めっきの見積単価は重量・面積・個数のどれで出す?小物が赤字になる境目と最低料金を計算

めっきの見積は、ラックの掛け点で数が決まる小物は「1掛けの料金÷掛け数」で、それ以外は面積単価で出し、1件の最低料金を置くと赤字の品物が減ります。重量単価は1kgあたり、面積単価は1dm²(10cm角)あたりの単価です。見積帳場が架空の品物300点で計算すると、重量単価1本では44%が原価割れで、約116gより軽い品物では9割が赤字でした。使い分けと最低料金で原価割れは13%まで下がります(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は製造業の見積の自動化のページにまとめています。
要点
- めっきの見積を重量単価1本で出すと、軽い小物ほど原価を割り、重い品物ほど高く出すぎます。
- 架空の品物300点の計算では、重量単価1本で44%が原価割れ、約116gより軽い品物では90%が原価割れでした。
- 20g未満の品物は重量単価で原価より85%安く、5kg以上は107%高く出ました(差の中央値、架空の前提)。
- 掛け点で数が決まる小物は掛け数割り、ほかは面積単価にし、1件の最低料金9,600円を置くと原価割れは13%でした。
目次
めっきの見積は、重量・面積・個数のどれで出せば赤字になりませんか?
ラックの掛け点で1回に掛ける数が決まる小物は「1掛けの料金÷掛け数」、それ以外は面積単価で出します。この使い分けが、原価との差がいちばん小さくなりました。めっきの原価の大きな部分は、ラインを1回流す時間の費用で、それを何個で割るかで1個の原価が決まるからです。
見積帳場が架空の品物300点で、1本の単価で出した3つの出し方と、積み上げた原価を比べた結果が次の表です。単価は、300点の「見積額÷原価」の中央値が1.2(利益2割)になるように置きました。
| 出し方(1本の単価) | 単価 | 原価割れの割合 | 20g未満の差 | 5kg以上の差 |
|---|---|---|---|---|
| 重量単価 | 2,061円/kg | 44%(133点) | −85% | +107% |
| 面積単価 | 197円/dm² | 41%(123点) | −85% | +212% |
| 1掛けの料金÷掛け数 | 1掛け11,660円 | 29%(86点) | +52% | +36% |
差は見積額と原価の差を原価で割った値の中央値です。重量単価は小物で原価を割り、重い品物で高く出すぎて、相見積で負けやすくなります。めっきの値決めには、大きく2つの考え方があります。表面積に1デシ(10cm角)あたりの単価を掛ける方法と、1バレル・1ラックあたりの処理定価を置く方法です。ここでの計算は、この2つを前提にした見積帳場の仮定です。
架空の品物300点の原価は、どう積み上げましたか?
1個の原価は、ラインの費用、掛け外しの人手、地金と薬品、1件ごとの受入・検査・梱包を足し、注文数で割りました。前提はすべて架空です。ライン1回6,000円(9,000円/時×40分)、掛け外し1個0.25分×2,705円/時と置きました。地金・薬品は15円/dm²で、受入・検査・梱包に1件2,000円かかるとしました。
1回に掛けられる数(掛け数)は、掛け点60、面積の上限120dm²、重さの上限40kgのうち、いちばん少ない数にしました。300点のうち155点は掛け点、120点は面積、25点は重さで掛け数が決まります。要点は次の数行です。
n = min(60, 120 / 面積, 40 / 重さ) # 1回に掛けられる数
回数 = ceil(注文数 / n)
原価 = (6000 * 回数 + (11.3 + 15 * 面積) * 注文数 + 2000) / 注文数
重量単価 = median(原価 / 重さ) * 1.2 # 300点の中央値で利益2割
品物は重さ3g〜25kg(中央値210g)、7割をプレスの板物、3割を塊物にしました。スクリプトは scripts/figs/plating_quote_weight_area.py で、乱数の種を固定しているので同じ数字が出ます。実在の会社の原価ではないので、自社の数字に置き換えて確かめてください。
重量単価は、何グラムより軽い品物で原価を割りますか?
架空の300点では、約116gより軽い品物で重量単価が原価を割りました。重さ順に並べた両側25点ずつの移動中央値が、116gで1.0を超えます。116g未満の111点のうち90%が原価割れで、116g以上は17%でした。
境目ができる理由は掛け点です。10gの小物も5kgの品物も、ラックの掛け点を1つずつ使います。掛け点で決まる品物は、ライン費と掛け外しだけで1個111円かかります。重量単価2,061円/kgでこの111円を回収できるのは、111÷2,061×1,000=54g以上の品物です。
重さ別に分けると、差は次のとおりです。
| 重さ | 点数 | 重量単価 | 面積単価 | 1掛けの料金÷掛け数 |
|---|---|---|---|---|
| 20g未満 | 18点 | −85% | −85% | +52% |
| 20〜50g | 45点 | −54% | −43% | +38% |
| 50〜200g | 85点 | −13% | +1% | +11% |
| 0.2〜1kg | 97点 | +78% | +116% | +15% |
| 1〜5kg | 43点 | +105% | +132% | +27% |
| 5kg以上 | 12点 | +107% | +212% | +36% |
切削の架空データで試したときは、0.2kg未満で重量単価が中央値−77%でした(試しの値)。めっきの掛け方で計算し直しても、小物ほど原価を割る形は同じです。
出し方の使い分けは、何で決めればよいですか?
その品物の掛け数を、掛け点・面積・重さのどれが決めているかで分けます。グループの中で単価を置き直すと、面積で掛け数が決まる120点の原価割れは、面積単価21%、掛け数割り20%でした。重さで決まる25点も、それぞれ20%です。重量単価は36〜41%で、どのグループでも外れが多く出ました。
| 掛け数を決めるもの | 点数 | 重量単価 | 面積単価 | 1掛けの料金÷掛け数 |
|---|---|---|---|---|
| 掛け点 | 155点 | 41% | 40% | 34% |
| 面積 | 120点 | 38% | 21% | 20% |
| 重さ | 25点 | 36% | 20% | 20% |
数字はグループごとの原価割れの割合です。掛け点で決まる品物は3g〜0.65kg(中央値65g)で、1掛けの料金を12,019円にして掛け数で割ります。ほかの品物は面積単価101円/dm²です。どの出し方でも残る外れは、注文数や1件の受入・検査・梱包の費用の違いから来ます。
めっきの最低料金は、いくらに置けばよいですか?
1個の下限単価は「1掛けの料金÷掛け点+掛け外し」、1件の最低料金は「1掛け分+受入・検査・梱包」で置きます。架空の前提では、下限単価が(6,000÷60+11.3)×1.2=134円、1件の最低料金が(6,000+2,000)×1.2=9,600円です。
重量単価に下限単価だけを足すと原価割れは44%から36%に、1件の最低料金も足すと29%に下がりました。最低料金で金額が変わった99点のうち87点は境目の116gより軽い品物で、重い品物の見積はほとんど変わりません。掛け数割りと面積単価の使い分けに1件の最低料金を足すと、13%(39点)まで下がりました。
今回はラック1本の計算で、バレルは入っていません。バレルの単価は、1回の量で決める例があります。めっきの受発注サイトの掲載例でも、1バレルの金額を入る個数で割って1個の単価にする決め方が紹介されています。バレルの品物は、1回に入る重さと面積から別に計算します。
数量で1個の単価が変わる理由は試作と量産の単価の違いに、アワーレートから見積単価まで積み上げる式は見積単価の計算方法に、製造業の見積の自動化の全体は柱のページにまとめています。
重量・面積・個数の出し方を自社で比べるには?
見積帳場では、重量・面積・掛け数の3つの金額を並べる見積の画面を作ります。社長の使い分けと最低料金の決まりで1つを提案します。めっきの導入例(イメージ)もご覧ください。
何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。準備は要りません。単価表をお見せいただかなくても、御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。品物の出し方に迷っているときは、無料で相談するのページからお知らせください。
よくある質問
- バレルめっきでも、同じ境目になりますか?
- なりません。バレルには掛け点がなく、入る数は重さか面積で決まるため、今回のラックの計算とは別に、バレル1回の量から計算し直す必要があります。
- 1個の下限単価と1件の最低料金は、両方要りますか?
- はい。今回の計算では、下限単価だけで原価割れは44%から36%、1件の最低料金を足すと29%まで下がりました。効く品物が違います。
- 面積は図面がないと出せませんか?
- いいえ。板物なら重さと板厚から両面の面積を出せます。鋼なら面積(dm²)=2×重さ(kg)÷(7.85×板厚mm÷100)で、縁の分は少なめに出ます。
- 重量単価をやめると、お客様に説明しにくくなりませんか?
- 見積書には重量単価と並べて、掛け数と最低料金の根拠を書けます。決まりを1つの画面にまとめれば、担当者が変わっても同じ説明になります。
この数字はどう出したか
このページの実験と計算の数字は、実際のお客さまの取引ではなく、架空のデータや架空の入力例から主宰が出したものです。計算はPythonのコード(scripts/figsの再現コードと、画面の計算機と同じ式のsrc/lib/calc.ts)で組み、同じ入力なら同じ数字が出ます。
更新 ・ 事実の確認
出典
- 見積帳場の計算(2026年10月16日)。架空の品物300点と架空のラックめっきのライン1本(1回6,000円、掛け点60、面積の上限120dm²、重さの上限40kg)。scripts/figs/plating_quote_weight_area.py(2026年10月16日確認)
- めっきの受発注サイトの解説記事(2024年4月18日公開。めっき工場の社員による、1バレルあたりの単価の設定例。媒体名とURLは伏せています)(2026年10月16日確認)


