警備の請求単価の決め方日当・社会保険・交通費から現場別の採算を計算
警備の請求単価で赤字になる境目は、1人1日の原価、つまり賃金(割増を含む)と法定福利費、交通費、間接費の合計です。令和8年度の最低賃金の全国加重平均1,177円で8時間働いてもらうと日当は9,416円で、法定福利費15%・間接費10%・交通費1,000円(いずれも仮の値)を足した原価は12,770円です。請求単価がこれを下回れば赤字で、現場5例の計算では2例が下回りました(人まわし帳の運営者の計算、2026年10月時点)。
全体の流れと費用は派遣・警備・清掃の人材管理ガイドのページにまとめています。
要点
- 警備の請求単価の赤字の境目は、賃金(割増を含む)+法定福利費+交通費+間接費の合計で、1人1日の原価に等しくなります。
- 最低賃金の全国加重平均1,177円・8時間で日当は9,416円。法定福利費15%などを足した原価は12,770円です(仮の値、令和8年度)。
- 現場5例では、請求単価が14,000円の現場の粗利率は8.8%、12,000円で交通費が高い現場はマイナス2.9%の赤字でした。
- 法定福利費率を10%から20%に変えると、境目の単価は870円から1,240円動きます。時給が100円上がれば、日勤は1,000円上がります。
目次
警備の請求単価は、どう計算して決めますか?
請求単価の赤字の境目は、1人1日の原価を足し上げた額に等しくなります。原価は、賃金(割増を含む)、法定福利費、交通費、間接費の4つで、式にすると次のとおりです。
# 1人1日の原価と粗利(円)
pay = wage * hours + wage * 0.25 * (ot + night) # 賃金(時間外・深夜の割増25%)
cost = pay * (1 + fukuri + kansetsu) + fare # 原価
gross = price - cost # 粗利。0になる price が赤字の境目
wageは時給、hoursは実働時間、otは時間外の時間、nightは深夜の時間、fareは交通費です。fukuriとkansetsuは、賃金に対する法定福利費と間接費の率です。
ここに出す数字は、人まわし帳の運営者が置いた前提による計算値です。実在の会社の実績ではありません。
時給は令和8年度の最低賃金ぴったり、法定福利費は賃金の15%、間接費(制服・教育・保険・管理)は賃金の10%、請求単価と交通費は現場ごとの仮の値です。計算はscripts/figs/keibi_seikyu.pyで再現できます。時給を自社の値に替えれば、そのまま自社の境目の単価になります。現場ごとに実働時間と交通費が違うので、式は現場の数だけ回します。
日当は、最低賃金から8時間と休憩1時間でどう出しますか?
日当は、時給に実働時間を掛けて出します。休憩の1時間は給与の対象にしない前提で、拘束9時間のうち実働は8時間です。令和8年度の地域別最低賃金は、全国加重平均が1,177円、最高が1,280円、最低が1,085円です(厚生労働省、2026年9月3日公表)。
| 時給の置き方 | 時給 | 日当(実働8時間) |
|---|---|---|
| 最低額の地域 | 1,085円 | 8,680円 |
| 全国加重平均 | 1,177円 | 9,416円 |
| 最高額の地域 | 1,280円 | 10,240円 |
実働8時間を超えた分は時間外で、2割5分以上の割増賃金がかかります(労働基準法第37条)。22時から5時までの深夜も2割5分以上です。休憩は、労働時間が8時間を超えるなら1時間以上与える決まりです(同法第34条)。延長がありうる現場で拘束を9時間にしておくのは、この休憩を確保するためです。
割増は賃金そのものに乗るので、法定福利費と間接費の計算もその分だけ大きくなります。ここでは、時間外と深夜が重なる現場は例に入れていません。
法定福利費・交通費・間接費は、いくら足しますか?
法定福利費は賃金の15%、間接費は賃金の10%を足し、交通費は現場ごとの実費を加えます。15%は仮の値です。
厚生年金の保険料率は18.3%です(日本年金機構)。労使で半分ずつ負担するので、会社分は9.15%です。これに健康保険、雇用保険、労災保険が加わり、合計は加入している保険と業種で変わります。加入の条件を満たす隊員にだけかかるので、短時間の隊員が多い会社は率が下がります。
交通費は、現場までの往復の実費を1人1日で見ます。直行直帰の現場が遠いほど増えるので、この記事では800円から1,500円としました。間接費は、制服や装備、教育、保険、管理の費用を賃金の10%にまとめた仮の値です。自社の決算から、賃金に対する割合で置き直せます。
現場5例で、赤字になる単価はいくらですか?
最低賃金ぴったりで計算した赤字の境目は、12,350円(C)から16,448円(E)までです。請求単価がこれを下回るCとEの2例が赤字でした。
| 現場 | 時給 | 実働 | 賃金 | 法定福利費 | 交通費 | 間接費 | 原価(境目) | 請求単価 | 粗利 | 粗利率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A 交通誘導・日勤(全国加重平均) | 1,177円 | 8h | 9,416円 | 1,412円 | 1,000円 | 942円 | 12,770円 | 14,000円 | 1,230円 | 8.8% |
| B 施設警備・日勤(最高額の地域) | 1,280円 | 8h | 10,240円 | 1,536円 | 800円 | 1,024円 | 13,600円 | 15,000円 | 1,400円 | 9.3% |
| C 交通誘導・日勤(最低額の地域) | 1,085円 | 8h | 8,680円 | 1,302円 | 1,500円 | 868円 | 12,350円 | 12,000円 | -350円 | -2.9% |
| D 交通誘導・夜間(深夜7時間) | 1,177円 | 8h | 11,476円 | 1,721円 | 1,000円 | 1,148円 | 15,345円 | 17,000円 | 1,655円 | 9.7% |
| E 施設警備・日勤に2時間延長 | 1,177円 | 10h | 12,358円 | 1,854円 | 1,000円 | 1,236円 | 16,448円 | 16,000円 | -448円 | -2.8% |
Cは最低賃金が低い地域なので日当は安いものの、遠い現場の交通費が1,500円かかり、請求単価12,000円では350円の赤字です。Eは、請求単価16,000円が2時間の延長を織り込んでいない想定です。賃金が12,358円に増え、原価が請求単価を448円上回ります。
粗利率20%を目標にするなら、単価は原価を0.8で割った額にします。Aは15,962円、Cは15,438円、Eは20,560円です。
前提が違うと、赤字の境目はどう動きますか?
法定福利費率を10%から20%にすると、境目は5例とも870円から1,240円動きます。Aは12,299円から13,241円、Eは15,830円から17,066円です。時給が100円上がれば、日勤は1日1,000円、Dは1,219円、Eは1,312円、原価が増えます。
1人1日の差は小さく見えても、数が掛かります。隊員・登録スタッフが80人、現場が30か所で、1日の配置が60人の会社(計算機の前提)が月25日稼働すると、1人1日の単価が1,000円足りないだけで月150万円の差です。式は60人×25日×1,000円です。
派遣では、料金と賃金の差に社会保険料の会社負担などが入ります。派遣の料金と賃金の差の記事に厚生労働省の集計があります。かけ持ちの移動時間を現場別に付ける方法は、ビル清掃の現場別の人件費の記事で計算しました。
現場別の採算を、毎月出すには何を整えますか?
現場ごとの実働時間、時間外と深夜の時間、交通費を、勤怠から現場コード単位で取り出せるようにします。この3つが現場別に出れば、請求単価を引くだけで、どの現場が赤字かが毎月分かります。
現場コードがないと、1人の給与を現場に配る計算が人の手作業になり、月末にまとめて見ても遅れがちです。上下番や打刻の時点で現場コードを付けておけば、赤字の現場は翌月の契約の見直しに間に合います。取引先との単価の話し合いでは、原価と境目の単価を現場ごとに出した表が根拠になります。
勤怠から請求への転記を減らす方法は勤怠と請求の連携の記事に、仕組み全体の考え方は派遣・警備・清掃の管理システムの柱のページにあります。電話と転記の時間は、計算機に自社の数字を入れると出ます。
請求の転記や、現場ごとの粗利を毎月自動で出す仕組みの導入例(イメージ・想定)は警備会社Xの導入例に、他社との費用の出典と確認日は人材管理システムの費用にあります。
このサイトで相談するには?
何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。人まわし帳では、今の単価の決め方と勤怠のやり方をうかがい、御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。
準備は要りません。無料で相談するからどうぞ。返信は最短当日です。
よくある質問
- 警備の請求単価の相場は、いくらですか?
- この記事では相場を示していません。請求単価は取引先との契約で決まり、公的な統計もないためです。代わりに、自社の原価から赤字の境目の単価を出す式を示しました。
- 時給は最低賃金ぴったりで計算してよいのですか?
- 境目の下限を知るための置き方です。実際の時給は最低賃金以上なので、時給が100円高ければ、日勤の境目は1日1,000円高くなります。自社の時給で計算し直してください。
- 法定福利費は、何%で見ればよいですか?
- 会社ごとに違います。厚生年金は保険料率18.3%を労使で半分ずつ負担するので会社分は9.15%で、健康保険・雇用保険・労災保険が加わります。この記事は仮に15%とし、10%と20%の場合も示しました。
- 夜間や延長で、時間外と深夜が重なる場合は?
- 例には重なる現場を入れていません。労働基準法第37条の割増の重なりは、賃金の計算と同じ条文で確かめて足してください。
出典
- 厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」(2026年9月3日公表。全国加重平均1,177円・最高1,280円・最低1,085円)(2026年10月17日確認)
- 労働基準法(第32条・第34条・第37条)e-Gov法令検索(2026年10月17日確認)
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」(厚生年金保険料率18.3%)(2026年10月17日確認)