施設警備の仮眠時間は、労働時間に当たる?判例と勤務パターン別の時間外の試算
施設警備の泊り勤務の仮眠時間は、警報や電話への対応を義務付けていれば労働時間に当たります。最高裁が2002年2月28日の大星ビル管理事件でそう判断しました。休憩2時間・仮眠8時間の24時間勤務を月8回とすると、仮眠を数えるかどうかで月の労働時間は112時間から176時間に変わります。変形労働時間制や労働基準法第41条第3号の許可がない場合の運営者の試算では、時間外は48時間から112時間に増えます(2026年10月時点)。
全体の流れと費用は派遣・警備・清掃の人材管理ガイドのページにまとめています。
要点
- 警報や電話への対応を義務付けた仮眠時間は労働時間に当たると、最高裁が2002年2月28日に判断しました。
- 休憩2時間・仮眠8時間の24時間勤務を月8回なら、月の労働時間は仮眠を数えると112時間から176時間になります。
- 1日8時間を超えた時間外は48時間から112時間に増え、36協定の特別条項でも超えられない単月100時間を上回ります(試算)。
- 1か月単位の変形労働時間制でも、30日の月の総枠171.4時間に176時間は収まらず、月7回の154時間なら収まります。
目次
施設警備の仮眠時間は、労働時間に当たるのですか?
仮眠中も警報や電話に対応する義務があれば、仮眠時間は労働時間に当たります。最高裁の第一小法廷は2002年2月28日の大星ビル管理事件で、ビル管理会社の泊り勤務の仮眠時間を労働基準法32条の労働時間としました。
数えるかどうかで、月の時間は大きく変わります。休憩2時間・仮眠8時間の24時間勤務を月8回入れる例で、運営者が計算すると次の表のとおりです。時間外は、1回の勤務で8時間を超えた分を数えました。
| 項目(24時間勤務を月8回) | 仮眠を数えない | 仮眠を数える |
|---|---|---|
| 1回の労働時間 | 14時間 | 22時間 |
| 月の労働時間 | 112時間 | 176時間 |
| 1日8時間を超えた時間外(月) | 48時間 | 112時間 |
| 36協定の限度時間 月45時間 | 超える | 超える |
| 特別条項の単月 100時間未満 | 収まる | 超える |
大星ビル管理事件で、最高裁は何を理由にしたのですか?
理由は、仮眠中も「労働からの解放が保障されていない」ことでした。判決は、実作業をしていないだけでは使用者の指揮命令から離れたとはいえないと述べています。
事件の泊り勤務は、原則として9時から翌朝9時までの24時間です。その間に休憩が合計1〜2時間、仮眠が連続7〜9時間ありました。従業員は仮眠室での待機と、警報や電話へのすぐの対応を義務付けられていました。外出は原則禁止で、飲酒も禁じられていました。
賃金の扱いは分けて判断されています。最高裁は、泊り勤務手当を仮眠の対価とする契約の解釈を認めました。そのうえで、労働基準法13条と37条により、法定の時間外と深夜の割増賃金は払う義務があるとしています。
警備業でも同じ考え方の判決があります。業界紙の2017年6月5日の記事によると、千葉地裁はスーパーの警備員の仮眠と休憩を労働時間と認め、約180万円の支払いを命じました。仮眠中の緊急対応は年に数回でした。
勤務パターン別に、月の労働時間と時間外はどう変わりますか?
どのパターンでも、仮眠を数えると時間外は大きく増えます。運営者が4つの勤務パターンで、1回の勤務を1日として8時間を超えた分を数えました。
| パターン | 月の労働時間 数えない/数える(時間) | 月の時間外 数えない/数える(時間) |
|---|---|---|
| A 24時間・休憩2・仮眠8・月8回 | 112 / 176 | 48 / 112 |
| B 24時間・休憩1・仮眠7・月8回 | 128 / 184 | 64 / 120 |
| C 24時間・休憩2・仮眠8・月10回 | 140 / 220 | 60 / 140 |
| D 16時間・休憩1・仮眠6・月10回 | 90 / 150 | 10 / 70 |
計算の中心は次の数行で、scripts/figs/kamin_jikan.py で再現できます。
for name, span, rest, nap, n in PATTERNS: # 拘束・休憩・仮眠・月の回数
work_ex = span - rest - nap # 仮眠を数えない
work_in = span - rest # 仮眠を数える
ot_ex = max(0, work_ex - 8) * n # 1日8時間を超えた分
ot_in = max(0, work_in - 8) * n
限界もあります。勤務が2日にまたがる扱い、法定休日、変形労働時間制はこの表に入れていません。
36協定の上限と比べると、どこで超えますか?
仮眠を数えると、24時間勤務を月8回入れた時点で特別条項の上限も超えます。労働基準法36条の限度時間は月45時間・年360時間です。特別条項でも、休日労働を含めて単月100時間未満、年720時間以内に収める必要があります。
パターンAの時間外112時間は、単月100時間を12時間上回ります。12か月続けば1,344時間で、年720時間の2倍近くです。仮眠を数えなくても月48時間で、月45時間を超えます。
1か月単位の変形労働時間制は、平均して週40時間に収める仕組みです。30日の月の総枠は、40時間×30日÷7で171.4時間です。仮眠を含めたパターンAの176時間は総枠を超え、月7回の154時間なら収まります。最高裁は同じ判決で、変形を使うには各週・各日の所定労働時間を就業規則などで決めておく必要があるとしています。
仮眠を労働時間にしないには、何が要りますか?
仮眠中に対応の義務を負わせないことが条件です。大星ビル管理事件の判決は、対応の必要が「皆無に等しい」など、実質的に義務がないといえる事情があるかどうかも見ています。たとえば起きている交代要員を置き、仮眠中の人を起こさない体制にできるかを確かめます。
もう1つの道として、労働基準法41条3号があります。監視や断続的な労働に就く人は、使用者が行政官庁の許可を受ければ、労働時間・休憩・休日の規定から外れます。許可がない限り、この扱いはできません。
専門家に確かめる場面は次の3つです。勤務表の作り方を変形労働時間制に合わせるときは、社会保険労務士に就業規則の書き方を確かめます。41条3号の許可を考えるときは、労働基準監督署に相談します。過去の仮眠時間の割増賃金を精算するときは、弁護士か社会保険労務士に計算の前提を確かめます。
勤務表と給与の仕組みでは、何を記録すればよいですか?
仮眠と休憩を、勤務の中で分けて記録することから始めます。泊り勤務を「1当務」とだけ記録すると、仮眠の扱いを変えたときに時間を計算し直せません。
私が仕組みを作るときは、当務ごとに休憩と仮眠の開始・終了の予定と実際を持たせます。仮眠中に起こされた時刻と実作業の分も残します。深夜の22時から5時に重なる時間は、そこから自動で数えます。
同じ記録から、給与計算に渡す時間外と深夜の時間も出せます。仮眠を労働時間として数える運用へ変えても、記録をそのまま使って計算し直せます。人まわし帳で最初に作るのは、月の途中で総枠と36協定の残りが分かる画面です。泊り勤務を何回まで入れられるかを、勤務表を組む段階で確かめられるようにするためです。
当務の記録を給与と請求へ渡す流れは勤怠から請求までの転記の記事、警備員の人数と年齢の統計は警備業の統計の記事にあります。
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よくある質問
- 仮眠時間を労働時間にしたら、全部に時給を払うのですか?
- 契約しだいです。最高裁は泊り勤務手当を仮眠の対価とする契約を認めましたが、法定の時間外と深夜の割増賃金は別に払う義務があるとしました。
- 仮眠中に一度も起こされなければ、労働時間になりませんか?
- なりえます。大星ビル管理事件では、実作業の有無ではなく、警報や電話に対応する義務があったかどうかで判断されました。
- 16時間の夜勤でも、仮眠は問題になりますか?
- はい。休憩1時間・仮眠6時間の16時間勤務を月10回なら、仮眠を数えると時間外は10時間から70時間に増えます(運営者の試算)。
- 変形労働時間制にすれば、時間外はなくなりますか?
- いいえ。各日の所定労働時間を前もって決めることが前提で、決めた所定を超えた分は時間外です。月の合計が総枠を超える組み方もできません。
出典
- 最高裁判所第一小法廷 平成14年2月28日判決(平成9(オ)608、割増賃金請求事件、民集56巻2号361頁)(2026年10月16日確認)
- 労働基準法 第32条・第32条の2・第34条・第36条・第37条・第41条(e-Gov 法令検索)(2026年10月16日確認)
- 業界紙の記事「警備業・“仮眠中”も労働時間 年数回は緊急対応 千葉地裁」(2017年6月5日)(2026年10月16日確認)