訪問介護のヘルパー配置は、どう組む?移動時間と資格を条件にした、ヘルパー10人・訪問30件の実験
訪問介護のヘルパー配置は、訪問の時刻、ヘルパーの資格(介護福祉士か、どの研修の修了者か)、利用者宅の間の移動時間の3つを条件に組みます。利用者宅から次の利用者宅への移動は、厚生労働省の通達で労働時間に当たります。人まわし帳の運営者が架空のヘルパー10人・訪問30件で比べると、時刻順に近い人を当てる組み方より、最適化のほうが移動時間の合計が平均9.8%短くなりました(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は派遣・警備・清掃の人材管理ガイドのページにまとめています。
要点
- 訪問介護の配置は、訪問の時刻、ヘルパーの資格、利用者宅の間の移動時間の3つを条件に組みます。
- 利用者宅から次の利用者宅への通常の移動は、労働時間に当たります(厚生労働省の通達、2021年1月15日)。
- 架空のヘルパー10人・訪問30件の実験では、最適化で移動時間の合計が平均9.8%(3.3〜15.2%)短くなりました。
- 時刻順の組み方は10回中3回で計6件の訪問に誰も当てられず、最適化は2回で計2件でした。架空データの結果です。
目次
派遣・警備・清掃の会社が配置を組む型(時刻・資格・移動を条件にする)は、訪問介護でも同じです。この記事は、同じ型の別の業種の例として、ヘルパー10人・訪問30件で試しました。派遣・警備・清掃の会社の配置は、警備の配置表の実験で書いています。
訪問介護のヘルパー配置は、何を条件に組みますか?
訪問の時刻、ヘルパーの資格、利用者宅の間の移動時間の3つです。時刻は利用者との約束で動かしにくく、資格は誰が入れるかを決め、移動時間は次の訪問に間に合うかと賃金を決めます。
資格は、介護保険法と施行令・施行規則が決めています。訪問介護は、介護福祉士か、都道府県の介護員養成研修を修了した人などが行います(介護保険法の第8条第2項、施行令第3条)。研修の課程は、介護職員初任者研修と生活援助従事者研修の2つです(施行規則第22条の23)。
| 条件 | 台帳に持つ項目 | 入れ方 |
|---|---|---|
| 訪問の時刻 | 開始の時刻、時間(30〜60分など) | 必ず守る |
| 資格 | 介護福祉士か、修了した研修の課程 | 訪問の種類ごとに必ず守る |
| 移動 | 利用者宅と事業所の位置 | 次の訪問に間に合うか、合計を小さく |
| 相性・慣れ | 担当してきた利用者、組ませない組み合わせ | できるだけ守る |
生活援助従事者研修は、生活援助中心型のサービスに従事する人のための研修です(大阪府の説明)。私が仕組みを作るときは、身体介護の訪問に誰を当てられるかを、事業所の指定の基準と運営の決まりで確かめてもらいます。その結果を条件に入れます。
ヘルパーの移動時間は、労働時間に入りますか?
入ります。利用者宅から次の利用者宅への通常の移動は、労働時間に当たります。厚生労働省は2021年1月15日の通達で、事業所・集合場所・利用者宅の相互の移動の扱いを周知しました。業務に必要な移動を命じ、自由に使えない時間なら労働時間です。
移動時間が労働時間なら、移動が短い組み方ほど、同じ訪問の数で払う賃金も、ヘルパーの拘束時間も減ります。勤怠のデータには、訪問の時間とは別に移動の時間を持たせます。賃金の計算から移動の分が落ちるのを防ぐためです。
同じ通達は、事業所で待機を命じ、自由に使えない待機時間も労働時間だとしています。利用者の都合で訪問が取り消されたときも、ほかの利用者宅で働けないかを十分に検討しないまま休ませれば、休業手当が要るとしています。取り消しが出たら、空いたヘルパーを次の候補に回せるよう、配置の画面で空き時間を見えるようにします。
配置を計算で組むと、移動時間はどれくらい変わりますか?
架空のヘルパー10人・訪問30件で比べると、最適化のほうが移動時間の合計が平均9.8%短くなりました。比べたのは、訪問を時刻順に見て、間に合う人のうち直前の場所から近い人に当てる組み方です。両方が全部の訪問を当てられた7回の平均で、時刻順は1日713分、最適化は642分でした。
差は距離だけではありません。時刻順の組み方は、10回中3回で計6件の訪問に誰も当てられませんでした。先に近くの人を使ってしまい、後の訪問に間に合う人が残らないためです。最適化で当てられなかったのは2回で計2件で、その時間帯は人数そのものが足りませんでした。
架空データは、10km四方に訪問30件を散らした例です。6割を身体介護とし、ヘルパー10人のうち3人を生活援助のみに当てました。移動は直線距離の1.3倍を時速15kmで進むと置いた運営者の仮定で、計算は1回10秒以内です。コードは scripts/experiments/houmon_kaigo_jikken.py です。
最適化した1日の割り当ては、どう見えますか?
ヘルパーごとに訪問と移動を時刻の帯に並べると、身体介護が研修の合う人だけに入り、移動の線が短くまとまっているのが見えます。乱数の種5の日を、最適化の結果で描きました。
この日は、ヘルパー2に訪問が1件も入りませんでした。訪問の数と時刻によっては、全員を均等に動かすより、少ない人数で回すほうが移動は短くなります。実際の配置では、勤務の希望や1か月の時間の偏りを条件に足します。
計算に要るデータは3つです。訪問の予定表(利用者・開始の時刻・時間・サービスの種類)、利用者宅と事業所の住所、ヘルパーの資格と働ける時間帯です。住所を地図のサービスで緯度と経度に直し、実際の道のりの時間に置き換えます。直線で置いた実験より、移動の見積もりが正確になります。
清掃や警備の配置と、何が違いますか?
違いは、訪問の時刻が分単位で決まっていることと、移動が1日の中に何度も入ることです。警備や清掃は1日1つの現場に入る形が多く、通勤の距離を小さくする話になります。訪問介護は、移動のたびに次の時刻に間に合うかを確かめます。1件の取り消しや遅れが、同じヘルパーのその日の後の訪問に響くため、組み直しは1人の1日の並びごとに考えます。
資格の条件は、警備の検定合格者の配置と同じ形で書けます。訪問の種類ごとに「この研修の人なら入れる」を持たせるだけです。
警備の配置で同じ計算を使った例は警備員の配置を最適化した実験にあります。1日に複数の現場を回る清掃スタッフの時間の分け方は現場別の人件費の記事で扱っています。急な休みへの備えは当日欠勤と予備要員の記事で計算しています。
このサイトで相談するには?
人まわし帳では、ヘルパーの資格と訪問の時刻を条件にした配置案と、移動の時間を含む勤怠のデータを、今の予定表に合わせて作ります。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。無料で相談するから、今の組み方をお聞かせください。
よくある質問
- 移動時間の分の賃金は、訪問の時給と同じでないといけませんか?
- いいえ。通達は、訪問の時間とそれ以外の時間の賃金の水準を、最低賃金を下回らない範囲で労使の話し合いで決めるとしています。
- 自宅から最初の利用者宅への移動も、労働時間ですか?
- 通達が労働時間に当たるとしているのは、事業所・集合場所・利用者宅の相互の移動です。自宅から直接向かう場合の扱いは、働き方の決まりで変わります。
- 利用者の都合で訪問が取り消されたら、ヘルパーの賃金はどうなりますか?
- ほかの利用者宅で働けないかを十分に検討せずに休ませると、休業手当が要ります(2021年1月の通達)。空いた時間を次の候補に回せるようにしておきます。
- 最適化の計算は、毎朝どれくらいかかりますか?
- 実験では、ヘルパー10人・訪問30件で1回10秒以内でした。普通のパソコンで、無料のOR-Toolsを使っています。
出典
- 厚生労働省労働基準局監督課長・老健局認知症施策・地域介護推進課長「訪問介護労働者の移動時間等の取扱いについて(周知徹底)」(基監発0115第1号・老認発0115第2号、2021年1月15日)(2026年10月16日確認)
- 介護保険法 第8条第2項(e-Gov 法令検索)(2026年10月16日確認)
- 介護保険法施行令 第3条(e-Gov 法令検索)(2026年10月16日確認)
- 介護保険法施行規則 第22条の23(e-Gov 法令検索)(2026年10月16日確認)
- 大阪府「生活援助従事者研修について」(2026年10月16日確認)
- Google OR-Tools「CP-SAT Solver」(公式ドキュメント)(2026年10月16日確認)