海外では、FAXやPDFの受注をどう自動にしているのかドイツの調査と米国の卸の公開事例を読む

FAXが残っているのは日本だけではありません。ドイツでは2024年の調査で企業の77%がまだFAXを使い、米国の卸でも、PDFやFAXで届く注文の入力を自動にする事例が公開されています。ただ、公開事例の数字の多くは、仕組みを売る会社が自社の成果として出したもので、測り方が書かれていません。数字の出どころまで確かめて読み、日本の中小企業の受注に持ち帰れることを整理します。(2026年10月時点)
全体の流れと費用はFAX受注の自動化のページにまとめています。
この記事の要点
- ドイツでは2024年の調査で、従業員20人以上の企業の77%がまだFAXを使っていました(Bitkom、604社)。
- ドイツでFAXが残るいちばんの理由は「役所とのやり取りで避けられない」で、FAXを使う企業の56%が挙げています。
- 米国の金属の卸では、PDFの注文の80%を完全に自動で販売管理に入れた事例が公開されています。
- 公開事例の数字は売り手の発表が多く、何を分母に測ったかを確かめてから比べる必要があります。
目次
海外でも、FAXはまだ使われているのですか?
使われています。ドイツのIT業界団体 Bitkom の調査では、2024年に従業員20人以上の企業の77%がまだFAXを使っていました。2018年の95%からは毎年下がっていますが、4社のうち3社はまだFAXのある職場です。
頻度で見ると、減り方はもっと速く見えます。「頻繁に・とても頻繁に使う」と答えた企業は、2018年の49%から2024年は25%に半減しました。2025年6月に報じられた次の調査では、「定期的に使う」企業は18%でした。ただしこれは聞き方が違うので、77%とは直接比べられません。「使える状態で置いてある」企業と、「毎日のように使う」企業は別物だ、と読むのがよさそうです。
ドイツでは、なぜFAXが残っているのですか?
いちばんの理由は役所です。FAXを使っている企業の56%が「役所とのやり取りで避けられない」と答えています。次が「郵便より確実」(43%)、「今のFAXの手順がうまく回っている」(35%)でした。「顧客の求めに応じるため」は25%です。
| FAXを使う理由(複数回答、FAXを使う企業が母数) | 割合 |
|---|---|
| 役所とのやり取りで避けられない | 56% |
| 郵便より確実 | 43% |
| 今のFAXの手順がうまく回っている | 35% |
| 習慣 | 27% |
| 届いた証拠が要る | 27% |
| 顧客の求めに応じる | 25% |
日本の事情とは少し違います。日本の製造業の調査では、FAXをやめたい人が挙げた「やめられない理由」の1位は「取引先がFAXを使っているから」でした(調査を母数から読み直したコラム)。ドイツは役所、日本は取引先と、相手は違いますが、「自分の会社だけではやめられない」という構図は共通しています。
もう1つ目を引くのは、ドイツではFAXを使う企業の72%が、FAXをメールで送受信する形(デジタルFAX)を使っていることです。紙で届くFAXが前提の日本より、データで受け取る下地ができています。読み取りを自動にする手前の段階が、すでに済んでいる会社が多いということです。
米国の卸では、どんな事例が公開されていますか?
注文の入力を自動にした卸の事例が、仕組みを提供する会社のサイトに公開されています。2つを、数字の出どころとあわせて見ます。
1つ目は、非鉄金属の卸 Wentzel の事例です。PDFで届く注文を担当者が手で販売管理(NetSuite)に打ち込んでいて、遅れと入力ミスが出ていました。PDFから項目を取り出すツールと NetSuite をつなぐことで、注文の80%を完全に自動にした、とされています。ただし、1日の注文の数、残り20%の扱い、いつ測った数字かは書かれていません。
2つ目は、売上規模5億ドルほどの建材の卸の事例です。メール・PDF・Excelで届く注文を1か所に集め、項目を取り出して販売管理に渡し、欠けている値や食い違いを登録の前に知らせる仕組みを作りました。成果は「手作業でのやり直しが90%減った」とされています。一方で、見出しは「3倍速い」、本文は「300倍速いデータの照合」と、数字が食い違っています。測り方も書かれていません。
| 事例 | 届く形 | 公表された成果 | 書かれていないこと |
|---|---|---|---|
| 非鉄金属の卸(Wentzel) | 注文の80%を完全に自動化 | 注文の数、残り20%の扱い、測った時期 | |
| 建材の卸(売上約5億ドル) | メール・PDF・Excel | 手作業のやり直し90%減 | 基準にした時期、測り方、3倍と300倍の違い |
公開事例の数字は、どう読めばよいですか?
「何を分母にした数字か」を最初に確かめます。2つの事例は、どちらも仕組みを売る会社が自社の成果として出したもので、第三者が測った数字ではありません。
「80%を自動化」は、届いた注文のうち人が一切触らずに登録できた割合と読めますが、1枚の注文書の中の項目の割合なのか、注文の件数の割合なのかで意味が変わります。「やり直しが90%減」は、自動にした後の人の手直しの量の話で、入力の時間がどれだけ減ったかとは別の数字です。数字が大きく、測り方が書かれていないものほど、自社の数字で測り直す前提で読むのが安全です。
日本の中小企業が自社の効果を測るなら、少なくとも次の3つを、自動にする前と後で同じように数えておくと比べられます。
- 1日の注文書の枚数と、そのうち人が手を入れた枚数
- 1枚あたりの入力、または確認にかかった時間
- 誤った登録の件数(再出荷や訂正の数)
数え方はFAX受注の自動化の始め方で、手入力のコストの計算は枚数別の試算で説明しています。
日本の中小企業が、海外の事例から持ち帰れることは?
2つあります。FAXをデータで受け取ることを先に済ませること、そして登録の前に食い違いを知らせる確認の段を置くことです。
ドイツで72%がFAXをメールで受けているように、データで受け取れば、読み取りの自動化はすぐ次の一歩になります。日本でも多くの複合機に、受信したFAXをPDFにしてメールで送る機能があります(設定の流れ)。建材の卸の事例が、欠けた値や食い違いを登録の前に知らせる仕組みを入れていたのも、私が作る仕組みの「要確認」と同じ考え方です。自動にする割合を上げることより、間違ったまま登録しないことを先に作る。これは国が変わっても同じでした。
一方で、海外の仕組みをそのまま持ってくることには慎重でよいと思います。どちらの事例も英語のPDFが中心で、販売管理も海外の製品です。日本語の手書きのFAX、取引先ごとの品名の書き方、国内の販売管理への取り込みは、別に確かめる必要があります。
このサイトで相談するには?
御社の注文書でどこまで自動にできるかは、無料相談で確かめられます。注文書をお見せいただかなくても、枚数と今の流れをうかがえば目安をお答えします。頼み先ごとの費用の違いはFAX受注の自動化の依頼先の比較にまとめています。
よくある質問
- 海外ではFAXはもう使われていないのでは?
- 国によります。ドイツでは2024年に企業の77%がまだFAXを使っていました。ただ「定期的に使う」企業は、2025年6月の報道では18%まで減っています。
- 海外の事例の「80%自動化」は日本でも出せますか?
- 測り方が書かれていないため、そのまま比べられません。PDFの注文で、取引先の形がそろっている場合の数字と考えるのが安全です。
- 海外の仕組みを日本で使えますか?
- 多くは英語の帳票と海外の販売管理が前提です。日本語の手書きのFAXや、国内の販売管理への取り込みは、別に確かめる必要があります。
出典
- Bitkom「In 3 von 4 Büros wird noch gefaxt」(2024年6月17日、604社、2024年1〜2月調査)(2026年10月15日確認)
- CIO.de「Vier von fünf Unternehmen haben das Fax abgeschafft」(2025年6月5日、Bitkom の603社の調査を報道)(2026年10月15日確認)
- Cadran「Wentzel automates 80% of orders with Cadran」(casestudies.com 掲載)(2026年10月15日確認)
- ProfitOptics「3X Faster Order Processing, 90% Less Manual Rework」(2026年10月15日確認)
- 写真:Ricardo Berganza(Pexels)(2026年10月15日確認)


