見積の金額が担当者で倍違うのはなぜ?架空30件を3人の決まりで計算し、ばらつきを分解した

見積の金額が担当者で違うのは、丸め方・段取りの按分・材料のロス率・利益率という小さな決まりが人ごとに違い、それが重なるからです。見積帳場が架空の見積依頼30件を3人の決まりで計算すると、件ごとの最大と最小の比は中央値1.24倍、最大2.18倍でした。ばらつきの約46%は段取りの按分、約30%は利益率の違いから生まれていました。(2026年10月時点)
全体の流れと費用は製造業の見積の自動化のページにまとめています。
要点
- 見積の金額が担当者で違う主な原因は、丸め方・段取りの按分・材料のロス率・利益率の4つの決まりの違いが重なることです。
- 架空の見積依頼30件を3人の決まりで計算すると、件ごとの最大/最小の比は中央値1.24倍、最大2.18倍でした(見積帳場の計算)。
- 数量1〜5個の小口7件では比の中央値が1.58倍に広がり、2倍を超えた1件も段取り180分を3個で割るかどうかの差でした。
- ばらつきの約46%は段取りの按分、約30%は利益率が生んでおり、最初にそろえるのは段取りの按分です。
- 丸め方だけを先にそろえると、ばらつきはかえって約31%広がりました。決まりは効く順に、全部そろえるまで進めます。
目次
見積の金額が担当者で違うのは、なぜですか?
見積の金額が担当者で違う原因の多くは、計算の途中にある小さな決まりの違いです。とくに効くのは、丸め方・段取りの按分・材料のロス率・利益率の4つです。これらが人ごとに違い、掛け算で重なると、同じ依頼でも金額が倍近く開きます。
差がどこで生まれるかを確かめるため、架空の担当者3人に、次の決まりを持たせました。時間単価はどの人も3,642円/時(架空の値)で同じです。
| 決まり | Aさん | Bさん | Cさん |
|---|---|---|---|
| 丸め方 | 加工時間は1分、単価は10円単位で切り上げ | 加工時間は5分、単価は100円単位で切り上げ | 1件の合計時間を30分単位で切り上げ |
| 段取りの按分 | 段取り時間を数量で割る | リピートを見込み半分だけ割る | 数えず、時間単価を2割増し |
| 材料のロス率 | 5% | 10% | 20% |
| 利益率(原価に乗せる) | 20% | 10% | 30% |
どの決まりも、現場でよく聞く理屈があります。1人ずつ見ると間違いとは言えない決まりが、組み合わさって差になります。
3人の決まりで計算すると、見積は何倍違いましたか?
架空の見積依頼30件では、3人の金額の最大と最小の比は中央値1.24倍、最大2.18倍でした。2倍を超えたのは1件、1.5倍を超えたのは6件です。
依頼は乱数で作りました(種は固定)。数量は1〜500個、材料費は1個80円から4,000円まで、加工時間は1.5〜40分/個、段取りは30〜180分です。差がいちばん大きく出たのは小口です。数量1〜5個の7件では比の中央値が1.58倍で、10〜50個の13件の1.20倍より広がりました。
2.18倍になった1件は、数量3個・段取り180分の依頼です。Aさんは段取り180分を3個で割って1個60分を上乗せし、総額20,310円でした。Cさんは段取りを数えずに時間単価を2割上げただけなので、9,300円です。取引先から見ると、同じ品物の見積が電話の相手で倍以上違うことになります。
ばらつきの何割を、どの決まりの違いが生んでいますか?
3人の金額のばらつきのうち、約46%は段取りの按分の違い、約30%は利益率の違いから生まれていました。残りは材料のロス率の約13%と、丸め方の約11%です。段取りと利益率の2つで、ばらつきの4分の3を占めます。
ばらつきの大きさには、件ごとの「最大÷最小」の対数を30件分平均した値を使いました。決まりを1つずつAさん・Bさん・Cさんのどれかにそろえ、ばらつきがどれだけ減るかを見ています。そろえる順番で減り方が変わるため、24通りの順番と、そろえ先3通りの平均を取りました(シャープレイ値という分け方です)。
計算はscripts/figs/estimator_gap.pyで、Pythonの標準ライブラリだけで動きます。1個の単価を出す部分は次のとおりです。
setup = {'A': s, 'B': s / 2, 'C': 0}[r['setup']] # 段取りの按分
mins = ceil_to(t, 1) + setup / q # 丸め方(Aさんの場合)
cost = m * (1 + r['loss']) + rate * mins / 60 # 材料のロス率
price = ceil_to(cost * (1 + r['profit']), 10) # 利益率と単価の丸め
割合はそろえ先で動きます。段取りの按分は33〜54%の幅に収まり、丸め方の幅は4〜22%でした。計算に使った依頼と決まりは、どちらも架空です。自社の割合は、自社の見積で測り直してください。
どの決まりから、そろえればよいですか?
最初にそろえるのは段取りの按分です。架空の30件では、段取りの按分だけをそろえると2倍を超える件がなくなり、ばらつきは約22%減りました。続けて利益率、材料のロス率、丸め方の順にそろえます。比の中央値は1.24倍から1.21倍、1.12倍、1.10倍と下がり、最後に1.00倍になります。
逆に、手をつけやすい丸め方だけを先にそろえると、ばらつきは約31%広がりました。Bさんは30件中16件でいちばん安く出る人です。単価を100円単位で切り上げる分だけ、差が縮んでいました。その切り上げが消えて、さらに安くなったのです。
効く順にそろえる途中でも、利益率をそろえた段階で最大の比がいったん2.14倍に戻っています。違いどうしが打ち消し合って隠れていた差が、表に出たためです。
見積帳場で決まりを書き出すときも、効く順に1つずつ、全部そろうまで進めます。途中の段階で「差が縮んだから終わり」にすると、残った違いが別の依頼で表に出ます。
社内の見積の差は、どうやって確かめればよいですか?
最近の見積依頼を10件ほど選び、担当者それぞれに同じ依頼で見積を出してもらい、途中の数字を並べます。総額だけを比べると、違いが打ち消し合っている件を見落とします。
- 依頼を、小口と量産が混ざるように選ぶ
- 担当者ごとに、加工時間、段取りをどう扱ったか、材料のロス率、利益率、丸め方を書き出す
- 書き出した5つを表にして、人で違う所に印をつける
- 違いの大きい決まりから、社長が1つずつ会社の決まりを決める
段取りを何個で割るかで単価がどれだけ変わるかは、試作と量産の単価の記事で計算しています。
自社の数字はアワーレートと見積単価の計算機で確かめられます。決まりの書き出し方は見積の属人化を解消する手順にまとめました。値引き・特急・材料の時価のように、人が決める所は決まりにせず残します。
担当者ごとの見積の違いを自社で洗い出すには?
担当者で見積が違う理由の洗い出しから、見積帳場の主宰が一緒に見ます(無料で相談する)。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。準備は要りません。
よくある質問
- 担当者で見積が何割違えば、直したほうがよいですか?
- 決まった線はありません。今回の架空の計算では中央値で1.24倍でした。同じ品物の再見積で金額が変わり、取引先に理由を説明できないなら、決まりをそろえる時期です。
- 利益率は案件ごとに変えてはいけないのですか?
- 変えて構いません。ただし、担当者が自分の感覚で変えるのではなく、取引先や数量で変える決まりとして書き、誰が決めたかを見積に残します。
- 丸め方の違いは、気にしなくてよいですか?
- いいえ。今回の計算では丸め方の影響は約11%で小さめでしたが、ほかの決まりとの打ち消し合いで差が隠れていました。最後には必ずそろえます。
- 決まりをそろえると、ベテランの判断は要らなくなりますか?
- なりません。値引き・特急・材料の時価は人が決める所として残ります。そろえるのは、誰がやっても同じになるはずの計算の部分です。
この数字はどう出したか
このページの実験と計算の数字は、実際のお客さまの取引ではなく、架空のデータや架空の入力例から主宰が出したものです。計算はPythonのコード(scripts/figsの再現コードと、画面の計算機と同じ式のsrc/lib/calc.ts)で組み、同じ入力なら同じ数字が出ます。
更新 ・ 事実の確認
出典
- 見積帳場「担当者3人の決まりの違いによる見積のばらつきの分解」の計算と図のスクリプト(scripts/figs/estimator_gap.py)、見積依頼30件と3人の決まりはすべて架空、2026-10-16 実行(2026年10月16日確認)


