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建設業法の「ICT活用の努力義務」とは?中小の工事会社が現場で残す記録

建設業法の「ICT活用の努力義務」とは?(記事の表紙)

建設業法の「ICT活用の努力義務」は、2024年12月13日施行の第25条の28で、特定建設業者と公共工事の受注者に、ICTを使った現場管理と下請への指導を求める規定です。同じ日から、監理技術者等は請負代金1億円未満の工事なら2現場まで兼任できるようになりました。条件は移動が概ね2時間以内、入退場を遠隔で確かめるICT、人員配置計画書などです。(2026年10月時点)

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要点

  • 2024年12月13日施行の建設業法第25条の28で、特定建設業者にICTを使った現場管理と下請への指導の努力義務ができました。
  • 監理技術者等は、請負代金1億円未満(建築一式2億円未満)の工事なら、要件を満たせば2現場まで兼任できます。
  • 兼任の要件は移動が片道概ね2時間以内、下請3次まで、連絡員、入退場を遠隔で確かめるICT、人員配置計画書、映像と音声の機器の6つです。
  • 直線22.9kmの2現場は、迂回率1.3・時速20kmと仮定した計算で片道89分でした。判定は経路検索の結果を計画書に残して行います。
目次
  1. 建設業法の「ICT活用の努力義務」とは、何ですか?
  2. 自社は、ICT活用の努力義務の対象になりますか?
  3. 監理技術者等を兼任するには、どんな要件がありますか?
  4. 兼任の要件ごとに、現場アプリに何を残せばよいですか?
  5. 「移動時間が概ね2時間以内」は、2現場の住所からどう確かめますか?
  6. ICT指針は、中小の工事会社に何から勧めていますか?
  7. 現場のまどで相談するには?
  8. よくある質問

建設業法の「ICT活用の努力義務」とは、何ですか?

特定建設業者に、現場管理の情報システムなどICTの活用と、下請への指導を求める規定です。改正法(令和6年法律第49号)は2024年6月14日に公布されました。この規定は第25条の28として、同年12月13日に施行されています。条文は「努めなければならない」という書き方で、何をどこまで入れるかは各社に任されています。

同じ日に、監理技術者等の兼任の特例と、公共工事の施工体制台帳の写しの提出の合理化も始まりました。どれも、ICTで現場の状況を確かめられることが前提です。国土交通省の資料から、3つの規定を次の表にまとめました。

規定 対象 中身 根拠
ICT活用の努力義務 特定建設業者、公共工事の受注者 ICTを使った現場管理、下請への指導 建設業法第25条の28、入契法第16条
技術者の兼任の特例 主任技術者・監理技術者 要件を満たせば2現場まで兼任 建設業法第26条第3項第1号
施工体制台帳の写しの提出 公共工事の受注者 CCUSなどで発注者が確かめられれば不要 入契法第15条第2項

国はあわせて、取り組みの参考となる「ICT指針」を公表しました。中小の工事会社にとって身近なのは、兼任の特例と、そのために現場で残す記録です。

自社は、ICT活用の努力義務の対象になりますか?

民間工事では、特定建設業の許可を持っているかで決まります。第25条の28第1項の対象は特定建設業者で、第2項の下請への指導は「発注者から直接請け負った特定建設業者」に限られます。

公共工事は別で、入契法第16条により受注者はICTの体制整備に努めます。ICT指針は、公共工事では下請業者も同じ努力義務を負うと書いています。

一般建設業の許可だけで民間工事を請ける会社には、第25条の28の義務はありません。ただし元請から指導を受ける立場にはなり、ICT指針も全ての建設業者を対象にしています。

ICT活用の努力義務と兼任の要件を確かめる5段の流れ図。特定建設業か公共工事か、元請か、請負代金1億円未満か、移動2時間・下請3次・連絡員、入退場のICTと計画書と機器の順に確かめる
図1 努力義務と兼任の要件を確かめる順番。国土交通省の報道発表(2024年12月13日)と監理技術者制度運用マニュアル(令和7年2月1日適用)をもとに、現場のまど 主宰が作図しました。

元請からの指導は、一方的な指示であってはいけません。ICT指針は、下請と協議しながら決めること、独占禁止法の優越的地位の濫用に当たらないよう留意することを求めています。

監理技術者等を兼任するには、どんな要件がありますか?

請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)の工事なら、次の要件をすべて満たせば2現場まで兼任できます。国土交通省の監理技術者制度運用マニュアル(令和7年2月1日より適用)が、施行規則の要件を説明しています。

  1. 現場間の移動が一日で巡回でき、片道おおむね2時間以内
  2. 下請次数が3次まで
  3. 各現場に連絡員を置く(土木一式・建築一式は同業種の実務経験1年以上)
  4. 作業員の入退場を遠隔から確かめられるICTを使う
  5. 人員配置計画書を作り、現場に置き、帳簿と同じ期間保存する
  6. 映像と音声を送受信できる機器と通信環境をそろえる

入退場のICTについて、マニュアルはCCUSかCCUSとAPI連携したシステムが望ましいとしています。ただし遠隔から入退場を確かめられれば、ほかのシステムでも構いません。機器も、一般的なスマートフォンやWEB会議システムでよいとされています。工事の途中で1億円を超えたり、下請が4次以上になったりしたら、その時点から工事ごとに専任で置きます。

兼任の要件ごとに、現場アプリに何を残せばよいですか?

要件ごとに、日々の運用で自然にたまる記録を決めておくのが近道です。人員配置計画書には、技術者の時間外労働の見込みと実際の時間、現場間の移動時間、連絡員、使うICTと機器まで書く欄があります。

兼任の要件 現場アプリに残す記録 計画書の欄
移動 概ね2時間以内 2現場の住所、経路検索の所要時間と日時 工事現場間の移動時間
下請3次まで 現場ごとの協力会社と次数 下請次数
連絡員の配置 連絡員の氏名・所属会社、日々の連絡 連絡員の氏名・所属会社
入退場のICT 作業員ごとの入場・退場の時刻 施工体制を把握するICT
技術者の労働時間 技術者の出退勤と時間外の実際の時間 時間外の見込みと実際の時間
監理技術者等の兼任の要件6つと現場アプリに残す記録を矢印で結んだ対応図。移動2時間以内には経路検索の所要時間、入退場のICTには作業員ごとの入場・退場の時刻を残す
図2 兼任の要件と、現場アプリに残す記録の対応。監理技術者制度運用マニュアル(令和7年2月1日適用)の記載事項をもとに、現場のまど 主宰が作図しました。

私が現場の仕組みを作るときは、協力会社の職人にアカウントを作らせません。現場ごとのリンクから、入退場と日報を入れてもらう形にします。入退場の時刻が現場別にたまれば、技術者は事務所からその日の人の出入りを確かめられます。計画書の欄も、同じ記録から月ごとに書き出せます。

「移動時間が概ね2時間以内」は、2現場の住所からどう確かめますか?

マニュアルは、片道の時間を、自動車など通常の移動手段で確実に着ける方法で判断するとしています。そのため最後は、混む時間帯の経路検索で確かめ、結果を計画書の「工事現場間の移動時間」に残します。

当たりをつけるために、2現場の緯度経度から片道の時間を見積もる計算を作りました。直線距離に迂回の割合1.3をかけて道のりとし、平均時速で割ります。迂回率と時速は私の仮定で、統計の値ではありません。

例として、東京駅付近とさいたま市役所付近の座標を借りた架空の2現場を置きました。直線22.9kmで、時速20kmなら89分、30kmなら59分です。

2現場の直線距離と片道の移動時間の目安の折れ線グラフ。迂回率1.3の仮定で、120分に収まる直線距離は時速20kmで31km、30kmで46km、40kmで62km。架空の2現場22.9kmは20kmで89分
図3 2現場の直線距離と、片道の移動時間の目安(計算値)。迂回率1.3と平均時速は仮定です。現場のまど 主宰の計算(scripts/figs/ict_duty.py)。

片道120分に収まる直線距離の上限は、時速20kmで30.8km、30kmで46.2km、40kmで61.5kmです。計算の中心は次の数行です。

def minutes(straight_km, kmh, detour=1.3):
    return straight_km * detour / kmh * 60

def max_straight_km(kmh, detour=1.3, limit=120):
    return limit / 60 * kmh / detour

この計算は川や山を回り込む道、渋滞、橋の有無を見ていません。直線30kmを超える組み合わせは、必ず実際の経路で確かめてください。

ICT指針は、中小の工事会社に何から勧めていますか?

ICT指針が最初に挙げるのは、施工管理システムの活用とCCUSの活用です。課題として挙げるのは、下請への書類の催促や入力の不備の確認にかかる時間です。元請ごとにシステムが違い、職人が同じ情報を何度も入れる負担にも触れています。

指針によると、令和5年度の国土交通省の調査では、45.5%の建設業者が「書類授受の省力化」に取り組んでいました。建退共の電子申請方式による掛金納付は約5%(令和5年度末)にとどまります。ドローンや3Dスキャナも例に並びますが、指針は導入の費用と効果を比べて選ぶよう求めています。

迷う場面は専門家に確かめます。兼任ができるかは発注者や許可行政庁、計画書の書き方は行政書士に聞くのが確実です。協力会社に使うシステムを求めるときの取引条件は、顧問弁護士に確かめてください。

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現場のまどで相談するには?

入退場や日報の記録を、兼任の要件に合わせて残したい段階でも構いません。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。

準備は要りません。無料で相談するからお声がけください。

よくある質問

一般建設業の許可だけの会社にも、ICT活用の努力義務はありますか?
民間工事では、第25条の28の対象は特定建設業者です。ただし公共工事では、下請も含めてICTの体制整備に努めるとされ、ICT指針は全ての建設業者を対象にしています。
入退場の確認は、建設キャリアアップシステム(CCUS)でないといけませんか?
いいえ。運用マニュアルはCCUSかAPI連携したシステムが望ましいとしつつ、遠隔から作業員の入退場を確かめられるほかのシステムでもよいとしています。
現場を映すのに、専用のカメラが要りますか?
要りません。運用マニュアルは、映像と音声のやりとりが確実にできれば、一般的なスマートフォン、タブレット、WEB会議システムでもよいとしています。
工事の途中で請負代金が1億円を超えたら、どうなりますか?
工事ごとに専任で置くことになり、兼任の特例は使えなくなります。下請が4次以上になった場合も同じです(監理技術者制度運用マニュアル)。

出典

  1. 建設業法 第25条の28・第26条(e-Gov 法令検索)(2026年10月16日確認)
  2. 国土交通省 報道発表「建設業の価格転嫁、ICT活用、技術者専任合理化について、新制度の導入に際して詳細を定めました」(2024年12月13日)(2026年10月16日確認)
  3. 国土交通省 監理技術者制度運用マニュアル(令和7年2月1日より適用)二(2)主任技術者又は監理技術者の専任配置の特例(2026年10月16日確認)
  4. 国土交通省 情報通信技術を活用した建設工事の適正な施工を確保するための基本的な指針(ICT指針、令和6年12月)(2026年10月16日確認)
  5. 国土交通省 改正建設業法・入契法(令和6年法律第49号)の概要と施行日(2026年10月16日確認)
  6. 国土交通省 報道発表「監理技術者制度運用マニュアルを改正します」(2024年3月26日)(2026年10月16日確認)
  7. 現場のまど 移動時間の計算と図のスクリプト(scripts/figs/ict_duty.py、迂回率と平均時速は仮定、2026年10月)(2026年10月16日確認)