試作と量産で見積単価に違いが出るのはなぜ?段取りの按分と、総額が逆転しない数量別単価表

試作1個と量産1,000個の見積単価の違いは、大部分が段取りの時間を何個で割るかから生まれます。計算機の入力例と同じ架空の条件(時間単価3,651円/時、段取り90分、1個12分、材料400円)では、1個6,606円、10個1,678円、100個1,185円、1,000個1,136円です。数量別単価表を1・10・100個の段で切ると、3〜9個と71〜99個で、次の段の数量で頼むより総額が高くなります。段の境目で総額がつながる式にすれば、逆転は起きません(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は製造業の見積の自動化のページにまとめています。
要点
- 試作と量産の単価の差の大部分は段取りの按分で、架空の例では1個6,606円のうち83%が段取りの分でした。
- 同じ架空の例で10個1,678円、100個1,185円、1,000個1,136円となり、44個から段取りの割合が10%を切ります。
- 1・10・100個の段で単価表を切ると、3〜9個と71〜99個は次の段で頼むより総額が高く、9個では42,674円の差です。
- 段の下限の総額に1個ごとの額を足す表にすると逆転は起きず、架空の例では段取り5,476円+1個1,130円×数量と同じ形です。
目次
試作1個と量産1,000個で、見積単価はどれだけ違いますか?
架空の例では、1個のときの単価6,606円に対して1,000個では1,136円で、約5.8倍の差があります。差の大部分は段取りの按分で、1個のときは単価の83%が段取りの分です。材料と加工の額は、数量によらず1,130円で変わりません(見積帳場の計算)。
例の前提は、アワーレートと見積単価の計算機の入力例と同じ架空の値です。人と設備の時間単価の合計が3,651円/時、材料400円、1個の加工12分、段取り90分で、管理費と利益は0にしています。数量を増やすほど、段取りの分だけが小さくなります。
| 数量(個) | 段取りの分(円/個) | 材料+加工(円/個) | 単価(円/個) | 段取りの割合(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 5,476 | 1,130 | 6,606 | 83 |
| 10 | 548 | 1,130 | 1,678 | 33 |
| 100 | 55 | 1,130 | 1,185 | 5 |
| 1,000 | 5 | 1,130 | 1,136 | 0.5 |
表の円は四捨五入した値です。そのため、内訳の和と単価は1円ずれる行があります。
段取りの按分で、見積単価はどんな式になりますか?
1個の単価は A + B ÷ 数量 で、数量が増えるほど材料+加工の額Aに近づきます。Bは1回の段取りの額です。架空の例では A = 400 + 3,651 × 12 ÷ 60 = 1,130円、B = 3,651 × 90 ÷ 60 = 5,476円 です。
段取りの割合が10%を切るのは、B ÷ 数量 が A ÷ 9 より小さくなる44個からです。曲線は数十個までで急に下がり、そこから先はほとんど平らになります。
この式に入っていないものもあります。試作では、加工プログラムの作成や初品の検査、材料の購入単位の端数も乗ることがあります。量産でも、1,000個を10回に分けて作るなら段取りは10回分です。私が計算ルールに書き出すときは、段取りの回数を数量とは別の欄にします。ほかの費用も含めた積み上げの式は見積単価の計算方法に、めっきで3つの出し方を比べた例はめっきの重量・面積・個数の単価に、製造業の見積全体は柱のページにあります。
1・10・100個の段で数量別単価表を作ると、何が起きますか?
3〜9個と71〜99個で、次の段の下限の数量で頼むほうが安くなる、総額の逆転が起きます。段の単価を段の下限の単価(6,606円・1,678円・1,185円)で決めたときの、架空の例での結果です。
9個なら6,606円 × 9 = 59,454円で、10個の16,780円より42,674円高くなります。99個は166,122円で、100個の118,500円より47,622円高い計算です。発注する側から見ると、9個の注文を10個に増やしたほうが安く済みます。段の切り方を変えて計算すると、どの切り方でも逆転は残りました。
| 段の切り方(個) | 逆転する数量(個) | 差がいちばん大きい数量と差 |
|---|---|---|
| 1・10・100 | 3〜9、71〜99 | 99個で47,622円 |
| 1・10・100・1,000 | 3〜9、71〜99、959〜999 | 999個で47,815円 |
| 1・5・10・50・100 | 2〜4、8〜9、37〜49、96〜99 | 49個で20,222円 |
| 1・3・10・30・100 | 2、6〜9、24〜29、91〜99 | 99個で11,487円 |
総額が逆転しない数量別単価表は、どう作りますか?
段ごとに「段の下限の総額」と「1個増えるごとに足す額」の2つを書き、段の境目で総額がつながるようにします。記号は次の4つを使います。
L:その段の下限の数量u:その段の単価L'・u':次の段の下限の数量と単価m:1個増えるごとに足す額
段の中の総額は L × u + (数量 − L) × m です。足す額は m = (L' × u' − L × u) ÷ (L' − L) で決めます。
架空の例で計算すると、足す額はどの段も約1,130円で、9個は15,650円、99個は117,370円になります。
| 段(個) | 段の下限の総額(円) | 1個増えるごとに足す額(円) |
|---|---|---|
| 1〜9 | 6,606 | 1,130 |
| 10〜99 | 16,780 | 1,130 |
| 100〜999 | 118,500 | 1,131 |
足す額は、材料+加工の1,130円とほぼ同じです。つまりこの表は、見積書に「段取り5,476円(1回)」と「1個1,130円 × 数量」の2行を書くのと同じ形になります。
段ごとに単価を1つだけ決める表のままで逆転を防ぐには、(L' − 1) × u ≦ L' × u' が要ります。架空の例では、1個の段の次は2個、10個の段の次は13個までに刻む必要があり、現実的ではありません。段取りが単価の大半を占める品物では、2行の形か総額の上限の注記を使います。
自社の数量別単価表で、逆転を確かめるには?
段の境目ごとに「次の段の下限より1個少ない数量 × その段の単価」と「次の段を下限の数量で頼んだ総額」を比べます。前のほうが大きければ、逆転しています。今の表の数字だけで確かめられます。
- 段ごとに、下限の数量と単価を並べる
- 境目ごとに、(次の段の下限 − 1)× 単価と、次の段の下限 × 次の段の単価を計算する
- 前のほうが大きければ、次の段の総額 ÷ 単価を超える最小の整数から逆転が始まる
- 逆転する段は、2行の形にするか、次の段の総額を上限とする注記を付ける
計算は prototype_vs_mass.py で再現できます。要点は次の4行です。
A = 400 + RATE * 12 / 60 # 材料+加工(数量で変わらない)
B = RATE * 90 / 60 # 1回の段取り
unit = lambda q: A + B / q # 数量 q の単価
bad = [q for q in range(lo, nxt) if q * round(unit(lo)) > nxt * round(unit(nxt))]
限界もあります。例は架空で、管理費と利益は0です。すべての段に同じ率を掛けるなら逆転の範囲は変わりませんが、段ごとに利益率を変える会社では範囲がずれます。材料の購入単位や外注の最低料金があると、総額の増え方は式どおりになりません。
段取りの按分と数量別の単価を自社で整えるには?
見積帳場では、段取りの按分や数量別単価表を、御社の計算ルールのとおりに見積の画面へ組み込みます。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。
準備は要りません。数量別の単価で迷っているときは、無料で相談するのページで受けています。
よくある質問
- 試作の見積に、段取りのほかに上乗せするものはありますか?
- はい。加工プログラムの作成、初品の検査、材料の購入単位の端数などです。本文の架空の例には入れていないので、これらが乗る品物では試作の単価がさらに上がります。
- 量産の1,000個を何回かに分けて作る場合は、どう見積もりますか?
- 段取りの額に回数を掛けます。架空の例で1,000個を10回に分けると段取りは54,760円になり、単価は1,185円で100個のときと同じです。
- 管理費や利益を乗せると、逆転する数量は変わりますか?
- すべての段に同じ率で掛けるなら変わりません。比べる2つの総額が同じ割合で大きくなるからです。段ごとに利益率を変えるときは、境目ごとに計算し直します。
- 取引先の様式に、段ごとの単価しか書けないときは?
- 逆転する数量に、次の段の総額を上限とする注記を付けます。架空の例なら「3〜9個は10個の総額16,780円を上限とする」です。
この数字はどう出したか
このページの実験と計算の数字は、実際のお客さまの取引ではなく、架空のデータや架空の入力例から主宰が出したものです。計算はPythonのコード(scripts/figsの再現コードと、画面の計算機と同じ式のsrc/lib/calc.ts)で組み、同じ入力なら同じ数字が出ます。
更新 ・ 事実の確認
出典
- 見積帳場の計算(2026年10月16日、架空の例。時間単価3,651円/時・材料400円・1個12分・段取り90分。scripts/figs/prototype_vs_mass.py)(2026年10月16日確認)


