)
4⑴イ 毅然と対応して労働者を守る方針を明確にし、管理監督者を含めて周知・啓発 文書と周知の記録で示す
4⑴ロ カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を周知 文書と周知の記録で示す
4⑵イ 相談窓口をあらかじめ定めて周知 文書と周知の記録で示す
4⑵ロ 窓口の担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする 仕組みでは足りない(人の対応)
4⑶イ 事実関係を迅速かつ正確に確認 記録・台帳で示しやすい
4⑶ロ 事実が確認できたら、速やかに被害者に配慮 記録・台帳で示しやすい
4⑶ハ 再発防止の措置(事実が確認できなかった場合も) 記録・台帳で示しやすい
4⑷ 特に悪質なものへの対処の方針を定めて周知し、体制を整える 文書と周知の記録で示す
4⑸イ 相談した人などのプライバシーを守る措置と周知 記録・台帳で示しやすい(見られる人の制限と閲覧の記録)
4⑸ロ 相談したことなどを理由に不利益に扱わない旨を定めて周知 仕組みでは足りない(社内の決まり)
指針の措置10項目を、記録との関係で3つに分けた図。記録・台帳で示しやすい4、文書と周知の記録で示す4、仕組みでは足りない2記録・台帳で示しやすい(4項目)4⑶イ 事実関係の確認4⑶ロ 被害者への配慮4⑶ハ 再発防止の措置4⑸イ プライバシーの保護文書と周知の記録で示す(4項目)4⑴イ 方針の明確化と周知4⑴ロ 内容と対処の周知4⑵イ 相談窓口の周知4⑷ 悪質なものへの対処方針仕組みでは足りない(2項目)4⑵ロ 窓口担当者の対応力4⑸ロ 不利益に扱わない旨の周知
措置10項目を、記録との関係で分けた図(運営者の分類で、措置を満たしたかどうかの判断ではありません)

指針の4⑶ハは、再発防止の例として「必要に応じて事案の内容や対応経緯を記録し、個人情報の取扱いに留意して関係部門に共有し、再発防止に活用することも考えられる」と書いています。あとから「何件あり、どう確かめ、何を変えたか」を説明するには、事案ごとの記録が要ります。

義務を守らないと、どうなるのか?

厚生労働大臣(都道府県労働局長)が助言・指導・勧告をし、勧告に従わなければ公表されることがあります。報告を求められて報告しない、または虚偽の報告をすると20万円以下の過料です。

条文ごとの読み方と、報告を求められたときに出せる書類は、カスハラ対策の義務と罰則の記事にあります。措置を満たすか、個別の事案がカスハラに当たるかは、顧問の社会保険労務士か弁護士、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確かめてください。

なぜ、カスハラの記録を事案ごとに残すのか?

措置を講じたことを説明するときの材料の1つになるためと、労災の請求や紛争、離職のときに何があったかを示す手がかりになるためです。保存期間に法律の定めはありません。

労災の認定は労働基準監督署が行います。読み方はカスハラで従業員が体調を崩したら労災になる?に、残す項目と保管の考え方はカスハラの記録の項目の記事にあります。

従業員300人未満の企業は、どのくらいカスハラ対策をしているのか?

厚生労働省の令和5年度の調査(7,780社)を従業員300人未満の企業(99人以下と100〜299人)の3,366社だけで計算し直すと、予防・解決の取組を何も実施していない企業は40.4%でした。調査全体の値は35.5%です(運営者の計算)。

計算の式、規模別の公表値、調査の対象と「中小企業」の基準の違いは、実態調査を規模別に読んだ記事にまとめています。

カスハラの記録には、何を残せばよいか?

厚生労働省のマニュアルは、本社・本部に報告するときに共有する内容の例として、対応日時・場所、対応した従業員、要望の内容、顧客等の情報、現場の責任者の指示、対応の結果の6つを挙げています。

項目と書き方の例はカスハラの記録の項目の記事に、無断の録音と告知の文面は録音の記事に、報告フォームの作り方は作り方のページにあります。台帳に通院や診断の内容を書くときは、要配慮個人情報の扱いに注意が要ります(個人情報保護法 第20条第2項)。

相談窓口は、誰が受ければよいのか?

新しく設ける必要はなく、上司に当たる管理監督者を担当者に定めることも考えられます。パワハラなどの窓口と一体でも、別でも構いません(厚労省の解釈事項 問11)。

本部の窓口や電話で受ける形でも足りると読めます(運営者の解釈で、個別の判断は顧問の専門家に)。店長を窓口にしたときの、その場で相談できる上司がいない時間の数え方はカスハラの相談窓口の記事にあります。

東京都の奨励金は、報告の仕組みに使えるのか?

都内の常時雇用300人以下の中小企業等は、要件を満たせば40万円の奨励金の対象になりえます。審査があるため、使える前提で費用を組まないでください。

日程と要件は、東京都の条例と法改正の違いの記事にまとめています。この事業は第2回で終わる見込みと、東京都が発表しています。

報告と記録の仕組みは、どう進めるのか?

今の報告の流れを書き出す、1つの店舗・事業所で試す、全拠点と集計に広げる、の3段階です。報告フォームの試作は最短当日、使い始めは最短その週からです。

  1. 今の報告の流れと項目を書き出す

    期間:最短当日/成果物:今の報告書の欄、誰に届くか、店長がいない時間の届け先、架空の事案での報告フォームの試作

  2. 1つの店舗・事業所で試す

    期間:最短その週から/成果物:スマホの報告フォーム、責任者への通知、事案の台帳

  3. 全拠点と集計へ広げる

    期間:数週間/成果物:全店舗・事業所の報告、本部への通知の分け方、月の件数の集計、必要なら録音の取り込み

書き出したあと、対応マニュアルの章立てと台帳の項目を合わせる作業は対応マニュアルのひな形の記事にあります。研修の時間の計算は研修の時間の記事にあります。

よくある失敗は3つです。

  • 報告が店長のところで止まる:届け先が店長だけだと、休みの日や店長本人が関わる事案が止まります。届け先を時間帯と内容で分け、本部にも届けます。
  • 自由記述だけで数えられない:日時・場所・内容の類型は選ぶ形にし、自由記述は経緯の欄に分けます。
  • 録音を告知しないまま記録に使う:利用目的の通知か公表が要ります(解釈事項 問9)。掲示やプライバシーポリシーに書いてから、台帳に結びつけます。

よくある質問

従業員が数人の会社も対象になる?
なります。労働者を雇う事業主はすべて対象で、規模による猶予はありません。小さな会社では、経営者が相談窓口を担うことも考えられます。
正当なクレームもカスハラになる?
なりません。社会通念上許される範囲の申入れは「正当な申入れ」で、指針の定義に当たりません。苦情のすべてがカスハラになるわけではありません。
対策をしないと、どうなる?
助言・指導・勧告を受け、勧告に従わないと公表されることがあります。報告の求めに応じない・虚偽の報告は20万円以下の過料です(第42条・第45条・第51条)。
録音するとき、客に伝える必要はある?
利用目的の通知か公表は要りますが、その場で伝える義務まで必ず含むわけではありません。ただし本人が気づけない設置なら、気づける措置が要ります(解釈事項 問9・10)。
相談窓口はパワハラの窓口と一緒でよい?
一緒でも別でも構いません。上司に当たる管理監督者を担当者にすることも考えられます(解釈事項 問11)。
従業員300人未満の企業の何割が、まだ対策をしていない?
厚労省の令和5年度調査を、従業員300人未満(99人以下と100〜299人)の3,366社で計算し直すと、40.4%が取組を何も実施していません(運営者の計算)。

現場の報告から本部の台帳までを、御社のやり方のまま1本に。

御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。準備は要りません。オンラインで、全国からお受けしています。

無料で相談する

頼み先の比較/記録と報告の時間の計算機

出典と数字の作り方

  1. e-Gov法令検索 労働施策総合推進法(昭和41年法律第132号)(2026年10月16日確認)
  2. 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(2026年10月16日確認)
  3. 厚生労働省 カスタマーハラスメント防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)(2026年10月16日確認)
  4. 厚生労働省 ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項(令和8年9月30日改訂)(2026年10月16日確認)
  5. 厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)(2026年10月16日確認)
  6. 厚生労働省 リーフレット(簡易版)(2026年10月16日確認)
  7. 厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」概要版(2026年10月17日確認)
  8. 東京都 令和8年度 カスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金 第2回募集(2026年9月8日)(2026年10月16日確認)
  9. 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」(資料1 改正の概要・資料2 認定基準)(2026年10月16日確認)
  10. e-Gov法令検索 労働契約法 第5条(2026年10月16日確認)
  11. e-Gov法令検索 労働者災害補償保険法 第42条(2026年10月16日確認)
  12. e-Gov法令検索 民法 第724条の2(2026年10月16日確認)
  13. e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律 第22条(2026年10月16日確認)
  14. カスハラ報告ラインの計算(2026年10月17日。40.4%=(878+482)÷(2,066+1,300)(図表11の規模別の割合と社数から戻した値)。月120時間=(営業12時間−在店8時間)×30日。録音の実験は合成音声54本、雑音の乱数の種は42。条件は各記事の本文のとおり)(2026年10月17日確認)

変更履歴

更新:調査の対象を従業員300人未満の企業と明記し、要配慮個人情報の注意を追記
公開:最初の版