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カスハラの件数は店舗別にどう集計する?来店客1万人あたりの率とu管理図で見る

カスハラの件数を店舗別に集計するときは、件数の多い順に並べず、来店客1万人あたりの率に直してから、u管理図(率のばらつきの幅を店ごとに線で示す図)で線を超えた店を先に見ます。カスハラ報告ラインが架空の12店舗×12か月で試すと、件数1位の店は率では6位で、上の限界線を超えたのは本当の率を3倍に置いた1店だけでした。厚労省の指針も、記録を共有して再発防止に活用することを挙げています。(2026年10月時点)

全体の流れと費用はカスハラ対策の義務化ガイドのページにまとめています。

要点

  • 架空の12店舗×12か月(合計198件)で、件数1位の店(32件)は来店客1万人あたりの率では6位でした(計算値)。
  • u管理図の上の限界線を超えたのは、本当の率を3倍の0.90件に置いたJ店(1.04件、線は0.68件)の1店だけです。
  • 率だけで並べると、本当の率が平均どおりのI店も0.53件で2位に入り、偶然の振れを見分けられません。
  • 月ごとに見ると来店客の少ないL店は12か月中7か月が0件なので、判定は3〜12か月の合計で行います。
目次
  1. カスハラの件数は、店舗別にどう集計すればよいですか?
  2. 件数の多い順に並べたときの店の顔ぶれ
  3. 来店客1万人あたりの率は、どう計算しますか?
  4. u管理図で、偶然を超えて多い店はどう見分けますか?
  5. 月ごとの集計での注意点
  6. 集計結果を再発防止につなげる
  7. このサイトで相談するには?
  8. よくある質問

カスハラの件数は、店舗別にどう集計すればよいですか?

店舗別の件数は、来店客1万人あたりの率に直し、u管理図の上の限界線を超えた店から見ます。件数の多い順に並べると、来店客の多い店が上に来るだけになりやすいからです。

カスハラ報告ラインが架空の12店舗×12か月で比べた結果を、集計の3つのやり方ごとに並べると、次のとおりです。

集計のやり方 分かること 架空12店舗での結果
件数の多い順 本部が対応した量 1位は来店客の最も多いA店(32件)
来店客1万人あたりの率 客1人あたりの起きやすさ 1位はJ店(1.04件)、2位は偶然多かったI店
u管理図(率+限界線) 偶然の振れを超えた店 線を超えたのはJ店だけ

件数の表は、対応にかかった手間を見るときに使えます。再発防止の手を先に打つ店を選ぶときは、率と限界線のほうを見ます。

件数の多い順に並べたときの店の顔ぶれ

来店客の多い店が上に来ます。架空の12店舗では、月9万人が来るA店は年32件で1位でしたが、来店客1万人あたりでは0.30件で6位でした。

架空12店舗の、年間件数の順位(左)と来店客1万人あたりの率の順位(右)を線でつないだ図。件数1位のA店(32件)は率で6位、率1位のJ店(1.04件/1万人)は件数で3位件数の順位(年間)率の順位(件/1万人)1位 A店 32件6位 A店 0.306位 B店 16件11位 B店 0.185位 C店 20件8位 C店 0.282位 D店 26件4位 D店 0.424位 E店 24件3位 E店 0.448位 F店 14件7位 F店 0.2910位 G店 7件12位 G店 0.179位 H店 8件9位 H店 0.226位 I店 16件2位 I店 0.533位 J店 25件1位 J店 1.0412位 K店 4件10位 K店 0.2111位 L店 6件4位 L店 0.42運営者の計算(架空データ、ポアソン乱数・種 20261016)。赤い線は u 管理図で上の限界線を超えた店
図1 件数の順位と率の順位(架空12店舗、計算値)。件数1位のA店は率で6位に下がり、率1位のJ店は件数では3位でした。

データは、カスハラ報告ラインがPythonで作った架空のものです。店ごとの月の来店客は1.2万〜9万人に置きました。本当の率は全店0.30件/1万人とし、J店だけ0.90件、D店は0.45件にしています。月の件数はポアソン乱数(種を20261016に固定)で作りました。条件と式は本文のとおりです。

来店客1万人あたりの率は、どう計算しますか?

店の年間件数を、同じ期間の来店客数(万人)で割ります。J店は年25件・来店客24万人なので、25÷24で1.04件/1万人です。

割る数は、業種ごとに毎月そろえて取れるものを選びます。スーパーや飲食店ならレジの客数、コールセンターなら入電数、訪問介護なら訪問回数が使えます。件数と割る数は同じ期間でそろえ、年の途中で開いた店や改装で休んだ店は、営業した月だけで計算します。

ただし、率だけで並べても偶然の振れは消えません。本当の率を平均どおりの0.30件に置いたI店が0.53件で2位、L店が0.42件で4位に入りました。来店客の少ない店は、1〜2件の差で率が大きく動きます。率の表に順位を付けて店長会議で配る前に、次のu管理図で偶然の幅を確かめます。

u管理図で、偶然を超えて多い店はどう見分けますか?

全店の合計の率を中心線にし、来店客数に応じた上下の限界線を店ごとに引きます。架空の12店舗では中心線が0.33件で、上の限界線を超えたのはJ店だけでした。

u = c / n                       # 店ごとの率(c=件数、n=来店客数(万人))
u_bar = c.sum() / n.sum()       # 中心線(全店の合計の率)
ucl = u_bar + 3 * np.sqrt(u_bar / n)               # 上の限界線
lcl = np.maximum(0, u_bar - 3 * np.sqrt(u_bar / n))  # 下の限界線
over = u > ucl                  # 線を超えた店
u 管理図:来店客1万人あたりのカスハラ件数(12か月合計、架空12店舗) 中心線 ū = 0.33件/1万人。来店客の少ない店ほど限界線の幅が広い。赤い点が上の限界線を超えた店 0.0 0.3 0.6 0.9 1.2 中心線 0.33 上の限界線 A店 32件 108万人 B店 16件 90万人 C店 20件 72万人 D店 26件 62万人 E店 24件 54万人 F店 14件 48万人 G店 7件 41万人 H店 8件 36万人 I店 16件 30万人 1.04 J店 25件 24万人 K店 4件 19万人 L店 6件 14万人 運営者の計算(scripts/figs/kensu_shukei.py、ポアソン乱数・種 20261016)。店・件数・来店客数はすべて架空
図2 u管理図(12か月合計、架空12店舗、計算値)。来店客の少ない店ほど線の幅が広く、率2位のI店(0.53件)も線(0.65件)の内側です。

限界線の式は、件数がポアソン分布に従うとみなしたときのばらつき(標準偏差)から出しています。線の幅は標準偏差の3倍にしました。幅を広くとるほど、偶然の多さで店を責める誤りは減ります。

一方で、本当の率を1.5倍に置いたD店は0.42件で、線(0.55件)を超えませんでした。小さな差は1年分でも見分けにくい、という限界があります。D店のような差を見たいときは、2年分の合計で線を引き直します。

月ごとの集計での注意点

月ごとの件数で店を判定しないことです。来店客が月1.2万人のL店は、12か月のうち7か月が0件で、月単位では線を引く意味がほとんどありません。

架空のE店とJ店の12か月の件数を棒で並べ、月単位の上の限界線を引いた図。E店は5か月目の7件だけが線(5.1件)を超え、ほかの月は0〜3件。J店は1か月目の4件と12か月目の6件が線(3.1件)を超えたE店(月の来店客 4.5万人、本当の率 0.30)02468113203347516371809110111312破線:月の上の限界線 5.1件月(1〜12)J店(月の来店客 2.0万人、本当の率 0.90)02468410223040526173839210211612破線:月の上の限界線 3.1件月(1〜12)運営者の計算(架空データ、ポアソン乱数・種 20261016)。赤い棒が月単位の上の限界線を超えた月
図3 E店とJ店の月ごとの件数(架空、計算値)。本当の率が平均どおりのE店でも、5か月目だけ7件で月の線を超えました。

144か月分(12店舗×12か月)を月単位で見ると、線を超えた月は3つでした。そのうち1つは、本当の率が平均どおりのE店です。1か月だけ超えた店は、まず事案の記録を読み、同じ客の繰り返しかどうかを確かめます。店を判定するときは、3〜12か月の合計を使います。

数え方を全店でそろえることも欠かせません。1件の事案が複数の類型に当たるときは、件数を1件とし、類型は別の列で数えます。

厚労省の令和5年度の労働者調査(8,000人)には、次の結果があります。勤務先が取組を実施していると答えた人のほうが、経験した割合が高い結果でした。相関で理由は分からないものの、店の件数には報告のしやすさの差も混ざりえます。

集計結果を再発防止につなげる

線を超えた店の事案から先に読み、原因に手を打ちます。指針4⑶ハは、事案の内容や対応の経緯を記録し、関係部門に共有することを挙げています。個人情報に留意したうえで、再発防止に活用することも考えられるとしています。

厚労省のマニュアルp.41も、社内の事例ごとに検証し、対処の手順の見直しに役立てることを挙げています。私が集計の仕組みを作るときは、店舗・月・類型・来店客数を台帳の列に入れ、率と限界線が毎月自動で出るようにします。記録項目の決め方はカスハラの記録の書き方にまとめています。

本部で見る表には、相談者の名前を出しません。指針4⑸イは、相談者のプライバシーを守る措置を求めています。店舗別の集計は件数と類型だけにし、事案の中身は窓口の担当者に絞って見せます。

このサイトで相談するには?

店舗別の件数をどう集め、どの数で割るかは、今の報告の流れをうかがいながら一緒に決められます。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫で、準備は要りません。御社のやり方に合わせて、カスハラ報告ラインの主宰が進め方を一緒に考えます。無料で相談するからお声がけください。

よくある質問

カスハラの件数は、来店客数で割らないといけませんか?
いいえ、決まりはありません。ただ店の大きさが違うと件数の順位は来店客の多さを映すので、店どうしを比べるときは1万人あたりの率に直すと公平になります。
来店客数が分からない店は、何で割ればよいですか?
レジの客数、入電数、訪問回数など、毎月そろえて取れる数で割ります。売上や従業員数でも構いませんが、店どうしで同じものを使います。
管理図の線を超えた店は、カスハラが多い店と決めてよいですか?
いいえ。偶然では説明しにくい多さ、というところまでです。先に事案の記録を読み、報告の仕方が店ごとにそろっているかも確かめます。
カスハラに当たらなかった申し出も数えますか?
数えて残し、別の列にします。厚労省のマニュアル p.47 も、カスハラに至らなかったものも含めて記録する例を挙げています。

出典と数字の作り方

  1. 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)4⑶ハ・4⑸イ(2026年10月16日確認)
  2. 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」(2026-09-08 更新)p.33 対策推進チーム、p.41 事例の共有・活用、p.47 事案発生後の振り返りのための記録(2026年10月16日確認)
  3. 厚生労働省 令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)」労働者調査 8,000名(2024年1月)(2026年10月16日確認)
  4. カスハラ報告ライン「店舗別の件数・率・u管理図」の計算と図のスクリプト(架空データ・ポアソン乱数の種 20261016。条件と式は本文のとおり)、2026-10-16 実行(2026年10月16日確認)