返品・値引きの返還インボイス、月次で税額はいくら変わる?架空の1か月で4通り計算

返品・値引きの適格返還請求書の消費税額は、売上の請求書と同じく税率ごとに1回丸めるのが基本で、明細行ごとに丸めて足し引きする方法は認められません。納品14回・返還伝票4枚の架空の1か月(8%と10%が混在、切り捨て)で、売上の税額から返還の税額を引くと、書類ごとなら71,979円、月まとめの請求書に別建てなら71,987円、明細ごとなら71,969円でした(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は販売管理の基礎のページにまとめています。
要点
- 返還の消費税額も売上と同じ税率ごとに1回丸め、明細行ごとに丸めた税額の合計は認められません。
- 架空の1か月(納品14回・返還伝票4枚、切り捨て)の差し引き税額は、月まとめに別建てが71,987円、控除後で1回が71,986円、書類ごとが71,979円でした。
- 認められない明細ごとは71,969円で、月まとめに別建てより18円小さく、丸め方を変えても幅は33円でした。
- 1万円未満の判定は元の請求・債権の単位で、伝票ごとに見ると架空の月では2枚を取り違えます。
目次
返品・値引きの返還インボイスで、月の税額は何円変わりますか?
架空の1か月で、認められる方法どうしの差は8円、認められない明細ごとを含めると18円でした。売上の税額から返還の税額を引いた額は、月まとめの請求書に別建てなら71,987円、書類ごとなら71,979円、明細行ごとなら71,969円です。
計算は、8%と10%の商品が混ざる卸を想定した架空のデータで行いました。納品は14回・明細63行で、税抜は8%が609,056円、10%が261,517円です。返還は返品2枚・値引き1枚・リベート1枚の伝票4枚、明細17行で、税抜は8%が19,910円、10%が12,962円です。端数は切り捨てで、伝票の流れは販売管理システムの独自開発にまとめています。
次の表は、4通りの単位を切り捨てで並べた結果です。丸める回数が少ないほど、丸めない税額71,987.18円に近づきます。
| 計算の単位 | 売上の税額(円) | 返還の税額(円) | 差し引き(円) | 端数処理の回数(回) | 扱い |
|---|---|---|---|---|---|
| 明細行ごと | 74,855 | 2,886 | 71,969 | 80 | 認められない(問57の注) |
| 書類ごと(納品書・返還伝票) | 74,867 | 2,888 | 71,979 | 33 | 書類を分けて交付するなら可 |
| 月まとめに別建て | 74,875 | 2,888 | 71,987 | 4 | 問62の1つ目 |
| 売上から返還を控除して1回 | 控除後で計算 | 控除後で計算 | 71,986 | 2 | 問62の2つ目 |
返還インボイスの税額は、どのように丸めればよいですか?
一の書類につき、税率ごとに1回丸めます。適格返還請求書の消費税額等は、消費税法57条の4第3項5号が適格請求書の消費税額等に「準じて計算した金額」と定めているので、売上と同じ考え方になります。この「準じて」からの読みは私の解釈で、返還だけの書類の端数処理を明記した国税庁Q&Aの問は見つかりませんでした。
明記があるのは、売上と返還を1枚の請求書にするときです。Q&A問62は、別建てで書く方法と、売上から返還を控除した金額で書く方法のどちらも認め、後者は税率ごとに1回の端数処理になると注記しています(基通1-8-20、継続適用が条件)。私が組むときは、売上と返還の税額が請求書に残る別建てを標準にします。
丸め方を切り捨て・四捨五入・切り上げに変えても、4つの単位の差し引き税額は71,969円から72,002円までの33円に収まります。月まとめに別建ては、どの丸め方でも71,987円です。売上側の端数処理の差は納品書ごとと請求書で何円違うかに、直送や預かりの返品の持ち方は卸の直送・預かり・返品の記事にまとめています。
返品・値引きの1万円未満は、どの単位で判定しますか?
元の請求・債権の単位ごとに、税込1万円未満かを判定します。1万円未満なら適格返還請求書の交付義務は免除されます(消費税法57条の4第3項ただし書、同法施行令70条の9第3項2号)。単位は基通1-8-17が定め、商品ごとや税率ごとには判定しません。
架空の月で確かめます。返品の伝票R1は税込6,446円、R2は5,604円で、伝票ごとに見るとどちらも1万円未満です。ところが2枚とも請求Xに対するもので、合算した12,050円は1万円以上なので交付が要ります。値引きのR3(請求Y)は3,366円で免除、リベートのR4(請求Z)は20,344円で交付が必要でした。
50件の判定は卸の直送・預かり・返品の持ち方にあります。
少額特例や申告の控除は、返還の税額に影響しますか?
少額特例は返還インボイスの免除に関係せず、申告の控除額も書類の税額との差は1円未満でした。少額特例は、一定規模以下の買手が令和11年9月30日までの税込1万円未満の課税仕入れを帳簿だけで控除できる制度です(Q&A問111)。売手の交付義務の免除は、税込1万円未満の返還等という別の規定です。
免除されるのは交付だけで、売上のマイナスの伝票と帳簿は残します(消法38条2項)。
申告で売上の税額から引く返還の税額は、原則として、返還した税込価額に110分の7.8(軽減は108分の6.24)を掛けて出します(消費税法38条1項)。交付した適格返還請求書の写しを保存していれば、書類の消費税額等に100分の78を掛ける方法も選べます(消費税法施行令58条1項)。
別建ての月で比べると、原則は2,253.36円、書類の税額2,888円の100分の78は2,252.64円で、差は0.72円です。どちらを選ぶかは、売上の税額の計算方法との組み合わせを含めて、顧問税理士に確かめてから決めてください。
販売管理では、返還をどう持てばよいですか?
返還は売上のマイナスの行として、元の請求番号と税率を付けて持ちます。商いの帳場で組むときは、次の順で決めています。
- 返品・値引き・リベートごとに返還伝票を起こし、元の請求番号を持たせる
- 元の請求ごとに税込の返還額を合算し、1万円以上なら適格返還請求書の対象にする
- 請求書は、別建てか控除後の金額かを得意先ごとに決める
- どちらも税率ごとに1回だけ丸め、丸め方は全得意先で1つにする。返還の日付と元の取引の月も印字する
計算はreturns_credit_calc.pyで再現できます。データは乱数の種20261016の架空のもので、売上は税抜の対価から、返還は私が置いた金額から計算しました。税込から割り返す場合と、返還の日付が月をまたぐ場合は計算していません。
返還の税額の丸め方を、一緒に決める
商いの帳場では、返品・値引き・リベートを請求書にどう書くかを決め、その書き方で計算する販売管理を作ります。何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。
準備は要りません。無料で相談するからお送りください。
よくある質問
- 返品の税額は、明細行ごとに計算してもよいですか?
- いいえ。適格請求書の消費税額等は一の書類につき税率ごとに1回の端数処理で、明細行ごとに丸めた税額の合計は認められません(Q&A問57の注)。返還も同じ考え方で、税率ごとに1回丸めます。
- 月まとめの請求書で返品分を引くとき、書類は別に要りますか?
- 1枚で足ります。Q&A問62は、適格請求書と適格返還請求書の記載事項を1枚の請求書に書いて交付できるとしています。
- 少額特例を使う得意先には、返還インボイスを出さなくてよいですか?
- いいえ。少額特例は買手の仕入税額控除の特例で、売手の交付義務の免除は税込1万円未満の返還等という別の規定(消令70の9第3項2号)です。
- 返品が1万円未満なら、売上のマイナスの伝票も要りませんか?
- 要ります。免除されるのは適格返還請求書の交付だけで、売上のマイナスと返還の帳簿は金額にかかわらず残します(消法38条2項)。
出典
- 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(平成30年6月、令和8年5月改訂)問27・問28・問57・問60・問62・問111(2026年10月17日確認)
- e-Gov法令検索「消費税法」第38条第1項・第57条の4第3項(2026年10月17日確認)
- e-Gov法令検索「消費税法施行令」第58条第1項・第70条の9第3項・第70条の10(2026年10月17日確認)
- 国税庁「消費税法基本通達」第1章第8節 1-8-17・1-8-20(2026年10月17日確認)
- 商いの帳場の計算(2026年10月17日、架空の1か月分の納品と返還伝票、乱数の種 20261016。/sales-management-app/scripts/returns_credit_calc.py)(2026年10月17日確認)


