カスハラの相談窓口は店長でいい?その場で相談できる上司がいない時間を3つのシフトで数えた
カスタマーハラスメント(カスハラ)の相談窓口について、厚労省の解釈事項(問11)は、他のハラスメント窓口と一体でなくてよく、上司に当たる管理監督者を担当者にすることも考えられるとしています。ただし営業12時間・店長8時間勤務の店では、その場で相談できる上司がいない時間が月120時間生まれる計算になり、本部の窓口や電話など代わりの受け手を決めておく必要があります。カスハラ報告ラインの計算では、店長が週2日休むと月184時間に増えます。(2026年10月時点)
全体の流れと費用はカスハラ対策の義務化ガイドのページにまとめています。
要点
- 厚労省の解釈事項 問11は、カスハラの相談窓口は他のハラスメント窓口と一体でなくてもよく、店長などの上司を担当者にすることも考えられるとしています。
- 営業12時間・店長の在店8時間・月30日の店では、その場で相談できる上司がいない時間が1店舗で月120時間になります(計算値)。
- 店長が週2日休むと月184時間、平日9〜18時の本部だけで受けると月162時間で、うち96時間は土日です(計算値)。
- 店長と副店長の2人交代でも、休みの日に月64時間の空白が残るので、その時間の受け手を名前で決めておきます。
目次
カスハラの相談窓口は、店長が受けてもよいのですか?
はい。厚労省の解釈事項の問11は、カスハラの相談窓口は他のハラスメントの窓口と一体でなくてよいとしています。労働者の上司に当たる管理監督者などを、担当者に定めることも考えられるとしています。
問11は理由として、カスハラは事案が起きたその場ですぐ相談したり、現場をよく知る上司に相談したりする方がよい場合を挙げています。指針4⑵イも、窓口の作り方として「担当者を定める」「制度を設ける」「外部に委託する」を並べています。窓口の置き方ごとに、根拠と「相談を受けられない時間」を並べると次の表になります。
| 窓口の置き方 | 根拠 | 相談を受けられない時間 |
|---|---|---|
| 店長・施設長を担当者にする | 解釈事項 問11 | 店長が店にいない時間 |
| 社長が担当者になる | マニュアル p.31(小さな企業) | 社長が外に出ている時間 |
| 本部の担当者が受ける | 指針4⑵イ | 本部の勤務時間の外 |
| 外部に委託する | 指針4⑵イ | 委託先の受付時間の外 |
どの置き方にも、受けられない時間が残ります。カスハラ報告ラインは、窓口を誰にするかと一緒に、その時間の受け手を決めることを勧めています。
店長1人の店では、その場で相談できる上司がいない時間は月何時間ですか?
営業12時間・店長の在店8時間・月30日の店なら、その場で相談できる上司がいない時間は1店舗で月120時間です。式は「(営業時間−在店時間)×営業日」で、記録と報告の時間の計算機と同じです。
指針4⑵は、窓口の担当者が店にいることまでは求めていません。本部の窓口や電話で営業中ずっと受けられるなら、この時間は0になります。120時間は、窓口が店長だけのときの空白です。
また、この120時間は店長が30日すべて出る前提です。店長が週2日休んで月22日出勤なら、休みの日の12時間×8日が加わり、月184時間になります。営業時間360時間の51%で、半分の時間は店に相談先がありません。
数え方は、営業9〜21時の1時間ずつについて、店の中か電話で相談を受けられる人が1人でもいるかを30日ぶん調べるものです。条件と式は本文のとおりで、同じシフトを置けば誰でも数え直せます。
| シフトのパターン(仮定) | いない時間(月) | うち土日 | 計算機に入れる在店時間(平均) |
|---|---|---|---|
| 店長1人・毎日出る | 120時間 | 32時間 | 8.00時間 |
| 店長1人・週2日休み | 184時間 | 32時間 | 5.87時間 |
| 2人交代(店長+副店長) | 64時間 | 16時間 | 9.87時間 |
| 本部だけ(平日9〜18時) | 162時間 | 96時間 | 6.60時間 |
月は平日22日・土日8日で、祝日は入れていません。休憩中も電話で受けられるとみなしたので、休憩を抜くといない時間はさらに増えます。
2人交代や本部の窓口にしても残る空白
2人交代では、片方が休む日の端の4時間が残ります。店長9〜17時・副店長13〜21時で休みを重ねない置き方でも、月64時間です。本部だけで受けると、平日18時以降と土日の終日が残り、月162時間のうち96時間が土日です。
本部だけの162時間は1店舗あたりの値です。8店舗を本部の1人で受けると、どの店の空白も同じ時間帯に重なります。8店舗分を合わせると月1,296時間です。本部の窓口だけだと、土日はどの店からも相談できません。
厚労省のマニュアル(p.26)も、小さな店舗や営業時間帯によって、現場監督者がその場にいない場合を想定しています。その際は、現場の従業員だけでも基本の対応ができるよう周知しておくことが必要だとしています。
相談を受けられる人がいない時間の代わりの頼み先
時間帯ごとに、受け手を名前で決めます。私が窓口の表を作るときは、図2の赤いマスごとに「その時間に電話・チャットで受ける人」を1人ずつ書き込みます。副店長、その日のリーダー、本部の当番、外部の委託先のどれでも構いません。
県や労働局の相談窓口は、社内の窓口の代わりにはなりません。埼玉県の総合相談窓口は電話が平日9〜19時で、個別事案の判断や交渉はしないと明記しています。厚労省委託の相談室(愛媛労働局の案内)はメールとLINEで24時間受け付けますが、返信は72時間以内が目安と案内されています。どちらも、御社の方針で動く窓口ではありません。
従業員が1人の店は、受け手を置けない時間が必ずあります。解釈事項の問14は、その場合に定めておく対処の内容として、次の例を挙げています。
- 十分に説明しても要求が続けば、一定の時間で退店を求める・電話を切る
- 暴行・傷害・脅迫など犯罪に当たりうる言動は、警察へ通報する
- 現場で対応しきれないときは、本社・本部へ情報を共有して指示を仰ぐ
夜や休みの日の相談の受け取り方と記録
その場で受けた人が短く報告を残し、当番に通知が届き、翌営業日に店長か本部が事実を確かめる流れにします。厚労省のマニュアル(p.26)も、検討に時間がかかるときの対応を書いています。一度お引き取りいただき、後日に会社の方針を伝える形です。
報告に残す項目は、マニュアル(p.31)の「本社・本部まで報告・相談する際に共有すべき内容例」6項目が土台になります。対応日時・場所、対応従業員、要望の内容、顧客等の情報、現場監督者の指示、対応結果です。夜の報告では「現場監督者の指示」が空になるので、「誰に連絡がついたか」を足しておくと翌朝の引き継ぎが速くなります。項目の作り方は報告フォームの作り方にまとめています。
記録は、見られる人を窓口の担当者と当番に絞ります。指針4⑸イは相談者のプライバシーを守る措置を求めています。店のグループチャットで共有する場合も、相談者の名前や事案の中身まで流すかどうかを先に決めておきます。
このサイトで相談するには?
窓口を誰にするか、空いた時間を誰が受けるかは、カスハラ報告ラインの相談で一緒に考えられます(無料で相談する)。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。準備は要りません。
よくある質問
- カスハラの相談窓口は、パワハラの窓口と同じでないといけませんか?
- いいえ。解釈事項 問11は、カスハラの窓口は他のハラスメントの窓口と一体である必要はないとしています。一体で置くことも妨げられていません。
- 従業員が1人だけの店でも、相談窓口は要りますか?
- はい。措置は労働者を雇う事業主すべての義務です。解釈事項 問14は、1人の店では本社・本部へ情報共有して指示を仰ぐなどの対処の内容を定めておくことを例に挙げています。
- 県や労働局の相談窓口を、自社の窓口の代わりにできますか?
- できません。公的な窓口は助言の場で、埼玉県の窓口は個別事案の判断や交渉はしないと明記しています。社内の窓口は自社で定めて周知します。
- 夜に起きた事案は、翌朝に店長が聞けば足りますか?
- その場の危険には足りません。犯罪に当たりうる言動は警察へ通報し、その場で受けた人の記録を残し、翌朝に店長が台帳で事実を確かめる流れにします。
出典と数字の作り方
- 厚生労働省 雇用環境・均等局「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(令和8年4月24日、9月30日改訂・10月1日適用)問11・問14(2026年10月16日確認)
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)4⑵(2026年10月16日確認)
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」(2026-09-08 更新)p.26・p.31(2026年10月16日確認)
- 埼玉県「カスタマーハラスメント総合相談窓口」(2026-07-02 更新)(2026年10月16日確認)
- 愛媛労働局「カスタマーハラスメント、就活ハラスメント悩み相談室のご案内」(厚生労働省委託事業)(2026年10月16日確認)
- カスハラ報告ライン「その場で相談できる上司がいない時間」の計算(条件と式は本文のとおり。シフトは仮定の例)、2026-10-16(2026年10月16日確認)