在庫が帳簿と合わないのはなぜ?差異を7つの原因に分け、確かめる順番を決める

在庫の差異(帳簿の数と実際の在庫のずれ)の原因は7つに分けられ、起きる機会がいちばん多いのは日々の入出庫の記録漏れと誤記です。入出庫1件の記録漏れが1%でも、1品目に月20件の出入りがあれば、月末には約18%の品目が帳簿と合わなくなります(300品目のシミュレーション)。在庫てちょうの主宰が、7つの原因の見分け方と確かめる順番を表と図にしました(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は在庫管理のExcel脱却のページにまとめています。
要点
- 在庫の差異の原因は、記録漏れ・誤記・単位違い・返品や破損の未処理・保管場所違い・数え間違い・反映の遅れの7つに分けられます。
- 入出庫1件の記録漏れが1%なら、1品目に月5件の出入りで4.9%、月20件で18.1%の品目が月末に合わなくなります(300品目のシミュレーション)。
- 合わない品目の数は、おおよそ月の入出庫の総件数×記録漏れの確率で、月1,500件・漏れ1%なら約15品目です(計算値)。
- 棚卸で帳簿を直さずに3か月続けると、合わない品目の割合は1か月目の9.5%から25.9%に増えます(月10件・漏れ1%の計算値)。
目次
在庫が帳簿と合わない原因は、何がいちばん多いのですか?
在庫の差異の原因は7つに分けられ、起きる機会がいちばん多いのは、日々の入出庫の記録漏れと誤記です。違いは回数にあります。数え間違いが入るのは棚卸の日だけです。入出庫の記録は、300品目に1品目月10件の出入りなら月3,000件あり、そのたびに漏れや打ち間違いが入りえます。
7つの原因は、差の向き(帳簿が多いか、実在庫が多いか)と、差の形で見分けられます。差の形とは、決まった数の倍数である・2つの品目で逆向き・翌月に消える、といった特徴です。
| 原因 | 差の向き | 差の形(見分け方) |
|---|---|---|
| 記録漏れ | 出庫の漏れは帳簿が多い、入庫の漏れは実在庫が多い | 出入りの多い品目に散らばる |
| 誤記(数量・品番) | 両方 | 似た品番の2品目で同じ量の+と−、10倍のずれ |
| 単位違い(箱とバラ) | 両方 | 差が箱の入数で割り切れる |
| 返品・破損の未処理 | 破損は帳簿が多い、返品の戻りは実在庫が多い | 返品や破損の多い品目に偏る |
| 保管場所違い | 場所ごとに+と− | 品目の合計では合う |
| 数え間違い | 両方 | 数え直すと差が変わる |
| 反映の遅れ | 両方 | 締め日の入出庫と同じ量で、翌月に消える |
差の向きだけでは原因を決められません。帳簿が多い品目は、出庫の記録漏れでも、破損品の廃棄の記録漏れでも起きます。向きと形を合わせて見ると、候補は2つか3つに絞れます。
記録漏れの確率が同じでも、件数が増えると差異率はどう変わりますか?
入出庫1件の記録漏れの確率が同じでも、1品目の出入りが多いほど、月末に合わない品目の割合は大きくなります。記録漏れが1%なら、1品目に月5件の出入りで4.9%、20件で18.1%、40件で32.4%でした。20件までは、ほぼ件数に比例します。
これは私がPythonで作ったシミュレーションの値です。300品目それぞれに1か月分の入出庫を流し、1件ごとに決まった確率で帳簿への記録が漏れるとしました。入庫と出庫は半々、1件の数量は1〜10個です。条件ごとに200回くり返した平均で、乱数の種は20261016に固定しています。
品目の数が増えると、差異率は変わらなくても、合わない品目の数が増えます。記録漏れ1%・1品目月5件のとき、100品目なら約5品目、300品目なら約15品目、1,000品目なら約49品目でした。おおよそ「月の入出庫の総件数×記録漏れの確率」です。件数が倍なら、ほぼ倍です。
| 条件(記録漏れ1%) | 合わない品目の割合 | 合わない品目の数 |
|---|---|---|
| 300品目・1品目月5件(月1,500件) | 4.9% | 約15 |
| 300品目・1品目月10件(月3,000件) | 9.5% | 約29 |
| 上の条件で、棚卸で直さずに3か月 | 25.9% | 約78 |
計算の式と前提はこの節に書いたとおりで、同じ前提で計算すれば再現できます。理論値1−(1−p)^kとは、1品目月20件までなら0.1ポイント以内で合いました。ただし、どの入出庫も同じ確率で漏れると仮定しています。実際の現場では、漏れの確率は品目や担当者ごとに違います。
差の出た品目は、どの順番で確かめればよいですか?
手間の小さい原因から確かめ、差が説明できたところで止めます。数え直し、締め日の入出庫、保管場所、入数、似た品番、返品と破損の順に見ます。残った差を記録漏れとして伝票と照らします。
この順番にしたのは、伝票との照合にいちばん手間がかかるからです。納品書や出荷伝票を1件ずつ帳簿と並べる作業は、差の出た品目が多いと終わりません。数え直しや入数の割り算で説明できる差を先に除いておくと、伝票と照らす品目が減ります。
確かめた結果は、品目ごとに「原因」の欄を作って残します。3か月分たまると、どの原因が多いかが分かり、直す場所が決まります。「不明」ばかりなら、記録の仕組みを疑います。
在庫の差異率は、どう計算して記録すればよいですか?
差異率は「品目ベース」と「数量ベース」の2つを、毎回同じ式で出します。品目ベースは合わなかった品目の数÷数えた品目の数、数量ベースはずれた数量の合計÷実在庫の数量です。式を途中で変えると、前回と比べられなくなります。
品目ベースは、記録の仕組みの傷み具合を見るのに向きます。数量ベースでは、ネジ1本のずれも機械1台のずれも同じ1になります。単価をかけた「金額ベース」も一緒に出すと、実態に近づきます。
解説記事には「5%以下が目安」とするものがありますが、出典は示されていません。前回の棚卸の値と比べて、増えたか減ったかを見るほうが確かです。数字は毎回残します。
決算の在庫の評価額も、数量が合っていることが前提です。法人税法施行令の第28条が定める評価の方法(先入先出法・最終仕入原価法など)は、どれも数量がずれれば評価額もずれます。方法ごとの違いは決算の在庫の評価で計算しました。差を処理する仕訳は、顧問税理士に確かめてください。
記録漏れと誤記を減らすには、何を変えればよいですか?
入出庫が起きたその場で、その人が記録する形に変えます。紙にメモして後でExcelへ打ち込む形では、メモの書き忘れ・打ち込みの忘れ・打ち間違いの3か所で、漏れや誤りが入ります。
共有フォルダのExcelを何人かで開く形も、記録漏れの入り口になります。在庫てちょうの主宰の試算では、3人が1日10回ずつ、1回3分在庫表を開くとします。すると1回あたり11.8%の確率で先にほかの人が開いていて、読み取り専用になり、1日では約3.5回です。そのとき「後で入れよう」とした分が漏れます。
在庫てちょうでは、スマホでバーコードやQRラベルを読み取り、その場で在庫数が変わる自社専用の在庫管理アプリを作ります。品番を一覧から選ばずに済むので、似た品番の取り違えが減ります。箱とバラの入数は品目ごとに登録しておき、読み取ったときに換算します。バーコードのない部品には自社のQRラベルを貼ります。
Excelをやめる目安は在庫管理のExcel脱却にまとめました。読み取りにしても、数量を打ち間違えることはあります。大きな数を入れたときだけ確かめの画面を出すなど、誤記の入り口も残さないようにします。
このサイトで相談するには?
たとえば、毎月の棚卸で帳簿と合わない品目が十数点出るなら、その入出庫の記録を日付順にさかのぼる画面から始められます。
差が入りやすい所の切り分けは、主宰が今の記録の流れに合わせて進めます。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。準備は要りません。無料で相談する
よくある質問
- 在庫の差異率は、何%までなら問題ありませんか?
- 決まった基準はありません。解説記事にある「5%以下」などの目安には出典が示されていないため、自社の前回の棚卸の値と比べて増えているかを見ます。
- 棚卸を毎月しても、差異はなくなりませんか?
- なくなりません。棚卸で帳簿を直しても、翌月の入出庫で記録漏れが入れば、また合わなくなります。1品目月10件・漏れ1%で直さずに続けると、3か月で約2.7倍に増えます(計算値)。
- 差の原因が分からないときは、どう処理しますか?
- 数量は実在庫に合わせて帳簿を直し、原因の欄に「不明」と書いて残します。会計の処理(勘定科目)は顧問税理士に確かめます。
- スマホで読み取れば、記録漏れはなくなりますか?
- 減らせますが、0にはなりません。読み取らずに持ち出せば漏れます。入出庫の場所に読み取りの端末を置き、読み取らないと出せない流れにするのが近道です。
出典
- 法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第28条(棚卸資産の評価の方法)、e-Gov 法令検索(2026年10月16日確認)


