30分のカスハラ電話で、応答率は何%下がる?コールセンターの対策を計算で確かめた
コールセンターのカスハラ対策で、厚労省の企業マニュアルは、電話で膠着してから30分程度で切ることを一例として示し、具体的な時間は各企業で決めるべきとしています。カスハラ報告ラインの計算では、10席・1時間80件のセンターで1席が30分ふさがると、その30分の応答率は92.4%から88.9%へ約3.5ポイント下がり、次の30分で元に戻ります。切る時間を決める手がかりは、席数と入電数です。(2026年10月時点)
全体の流れと費用はカスハラ対策の義務化ガイドのページにまとめています。
要点
- 厚労省マニュアルは、電話で膠着してから30分程度で切ることを一例とし、具体的な時間は各企業で決めるべきとしています。
- 待てる時間を平均2分と置くと、10席・1時間80件のセンターで30分の電話1本が入った30分の応答率は92.4%から88.9%に下がり、次の30分で戻ります(計算値)。
- アーランC式は1席少ない状態が続いたときの式で、同じ条件の平均待ち74秒→235秒は上限の目安です(計算値)。
- 日本コンタクトセンター協会の調査では、企業50社が現場から報告を受けたカスハラで最も多いのは長時間拘束の76%でした。
目次
コールセンターのカスハラは、何分で電話を切ればよいですか?
法令で決まった分数はありません。厚労省のカスハラ対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)p.29〜30は、30分程度を一例として示しています。応じられない理由を説明しても膠着し、30分程度を超えたら電話を切る、という例です。
同じ箇所は、何度もかけてくる相手には対応できる時間を先に伝え、それより長く対応しないことも挙げています。そのうえで「対応時間(30分、1時間)はあくまで一例」とし、業種・業態を踏まえて各企業で決めるべきだとしています。分数を示しているのは、厚労省マニュアルと業界団体のガイドラインだけです。
| 目安 | 出どころ | 時間 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 膠着したら電話を切る | 厚労省マニュアルp.29〜30 | 膠着から30分程度 | 一例 |
| 対面で退去を求める | 同上 | 膠着から計1時間程度 | 一例(対面) |
| 長時間拘束の判定ライン | 日本コンタクトセンター協会のガイドライン | 1時間以上 | 業界団体の目安 |
| 一定時間で電話を切ることを周知 | カスハラ防止指針 4⑴ロ | 分数なし | 対処の例 |
コールセンターでは、長い電話のカスハラはどれくらい起きていますか?
業界団体の日本コンタクトセンター協会の調査では、長時間拘束が最も多く、企業50社の76%が現場から報告を受けていました。調査は2024年7〜8月に協会の会員企業と従業員へWebで行い、有効回答は企業50社・従業員2,493名です。
従業員が受けたカスハラ(複数回答、n=2,439)では、長時間拘束は48%で4番目でした。上位は暴言・怒声68%、クレームの過剰な繰り返し52%、話のすり替え・揚げ足取り51%です。何をカスハラとするかは回答者に任せ、時期も区切っていません。そのため、発生率ではなく「経験したことがある割合」として読みます。
カスハラ防止指針も、手段や態様の5類型の1つに「拘束的な言動」を挙げ、例として「電話での拘束」を示しています。協会のガイドラインは長時間拘束を1時間以上としており、マニュアルの30分より長い線です。どちらを採るかは、次の節の計算のように席数と入電数で変わります。
30分の電話1本が応答率に与える影響
10席・1時間80件のセンターで1席が30分ふさがると、その30分の応答率は92.4%から88.9%へ約3.5ポイント下がります(計算値)。その30分に入る約40件のうち、あきらめて切れる電話が1.4本増え、次の30分で応答率は元に戻ります。
平均処理時間は6分、待てる時間は平均2分と置き、同じ乱数で「30分の電話あり・なし」を2,000回ずつ比べました。センターの数字はすべて仮定の例です。席が少なく稼働の高いセンターほど、下がり方が大きくなります。
| センターの例(仮定) | その30分の応答率 | あきらめる電話の増加 | 次の30分の応答率 |
|---|---|---|---|
| 5席・1時間40件 | 85.7%→77.5% | 1.6本 | 85.4%→85.6% |
| 10席・1時間70件 | 95.4%→92.8% | 0.9本 | 95.5%→95.5% |
| 10席・1時間80件 | 92.4%→88.9% | 1.4本 | 92.1%→92.3% |
| 30席・1時間260件 | 96.3%→95.3% | 1.2本 | 96.3%→96.3% |
あきらめる人がいると、待ち時間はあまり延びません。10席・80件の平均待ちは7秒から10秒で、その代わりにつながらない電話が増えます。待てる時間の2分は仮定で、かけ直しは数えていません。30分の電話が2本重なる場合も、この計算には入っていません。
1席少ない状態が続いたときの待ち時間
10席・1時間80件のセンターなら、1席少ない状態が続いたときの平均待ちは74秒から235秒です(計算値)。席数を決めるときに使うアーランC式の値です。この式は、状態が落ち着いたあとの平均を出します。30分では待ちの列が育ちきらず、あきらめる人も入っていないので、30分の電話1本の影響としては大きすぎます。長い電話が重なって1席少ない時間が続いたときの、上限の目安として読んでください。
| センターの例(仮定) | 稼働 | 平均待ち(全席→1席減が続いたとき) | 20秒以内に出られる割合 |
|---|---|---|---|
| 5席・1時間40件 | 80% | 199秒→際限なく伸びる | 48%→0% |
| 10席・1時間70件 | 70% | 27秒→69秒 | 81%→66% |
| 10席・1時間80件 | 80% | 74秒→235秒 | 63%→38% |
| 30席・1時間260件 | 87% | 31秒→56秒 | 72%→61% |
計算はPythonの標準ライブラリだけで動きます。アーランC式の要点は次の数行で、条件と式は本文のとおりです。
def erlang_c(n, a): # n 席、a = 1時間の入電数 × 処理時間(時間)
s, term = 0.0, 1.0
for k in range(n):
term = term * a / k if k else 1.0
s += term
top = term * a / n * n / (n - a)
return top / (s + top) # 待たされる確率
asa = erlang_c(n, a) * AHT / (n - a) # 平均待ち時間
5席・1時間40件では、残る4席に対して負荷が4.0アーランで、状態が続けば待ちは減らなくなります。実際の30分では、前の節のとおり応答率が85.7%から77.5%に下がる形で表れます。
電話を切る時間の決め方と、記録への残し方
まず席数と混む時間帯の入電数から「1席がふさがってよい時間」を決め、SVに引き継ぐ時刻と切る時刻を段階で定めます。10席・80件の例なら、30分の電話1本で応答率が約3.5ポイント下がります。その幅を許せるかどうかで、SVに引き継ぐ時刻を30分より前に置くかを決められます。
マニュアルp.16〜17の裁判例②(東京高裁令和4年11月22日判決の要約)が参考になります。このコールセンターは手順を作って周知していました。わいせつ電話は直ちにSVに転送し、同じ日の同じ人からの2回目以降は担当者の判断で切ってよい、大声のときはヘッドセットを外してよい、という内容です。判決は、使用者が安全配慮の義務に違反したとは認めませんでした。
私が記録の仕組みを作るときは、通話ごとに5つを残します。受けた時刻、膠着と判断した時刻、SVに引き継いだ時刻、切った時刻、録音のファイル名です。時刻があれば、決めた時間で切れたかを月ごとに数えられます。
報告の項目は報告フォームの作り方に、受託のセンターの形は30席のコールセンターの導入例(イメージ)にまとめています。受託のセンターでは、切る時間を委託元と先に決めておくと、その場で迷いません。
このサイトで相談するには?
長い電話を切る時間の決め方と、その記録の残し方は、カスハラ報告ラインの相談で一緒に考えられます(無料で相談する)。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。準備は要りません。
よくある質問
- 30分は、法律で決まった時間ですか?
- いいえ。厚労省マニュアルは30分・1時間をあくまで一例とし、具体的な時間は業種・業態を踏まえて各企業で決めるべきとしています。
- 30分たつまでは、電話を切ってはいけませんか?
- いいえ。マニュアルは、身の危険を感じたら定めた時間に達していなくても警察への通報などに進んでよいとしています。時間は上限の目安です。
- 席の少ないセンターほど、長い電話の影響は大きいですか?
- はい、今回の計算ではそうでした。5席・1時間40件では、30分の電話1本でその30分の応答率が85.7%から77.5%に下がりました(計算値)。
- 受託のコールセンターでは、切る時間を誰が決めますか?
- 措置を講じるのは従業員を雇う事業主です。委託元と先に決めておくと現場が迷いません。法第33条第3項は、他の事業主から協力を求められたら応じる努力義務を定めています。
出典と数字の作り方
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」(2026-09-08 更新)p.16〜17 裁判例②、p.29〜30 拘束的な言動の対応例(2026年10月16日確認)
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)2⑸ロ・4⑴ロ(2026年10月16日確認)
- e-Gov 法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」第33条(2026年10月16日確認)
- 日本コンタクトセンター協会(業界団体)ニュースリリース「コールセンターのカスハラ対策 事業者向けガイドラインを公開」(2025-03-12)(2026年10月16日確認)
- 日本コンタクトセンター協会「コンタクトセンターにおけるカスタマーハラスメント対策ガイドライン(第二版)」案内ページ(2026-09-01 改定)(2026年10月16日確認)
- 日本コンタクトセンター協会「コールセンターにおけるカスタマーハラスメントに関するアンケート調査」(2024年7〜8月、企業50社・従業員2,493名、Web)(2026年10月16日確認)
- カスハラ報告ライン「30分の通話1本が応答率と待ち時間に与える影響」の計算(条件と式は本文のとおり。センターの数字は仮定の例)、2026-10-16(2026年10月16日確認)