塗料・シンナー・灯油の在庫は指定数量の何倍?在庫の数から倍数を計算する

指定数量の倍数は、同じ場所に置く危険物の数量をそれぞれの指定数量で割り、足し合わせた値です。和が1以上なら、1品目ずつは指定数量未満でも、指定数量以上の危険物を置いているとみなされます(消防法第10条第2項)。指定数量はガソリン200L、灯油・軽油1,000Lなどで、ガソリン100L・灯油400L・塗料200Lなら1.1倍です。在庫てちょうの主宰が、在庫の数から倍数を出す計算機と、品目に持たせる項目をまとめました(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は在庫管理のExcel脱却のページにまとめています。
要点
- 指定数量の倍数は、品目ごとの数量÷指定数量の和で、1以上なら指定数量以上とみなされます(消防法第10条第2項)。
- 第4類の指定数量は、ガソリンなど第1石油類(非水溶性)200L、灯油・軽油など第2石油類(非水溶性)1,000Lです。
- ガソリン100L・灯油400L・塗料200L(第2石油類と仮定)を同じ場所に置くと、0.5+0.4+0.2で1.1倍です(計算値)。
- シンナーはSDSの引火点で区分します。第1石油類(200L)なら100Lで0.5倍ですが、第2石油類と思い込むと0.1倍で、合計が1を超えるのに気づけません(計算値)。
- 和が1ちょうどでも1以上に入ります。1未満の扱いは市町村条例で決まり、堺市では条例(第88条)で、5分の1以上から届出が要ります。
目次
指定数量の倍数は、在庫の数からどう計算するのですか?
指定数量の倍数は、同じ場所に置く危険物の数量を品目ごとに指定数量で割り、その値を足して出します。和が1以上なら、指定数量以上の危険物を貯蔵・取り扱っているとみなされます。消防法第10条第2項の定めで、品名や指定数量の違う危険物を同じ場所に置くときの決まりです。
指定数量は、危険物の規制に関する政令の別表第三にあります。灯油・軽油・ガソリンは第4類(引火性液体)で、溶剤を含む塗料やシンナーも引火点によって第4類に入ります。第4類の指定数量は次のとおりです(2026年10月16日にe-Gov法令検索の条文で確認)。
| 第4類の品名 | 性質 | 指定数量(L) | 品名に入る例(消防法 別表第一 備考) |
|---|---|---|---|
| 特殊引火物 | − | 50 | ジエチルエーテル、二硫化炭素 |
| 第1石油類 | 非水溶性液体/水溶性液体 | 200/400 | ガソリン、アセトン(引火点21度未満) |
| アルコール類 | − | 400 | 炭素1〜3個の飽和一価アルコール |
| 第2石油類 | 非水溶性液体/水溶性液体 | 1,000/2,000 | 灯油、軽油(引火点21度以上70度未満) |
| 第3石油類 | 非水溶性液体/水溶性液体 | 2,000/4,000 | 重油、クレオソート油(70度以上200度未満) |
| 第4石油類 | − | 6,000 | ギヤー油、シリンダー油(200度以上250度未満) |
同じ第1石油類でも、水に溶けるかどうかで指定数量が2倍違います。このほか動植物油類は10,000Lです。
どの行に入るかは、製品の名前ではなく、SDS(安全データシート)に書かれた引火点で区分します。「塗料」「シンナー」という呼び名だけでは決まりません。
ガソリン・灯油・塗料を一緒に置くと、何倍になりますか?
ガソリン100L・灯油400L・塗料200Lを同じ場所に置くと、指定数量の1.1倍です。塗料は第2石油類の非水溶性液体と仮定しました。ガソリンは200Lで割って0.5、灯油は1,000Lで割って0.4、塗料は1,000Lで割って0.2で、和は1.1です。1品目ずつは指定数量未満でも、合計では指定数量以上とみなされます。
灯油を300Lに減らしても、和は1.0ちょうどで「1以上」に入ります。200Lまで減らすと0.9倍で、1を下回ります。ガソリン100Lと塗料200Lだけで0.7倍あるので、同じ場所の灯油は300L未満にしないと和が1未満になりません。
塗料と並べて置くことの多いシンナーでも計算してみます。トルエンの引火点は、厚生労働省の職場のあんぜんサイトのモデルSDSで4.4度(密閉式、出典は成書の第14版)です。21度未満なので、トルエンや酢酸エチルを主な成分にするシンナーは、第1石油類(非水溶性液体、200L)に入る製品が多く、キシレンが主体の製品は第2石油類(1,000L)に入ります。製品のSDSで確かめるのが前提です。
第1石油類のシンナー100L、灯油400L、塗料200L(第2石油類と仮定)を同じ場所に置くと、0.5と0.4と0.2を足して1.1になります。シンナーを第2石油類と思い込み、100÷1,000の0.1で数えると和は0.7です。1を超えているのに気づけません。同じ100Lでも、区分で倍数が5倍違います(計算値)。
計算の式と前提はこの節に書いたとおりで、同じ前提で計算すれば再現できます。1.0ちょうどを0.999…と判定しないよう、分数で計算しました。自分の在庫は、次の計算機で試せます。
指定数量の倍数の計算機(第4類、数量はL)
| 品名・性質(指定数量) | 数量(L) | 倍数 |
|---|
ガソリン100L・灯油400L・塗料200Lで、計1.1倍(1以上:指定数量以上とみなす)
同じ場所に置く分だけを入れます。計算は消防法第10条第2項と政令 別表第三によります。許可や届出が要るかの判断は、所轄の消防署に確かめてください。
塗料やシンナーは、どの品名に当たるのですか?
塗料やシンナーの品名は、製品ごとの引火点と成分で決まるため、SDS(安全データシート)などで製品ごとに確かめます。消防法の別表第一の備考は、引火点で品名を分けています。21度未満が第1石油類、21度以上70度未満が第2石油類、70度以上200度未満が第3石油類です。同じ「塗料」でも、引火点の違いで、非水溶性なら指定数量が200Lか1,000Lに分かれます。
塗料類などには除外の決まりがあります。危険物の規制に関する規則の第1条の3第5項は、可燃性液体量が40%以下で引火点が40度以上のものを、第2石油類から除きます。ただし燃焼点が60度未満のものは除かれません。第3石油類と第4石油類は、可燃性液体量が40%以下なら除かれます(第6項)。
在庫の数え方にも落とし穴があります。第4類の指定数量はLで決まっていますが、塗料の缶はkgで表示されていることがあります。kgで管理している品目は、SDSの密度でLに直してから割ります。18L缶の数で管理しているなら、缶の数×18Lです。
品名の当てはめに迷う製品は、メーカーに問い合わせるか、所轄の消防署に確かめます。私が在庫の仕組みを作るときも、品名の判断はSDSと消防署の回答に任せ、アプリは決まった品名で計算するだけにします。
指定数量の1倍未満なら、届出は要らないのですか?
1倍未満でも、届出の要る場合があります。消防法第9条の4により、指定数量未満の危険物を貯蔵・取り扱う場所の基準は、市町村条例で決まるためです。どの量から届出が要るかは、市町村ごとに確かめます。
たとえば堺市の火災予防条例では、第47条が、指定数量の5分の1から指定数量の手前までの危険物を「少量危険物」と定めています。第88条は、少量危険物を貯蔵するときや取り扱うときに、先に消防署長へ届け出ることを求めています(2026年10月17日に堺市の例規集で確認)。5分の1未満は届出不要とされています。
この線を当てはめると、ガソリン100L・灯油200L・塗料200Lの0.9倍は、届出の対象に入ります。5分の1という線は市町村の条例で決まるため、ほかの市町村は、その条例か消防署の資料で確かめてください。
和が1以上なら、消防法第10条第1項により、許可を受けた貯蔵所などの外では貯蔵できません。所轄の消防長か消防署長の承認を受ければ、10日以内に限って仮に置けます(第10条第1項ただし書)。常に1以上になるなら、貯蔵所を設ける許可(第11条第1項)を取るか、場所を分けて置く量を減らすかを決めます。
所轄の消防署に確かめたいのは、次の3つの場面です。1つ目は、建物や部屋のどこまでを「同一の場所」とみるか。2つ目は、品名の当てはまらない製品の扱い。3つ目は、倍数が1に近い置き方を続けてよいかです。
在庫管理アプリの品目マスタには、何を持たせればよいですか?
在庫の数から倍数を自動で出すには、品目マスタ(品目ごとの基本の情報)に5つの項目を持たせます。類・品名・性質・1個の容量・保管場所です。類から性質までで指定数量が決まり、容量と在庫数でLが決まり、保管場所で「同じ場所」の合計が決まります。
| 項目 | 例 | 使い道 |
|---|---|---|
| 類 | 第4類 | 単位(L/kg)と別表第三の行を決める |
| 品名 | 第2石油類 | 指定数量を引く |
| 性質 | 非水溶性液体 | 同じ品名でも指定数量が2倍違う |
| 1個の容量(L) | 18 | 缶の数をLに直す。kg表示の製品は密度で換算した値 |
| 保管場所 | 塗料庫A | 同じ場所の分だけを足す |
品目マスタに入れておけば、入出庫を読み取るたびに場所ごとの倍数が変わります。Excelの在庫表でも式は組めますが、置き場所を移したときに表を直し忘れると、合計がずれます。帳簿と実在庫が合わない原因と同じで、入出庫をその場で記録できるかが要です。
部品の卸と小さな加工の導入例(イメージ)では、塗料とシンナーの倍数を在庫から表示する形を想定しています。倍数がいくつになったら知らせるかは、所轄の市町村が届出を求める量を基準に決めます。
このサイトで相談するには?
たとえば、塗料庫にシンナーと灯油が並んでいるなら、缶の数とSDSの品名から倍数を出す画面を、今の在庫表の列に足す形で作れます。
倍数を在庫から出す形は、置き場所の様子に合わせて主宰が案を作ります。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫で、準備は要りません。無料で相談する
よくある質問
- 倍数がちょうど1.0のときは、指定数量以上ですか?
- はい。消防法第10条第2項は「商の和が1以上」と定めているため、1.0ちょうどでも指定数量以上とみなされます。
- 別の倉庫に置いている分も足しますか?
- 足すのは「同一の場所」で貯蔵・取り扱う分です。建物や部屋のどこまでを1つの場所とみるかは、所轄の消防署に確かめます。
- 18L缶の数で管理しているとき、どう計算しますか?
- 缶の数×1缶の容量でLに直してから割ります。灯油18L缶が20缶なら360Lで、指定数量1,000Lの0.36倍です(計算値)。
- 車に積んでいる分も数えますか?
- 車両に固定されたタンクは移動タンク貯蔵所として別の扱いです。積んだ缶の扱いは、所轄の消防署に確かめてください。
出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の4・第10条第1項・第2項・第11条第1項・別表第一 備考、e-Gov 法令検索(2026年10月16日確認)
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条の11・別表第三(指定数量)、e-Gov 法令検索(2026年10月16日確認)
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第1条の3第5項・第6項(品名から除外されるもの)・第1条の6、e-Gov 法令検索(2026年10月16日確認)
- 堺市火災予防条例(第47条・第88条)、堺市例規集(2026年10月17日確認)
- 職場のあんぜんサイト「トルエン」モデルSDS(引火点 4.4度・密閉式)、厚生労働省(2026年10月17日確認)
- 堺市「危険物の規制について」(少量危険物の届出。2025年7月8日更新)(2026年10月16日確認)


