派遣の3年ルールと抵触日は、日本とドイツでどう違う?同じ就業例で期限日を計算
日本の労働者派遣法は、派遣先の事業所単位と、同じ組織単位への同じ人の派遣(個人単位)を、それぞれ3年までとしています。ドイツの労働者派遣法(AÜG)は、同じ人を同じ派遣先へ連続18か月までとし、協約で賃金の均等待遇から外れてよいのも最初の9か月までです。人まわし帳の運営者が同じ架空の就業例で計算すると、異動と延長がある場合、日本は最長51か月、ドイツは18か月でした。(2026年10月時点)
全体の流れと費用は派遣・警備・清掃の人材管理ガイドのページにまとめています。
要点
- 日本の派遣の3年ルールは、派遣先の事業所単位と、同じ組織単位への同じ人の派遣の2つで、どちらも3年です。
- ドイツは同じ人を同じ派遣先へ連続18か月までで、課が変わっても数え直しません。
- 同じ架空の就業例では、働ける期間は日本が29か月(延長なし)と51か月(延長あり)、ドイツが18か月でした(計算値)。
- どちらの国も、空白が3か月以内なら前の派遣と通算するので、台帳には前の派遣の終了日も要ります。
目次
派遣の3年ルールと抵触日は、日本とドイツでどう違いますか?
日本は「事業所」と「組織単位にいる個人」の2つに3年の期限があります。ドイツは「派遣先にいる個人」の1つに18か月の期限です。抵触日は、期間制限を過ぎる最初の日のことです。
日本の労働者派遣法は第40条の2で事業所単位を、第35条の3と第40条の3で個人単位を定めています。ドイツの労働者派遣法(AÜG)は §1 Abs.1bで、同じ人を同じ派遣先へ「連続18か月を超えて」派遣することを禁じています。
条文を並べると、日本は延長の道があり、ドイツは賃金の期限も別に持つ点が違います。
| 比べる点 | 日本 | ドイツ |
|---|---|---|
| 期限の単位 | 事業所と、組織単位ごとの同じ人 | 派遣先ごとの同じ人 |
| 長さ | どちらも3年 | 18か月 |
| 延長 | 事業所単位は意見聴取で3年ずつ | 派遣先の業界の労働協約で別の上限を決められる |
| 通算する空白 | 3か月以内 | 3か月以内 |
| 賃金の期限 | なし(待遇の決め方の方式による) | 協約の例外は最初の9か月まで |
| 期限から外れる場合 | 無期雇用、60歳以上など | 業界の協約で上限を変えた場合 |
日本の対象外は、法第40条の2第1項の各号です。無期雇用の派遣労働者と60歳以上の人(施行規則第32条の4)が当たります。終わりの決まった事業の業務や、産休・育休・介護休業の代替も対象外です。
日本の抵触日は、事業所単位と個人単位でどう決まりますか?
事業所単位は、その事業所が派遣の受入れを始めた日から3年です。個人単位は、同じ人が同じ組織単位で働き始めた日から3年です。組織単位は課やグループのことです。厚生労働省の「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(派遣先指針)は、業務が近く、長が業務の配分と労務管理の権限を持つまとまりとしています。
事業所単位の抵触日は、契約を結ぶ前に派遣先が派遣元へ書面などで通知します(法第26条第4項、施行規則第24条の2)。延ばすときは、抵触日の1か月前の日までに過半数労働組合などの意見を聴きます。延長は3年までです(法第40条の2第3項・第4項)。延長しても、同じ人が同じ組織単位で3年を超えては働けません(法第40条の3)。
前の派遣と次の派遣の間が3か月以内なら、続けて受け入れたものとみなします(派遣先指針第2の14(3)(4))。ただし、延長の手続きを避けるために3か月空けて受入れを続ける行為は、法の趣旨に反すると同じ指針が書いています。期間制限に違反した受入れは、派遣先が派遣労働者に労働契約を申し込んだとみなされる場合があります(法第40条の6)。
ドイツの18か月の上限は、どう数えますか?
同じ派遣労働者が同じ派遣先で働いた月を、派遣先の中の部署に関係なく通算して数えます。AÜG §1 Abs.1bは、上限を「同じ派遣先」で決めています。日本のように課を移って数え直す仕組みはありません。
前の派遣は、同じ派遣元の分もほかの派遣元の分も、空白が3か月以内なら全部通算します。派遣会社を替えても、派遣先が同じなら期限は延びません。派遣先の業界の労働協約は、18か月と違う上限を決められます。
賃金の期限は、働ける期間の期限とは別にあります。§8 Abs.4は、労働協約で賃金の均等待遇から外れてよいのを、同じ派遣先への派遣の最初の9か月までとしています。長くする協約でも、遅くとも15か月までに、派遣先の同じような仕事の労働者と同等の賃金に達しなければなりません。こちらも空白3か月以内なら通算です。
同じ就業例で計算すると、期限日はいつになりますか?
架空の就業例では、派遣労働者Aが働ける期間は日本で29か月か51か月、ドイツで18か月でした(計算値)。日本の2つは、事業所単位の延長がない場合とある場合です。例の派遣先は物流センターで、派遣の受入れを2026年4月1日に始めました。Aは2026年11月1日に入荷課で働き始め、2028年2月1日に出荷課へ異動します。
日本では、事業所単位の抵触日は2029年4月1日で、意見聴取の期限は2029年3月1日です。延長すれば抵触日は2032年4月1日に移ります。Aの個人単位の抵触日は、入荷課のままなら2029年11月1日、出荷課では2031年2月1日です。働ける最後の日は、2つの抵触日のうち早い方の前日です。
ドイツでは、課の異動に関係なく2028年5月1日が18か月を過ぎる日です。協約で賃金を下げていた場合も、2027年8月1日から均等待遇になります。
計算はscripts/figs/haken_kikan.pyで再現できます。要点は次の数行です。
jp_site = add_months(D(2026, 4, 1), 36) # 事業所単位の抵触日
jp_hearing = add_months(jp_site, -1) # 意見聴取の期限
jp_site_ext = add_months(jp_site, 36) # 延長後の抵触日
jp_person = add_months(D(2028, 2, 1), 36) # 異動後の個人単位の抵触日
jp_last = min(jp_site_ext, jp_person) - timedelta(days=1)
de_limit = add_months(D(2026, 11, 1), 18) # 18か月を過ぎる日
月は暦の月で足しました。初日を入れるか、月末をどう扱うかは条文の解釈にかかわります。実際の抵触日は、派遣先の通知と社会保険労務士の確認に合わせてください。
管理台帳には、どの日付を持てばよいですか?
日本は3つの起点と延長の日付、ドイツは派遣先ごとの起点と賃金の切替日を持つと、期限をすべて計算で出せます。期限日そのものを手で書き写すと、異動や延長のたびに書き直しが漏れます。私が仕組みを作るときは、起点の日付だけを台帳に持たせ、期限日は毎回計算します。
| 持つ日付 | 日本 | ドイツ |
|---|---|---|
| 事業所の受入れ開始日と抵触日 | 要る | 要らない |
| 意見聴取の期限と延長後の抵触日 | 要る | 要らない |
| 組織単位ごとの開始日 | 異動のたびに要る | 要らない |
| 前の派遣の終了日 | 要る(空白3か月) | 要る(ほかの派遣元の分も) |
| 賃金の均等待遇の切替日 | 要らない | 要る(9か月・15か月) |
| 期限から外れる理由 | 無期雇用・60歳以上など | 業界の労働協約 |
ドイツでは、ほかの派遣元による前の派遣も通算します。本人や派遣先に前の就業を聞いて記録しないと、自社の台帳だけでは期限を正しく出せません。
日本で次の3つに迷ったら、社会保険労務士に確かめてから仕組みに入れてください。1つ目は、どこまでを1つの組織単位とみるかです。2つ目は、受入れ開始日が分からない事業所の起点です。3つ目は、無期雇用への転換を期限の計算に入れる時期です。
抵触日を台帳の欄から出す流れは派遣元管理台帳の記事、期限が来た人の次の就業先を探す手順は派遣のマッチングの自動化の記事にあります。
このサイトで相談するには?
人まわし帳は、人材オペレーション管理システムの構築をお手伝いしています。派遣先の通知と異動の記録から抵触日を計算し、期限が近い人を知らせる仕組みも作れます。
何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。準備は要らないので、無料で相談するからどうぞ。
よくある質問
- 抵触日は、誰が誰に知らせるのですか?
- 派遣先が派遣元に知らせます。法第26条第4項により、派遣先は労働者派遣契約を結ぶ前に、事業所単位の抵触日を書面などで通知します。
- 無期雇用の派遣労働者にも、3年ルールはかかりますか?
- いいえ。法第40条の2第1項第1号により、無期雇用の派遣労働者は期間制限の対象外です。60歳以上の人も対象外です。
- ドイツでは、別の派遣会社に替えれば数え直せますか?
- いいえ。AÜG §1 Abs.1b は、ほかの派遣元による前の派遣も、空白が3か月以内なら通算すると定めています。
- 3か月空ければ、日本でも延長の手続きは要りませんか?
- 勧められません。派遣先指針は、延長の手続きを避ける目的で3か月空けて受入れを続ける行為を、法の趣旨に反するとしています。
出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(第26条第4項・第35条の3・第40条の2・第40条の3・第40条の6、e-Gov 法令検索)(2026年10月16日確認)
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(第24条の2・第32条の4・第33条の3、e-Gov 法令検索)(2026年10月16日確認)
- 派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号、最終改正 令和2年厚生労働省告示第346号)第2の14(東京労働局の掲載)(2026年10月16日確認)
- Gesetz zur Regelung der Arbeitnehmerüberlassung(AÜG)§1 Abs.1b(ドイツ連邦司法省 gesetze-im-internet.de)(2026年10月16日確認)
- Gesetz zur Regelung der Arbeitnehmerüberlassung(AÜG)§8 Abs.4(ドイツ連邦司法省 gesetze-im-internet.de)(2026年10月16日確認)