棚卸は何分かかる?200品目の転記とスマホ読み取りの操作を数え、KLMで秒に直した

200品目の棚卸で、紙に数えた数をExcelへ転記する作業は、操作の分解(KLM)で1品目約7.5秒、全部で約25分です。スマホで読み取る試作では転記が0回になり、現場の記録(計1,040回)が同じKLMで約15分でした。紙に書く時間は秒に直していないため、約25分と約15分は同じ範囲の比較ではなく、約10分短くなるとは言えません。物を数える時間はどちらも同じです(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は在庫管理のExcel脱却のページにまとめています。
要点
- 紙に数えた数をExcelへ打ち込む作業は、KLMの標準時間で1品目約7.5秒、200品目で約25分です(計算値)。
- 同じ前提で500品目は約62分、1,000品目は約2時間、3,000品目は約6時間に延びます。
- 試作のスマホ棚卸では転記が0回、現場の記録はKLMで約15分でした。紙の側は書く時間を含まず、25分と15分は引き算できません。
- 物を数える時間はどちらも同じとみなしたので、なくなるのは転記と照合の手順です。数える作業は減りません。
目次
200品目の棚卸は、何分かかりますか?
物を数えたあとの転記だけで、200品目なら約25分です。紙に数えた数をExcelへ打ち込む1品目を、操作の分解で数えると約7.5秒になります。スマホで読み取って数を入れるやり方なら、この転記はなくなります。
物を数える時間は、どちらのやり方でも同じとみなしました。棚の前で箱を数える作業は、紙とスマホのどちらで記録しても変わらないからです。差が出るのは、数えたあとに紙からExcelへ打ち直す手順と、帳簿の数と並べて差を探す手順です。
200品目では次のとおりです。紙に書く時間はKLMに標準の値がないので、秒に直していません。そのため、事務所の転記(約25分)と現場のスマホの記録(約15分)は並べず、別々の行で読んでください。
| 手順(200品目) | 紙に数えてExcelへ転記 | スマホで読み取る |
|---|---|---|
| 物を数える | 同じとみなす | 同じとみなす |
| 現場で記録する | 紙に書く 200回(秒に直していない・時間は不明) | 読み取り・キー・タップ 計1,040回・約15分(数え直し8品目を含む) |
| 事務所で転記する | キー3,400回・約25分 | 0回 |
| 帳簿との差を探す | 差の列を作って見る | 記録した時点で一覧に出る |
検索の上位の記事は、事前の準備や2人1組で数えるといったコツを並べています。製品のサイトには「何日が何時間に」という数字も載っていますが、品目数や数え方の条件は書かれていません。そこで同じ200品目を、手順ごとに数えて比べました。
紙に数えてExcelへ転記する1品目は、なぜ約7.5秒なのですか?
キーを17回押し、紙を読む・画面と見比べるという考える時間が2回入るからです。Keystroke-Level Model(KLM)は、操作の数から作業の時間を見積もる方法です。1980年にCard・Moran・Newellが発表しました。論文の表では、キー1回は0.28秒(秘書ではない平均的な打ち手)、考えたり見比べたりする1回は1.35秒です。
1品目の転記は、次の5つの手順に分けて数えました。
- 紙の数を読む(1.35秒)
- Ctrl+Fで検索欄を出し、6桁の品目コードを打ち、Enterで探してEscで閉じる(キー10回)
- Tabで数量の列へ移る(キー3回)
- 3桁の数を打ち、Enterで決める(キー4回)
- 画面と紙を見比べる(1.35秒)
キー17回で4.76秒、紙を読む1回と見比べる1回で2.70秒、合わせて約7.46秒です。同じ前提で品目数を変えると、500品目は約62分、1,000品目は約2時間、3,000品目は約6時間です。在庫てちょうの柱のページで「Excelのままでよいのはどこまでか」を考えるときも、この同じ値を使っています。
スマホで読み取る棚卸では、操作は何回になりますか?
試作の棚卸モードでは、1品目が読み取り1回・キー3回・タップ1回でした。架空の200品目(数量はすべて3桁)を棚の順に記録し、帳簿と差の出た8品目だけを数え直しました。合計は読み取り208回・キー624回・タップ208回の計1,040回です。事務所での転記は0回でした。
この操作も、紙の側と同じKLMで秒に直しました。1品目の記録を、読み取り1回・タップ1回をそれぞれ指し示し(P、1.1秒)、数のキー3回(0.84秒)、数を確かめる考える時間1回(1.35秒)に分けると約4.39秒です。208回の記録で約15分になります。読み取りを指し示しとみなしたのは仮定で、カメラを向けてピントが合うまでの時間は、ラベルの大きさと明るさで変わります。
数えたのは、ブラウザを自動で動かすPlaywrightに試作の画面を操作させ、画面が受け取ったキーとタップの回数です。カメラは使わず、ラベルを読んだ結果を画面に渡す呼び出しを1回の読み取りとしました。試作では、帳簿の数を数え終わるまで出しません。記録した時点で帳簿と違う品目だけが一覧に残るので、数え直す品目はそこから選べます。
手順と前提はこの節に書いたとおりで、乱数の種を固定してあるので、同じ前提で動かすと同じ回数が出ます。在庫てちょうの試作は、この形の画面を御社の品目と棚の名前で作るところから始めます。
棚卸の時間を短縮するには、どの手順から減らせばよいですか?
先に減らすのは転記と照合です。物を数える作業は、どのやり方でも残ります。紙の棚卸では、数えた数を2回扱います。現場で紙に書き、事務所でExcelに打ち直す流れです。
転記のあとには、打ち間違いを探す照合も要ります。KLMの7.46秒には見比べを1回入れました。それでも、帳簿と差の出た品目が打ち間違いか本当の差かは、紙を見直さないと分かりません。
スマホで記録すれば、数えた数がそのまま記録になり、打ち間違いの入り込む手順が1つ減ります。毎月の棚卸は、帳簿と差の出た品目の数え直しが中心になります。決算期末の実地棚卸では、どちらのやり方でも全品を数えます。
差の出た品目の原因の切り分けは、在庫が帳簿と合わない原因の記事で扱っています。バーコードのない部品や端材は、自社のQRラベルの付け方を先に読むと、読み取りの準備の見当がつきます。
この試算と実験には、どんな限界がありますか?
秒に直したのは事務所の転記とスマホの記録の操作で、棚卸全体の時間ではありません。物を数える時間と紙に書く時間は、KLMに標準の値がないので入れていません。紙の側に書く時間が入っていないため、スマホの約15分と紙の約25分を引き算して「10分短い」とは読めません。紙に書く時間を1品目3秒と仮に置くと200品目で約10分で、その場合の紙は現場約10分+事務所約25分です(仮置きの値で、実測ではありません)。カメラでラベルを読む時間は、指し示し1回分(1.1秒)と仮定しました。
KLMは、慣れた人が間違えずに操作したときの時間を見積もる方法です。Cardらの論文では、10のシステムで試した予測の誤差は、平均の実行時間の21%(二乗平均)でした。7.46秒も、目安としておよそ6秒から9秒の幅があると読むのが妥当です。
試作の回数は、架空のデータでの値です。数量を3桁にそろえ、差のある品目を8つと決めて動かしました。実際の倉庫では、数量の桁、差の出る品目の数、ラベルの貼り具合で回数が変わります。1つのラベルで複数の箱を数えるときや、ばら物を重さで数えるときは、別の画面が要ります。
このサイトで相談するには?
たとえば、月末に3人で半日かけて数えて転記している庫があれば、その庫だけ棚卸の画面で試し、転記の手順が減るかを見られます。
棚卸の画面は、御社の品目と棚の呼び名に合わせた試作を、こちらがお見せします。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。準備は要りません。無料で相談する
よくある質問
- スマホで読み取れば、棚卸は丸一日から数時間になりますか?
- いいえ、そうとは言えません。今回の比較でなくなるのは200品目あたり約25分の転記で、物を数える時間は変わらず、現場の記録の操作(約15分)は残るからです。
- 転記を2人で読み合わせれば、速くなりますか?
- いいえ。1人あたりの時間は分けられても、延べの時間は減りません。読み上げる人と打つ人の両方の手が要ります。
- バーコードのない品目は、どう読み取りますか?
- 自社でQRラベルを作って棚や箱に貼ります。ラベルを貼る手間は最初の1回だけで、棚卸のたびにはかかりません。
- 棚卸のとき、帳簿の数を画面に出してもよいですか?
- 試作では数え終わるまで出しませんでした。帳簿の数を見ると、数えずに同じ数を入れてしまうおそれがあるからです。
出典
- Stuart K. Card, Thomas P. Moran, Allen Newell「The Keystroke-Level Model for User Performance Time with Interactive Systems」(Communications of the ACM 23巻7号、1980年7月。Table II の操作時間、Carnegie Mellon University の Newell 文書の写し)(2026年10月16日確認)
- David Kieras「Using the Keystroke-Level Model to Estimate Execution Times」(University of Michigan、1993年。KLM の操作時間の解説)(2026年10月16日確認)
- 自分の試算と実験:転記の KLM の試算と、架空の200品目を試作の棚卸モードで Playwright に記録させて操作を数えた(2026年10月16日)(2026年10月16日確認)


