見積書の有効期限とスライド条項は?材料が値上がりしたときの書き方と、利益の削られ方

見積書の有効期限は、日数を決めた共通の決まりがなく、会社で決めて見積書に書きます。材料が値上がりしたときに金額を相談し直す条項(スライド条項)も、同じ見積書に書いておけます。見積額100円・利益10円の架空の見積で、原価の50%が材料費なら、材料が10%上がると利益は5.5円に減り、45%削られます。70%なら20%の値上がりで赤字です。書き方の例と、建設工事の条文を号まで読みます(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は製造業の見積の自動化のページにまとめています。
要点
- 見積書の有効期限に共通の日数はなく、材料の値段が動きやすい品物ほど短く、会社で決めて書きます。
- 見積額100円・利益10円の架空の見積で、材料費が原価の50%なら、材料が10%上がると利益は45%減ります。
- 材料費が原価の70%だと、材料が15.9%上がった時点で利益が0円になり、20%上がると赤字です。
- スライド条項は、何を基準に何%動いたら金額を相談し直すかを、見積書に1行で書きます。
- 建設工事なら、価格変動の定めは契約書に書く事項で(建設業法第19条第1項第8号)、資材高騰のおそれは契約までに知らせます(第20条の2第2項)。
目次
見積書の有効期限は、何日にすればよいですか?
会社で決めて、見積書に書きます。この記事で読んだ建設業法の第19条から第20条の2には、見積書の有効期間の日数を定めた文は見当たりませんでした。ほかの法令に日数の定めがあるかは、この記事では調べていません。
決め方の目安は、材料の値段の動きやすさです。鋼材や銅のように相場で動く材料が原価の大半なら短く、動きの小さい部品が中心なら長めにします。期限を書くと、期限が過ぎた注文を今の単価表で出し直す理由になります。出し直しが「値上げ」ではなく「期限切れ」の説明になるので、お客様との話が短く済みます。
見積番号の横に「有効期限:見積日から30日」のように1行入れるだけで足ります。30日は例で、この記事が勧める日数ではありません。
出し直した見積は、元の見積番号に版の記号を付けて残すと、どの金額がいつの単価表で出たかをあとから追えます。たとえば「Q-0412」の出し直しなら「Q-0412-2」です。古い版を消さずに残しておけば、「前の見積と金額が違う」と言われたときに、材料の単価がいつ変わったかを見せて答えられます。
材料が値上がりすると、利益はどれだけ削られますか?
材料費の割合が高いほど、削られ方は急です。見積額100円、利益10円(見積額の10%)、原価90円の架空の見積で、原価のうち材料費が占める割合と、材料の値上がり幅を変えて計算しました。見積額は据え置きの前提です。利益は、10円から「90円×材料費の割合×値上がり幅」を引いて出します。
| 材料費の割合(原価に対して) | 5%上がった | 10%上がった | 20%上がった | 利益が0円になる値上がり幅 |
|---|---|---|---|---|
| 30% | 8.65円 | 7.30円 | 4.60円 | 37.0% |
| 50% | 7.75円 | 5.50円 | 1.00円 | 22.2% |
| 70% | 6.85円 | 3.70円 | −2.60円 | 15.9% |
表の数字は、値上がり後に残る利益です。材料費が原価の50%なら、材料が10%上がると利益は10円から5.5円に減り、45%が削られます。70%だと、15.9%の値上がりで利益がなくなり、20%で赤字になります。同じ10%の値上がりでも、材料費の割合が30%なら利益の減りは27%、70%なら63%です。
この計算は scripts/figs/validity_slide.py を動かせば再現できます。実際の見積では、値上がりした分を在庫で吸収できる期間もあれば、仕入れ先の値決めが遅れて響くこともあります。表は、有効期限の長さが利益にどう響くかを見るための単純な計算です。
スライド条項は、見積書にどう書けばよいですか?
基準と割合と、見直す方法の3つを1行にします。例は次のとおりです。
主な材料(ステンレス板)の仕入れ値が、見積の日から10%以上動いた場合は、金額を相談し直します。
基準にする材料を決めておくのは、後から「どの値段を見るのか」で揉めないためです。割合は、上の表で自社の利益が半分になる値上がり幅を目安に置きます。材料費が原価の50%なら、10%の値上がりで利益が45%減るので、10%は妥当な線です。
「金額を自動で変える」と書くと、下がったときも自動で下げる約束になります。見直しの方法は、まず相談する、までにとどめるほうが、実務では使いやすくなります。
建設工事の契約では、条文は何を求めていますか?
建設業法の第19条第1項第8号は、契約書へ書く事項として「価格等の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め」を挙げています。つまり建設工事では、価格が動いたときに代金を変えるか、変えるならどう計算するかが、契約書に書く事項の1つです。
第20条の2第2項は、資材の価格の高騰などのおそれがあると建設業者が認めたときに、契約までに注文者へ知らせるよう定めています。知らせたあとに事象が起きたら、第3項で、第19条第1項第7号か第8号の定めに従った代金の変更などの協議を申し出られます。申出を受けた注文者は、根拠を欠くなど正当な理由があるときを除き、誠実に協議へ応じるよう努めます(第4項)。
当てはまらない場合もあります。この条文は建設工事の請負契約の話で、製品の製造や販売の見積には当たりません。製造業の見積書では、法律の義務ではなく、自社の決まりとして書きます。第4項の注文者の側は努力義務で、応じなかったことだけで違法になると読むのは誤りです。
見積帳場では、有効期限と値上がりをどう扱いますか?
見積帳場の計算ルールには、材料の単価表に「更新日」を持たせ、見積日と更新日が離れたら画面に印を出す形を入れられます。見積の控えに有効期限が自動で入り、期限を過ぎた見積を開くと、今の単価表で出し直した金額が並びます。
スライド条項の文面は、品目ごとに変えられます。材料費の割合が高い品目は基準を厳しく、割合が低い品目は書かない、といった使い分けも、計算ルールに置けます。積み上げの式は見積単価の計算方法の記事、見積と実際の差の見方は見積と実際の差の記事にあります。
見積の有効期限と値上がりの決まりを作るには?
何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。準備は要りません。有効期限の書き方だけでも、無料で相談するのページから連絡できます。
よくある質問
- 見積書の有効期限は、何日にすればよいですか?
- 共通の日数はありません。材料の値段が動きやすい品物ほど短くし、期限を過ぎたら今の単価表で出し直す、と決めておくと迷いません。
- スライド条項は、製造業の見積書にも書けますか?
- 書けます。基準にする材料と、何%動いたら相談し直すかを書きます。建設業法の条文は、建設工事の契約に当たる話です。
- 有効期限を過ぎた見積に注文が来たら、どうしますか?
- 今の単価表で出し直した金額を伝えます。期限を書いておけば、金額が変わる理由をその場で説明できます。
この数字はどう出したか
このページの実験と計算の数字は、実際のお客さまの取引ではなく、架空のデータや架空の入力例から主宰が出したものです。計算はPythonのコード(scripts/figsの再現コードと、画面の計算機と同じ式のsrc/lib/calc.ts)で組み、同じ入力なら同じ数字が出ます。
更新 ・ 事実の確認
出典
- 見積帳場の計算(2026年10月16日)。見積額100円・利益10円・原価90円の架空の見積で、材料費の割合と値上がり幅ごとの利益を出した。scripts/figs/validity_slide.py(2026年10月16日確認)
- e-Gov 法令検索「建設業法」(昭和24年法律第100号)第19条第1項第8号、第20条の2第2項〜第4項(2026年10月16日確認)


