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コラム法律・制度

労使協定方式の一般賃金は、どう比べる?令和9年度の通勤手当67円と地域指数で清掃員の時給を計算

労使協定方式では、派遣スタッフの賃金を、同じ地域で同じ仕事をする一般の労働者の平均(一般賃金)と同等以上にします。厚生労働省の通知の式で計算すると(運営者の計算)、ビル・建物清掃員の一般賃金は東京の経験1年で、令和8年度が時給1,276円、令和9年度が1,565円です。通勤手当はこれとは別で、時給換算は令和8年度が79円、令和9年度が67円です。比べ方を選ぶと結果が変わるので、給与のデータに職種・経験年数・地域・通勤手当の方式を持たせます。(2026年10月時点)

全体の流れと費用は派遣・警備・清掃の人材管理ガイドのページにまとめています。

要点

  • 労使協定方式では、派遣スタッフの賃金を一般賃金(同じ地域・同じ仕事の平均)と同等以上にします(派遣法第30条の4第1項第2号イ)。
  • ビル・建物清掃員の一般賃金は、東京の経験1年で令和8年度が時給1,276円、令和9年度が1,565円です(運営者の計算)。
  • 通勤手当は実費を払うか、時給換算で一般の額以上(令和8年度79円、令和9年度67円)を払うかを選び、時給換算の方法なら基本給と合算して比べられます。
  • 比べるには、職種・経験年数・派遣先の地域・通勤手当の方式など7項目を、給与と契約のデータに持たせます。
目次
  1. 労使協定方式の一般賃金とは、何と比べる額ですか?
  2. 一般賃金は、どういう式で計算しますか?
  3. 令和9年度の値は、どう変わりましたか?
  4. 通勤手当の79円(令和8年度)は、どう比べればよいですか?
  5. 給与のデータには、どの項目を持たせればよいですか?
  6. 毎年の見直しで、どこが手間になりますか?
  7. このサイトで相談するには?
  8. よくある質問

労使協定方式の一般賃金とは、何と比べる額ですか?

派遣スタッフの賃金が下回ってはいけない、外の相場の額です。労働者派遣法第30条の4第1項第2号イは、協定で決める賃金を「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」と同等以上にするよう定めています。施行規則第25条の9は、その額を派遣先の地域で同程度の能力と経験を持つ人の平均としています。

派遣の待遇の決め方は2つあり、どちらを使うかで比べる相手が変わります。

方式 根拠 比べる相手 要るデータ
派遣先均等・均衡方式 第30条の3 派遣先の通常の労働者 派遣先からもらう待遇の情報
労使協定方式 第30条の4 一般賃金(国が毎年度出す) 職種・経験年数・地域・手当の方式

労使協定方式は、派遣先が変わっても国の同じ表で比べられます。派遣先ごとに待遇の情報を集めなくて済む点が、派遣先の多い登録型の派遣会社で選ばれる理由の1つです。協定を結んだ派遣元は、毎年6月30日までに出す派遣の事業報告書に協定を添えます(施行規則第17条)。

一般賃金は、どういう式で計算しますか?

基準値 × 能力・経験調整指数 × 地域指数で、1円未満は切り上げます。厚生労働省の令和8年度の通知(職発0825第1号)が式と数字を出しています。経験年数の指数は0年を100として、1年113.8、3年124.8、10年142.7、20年177.4です。

ビル・建物清掃員(別添1の1711)で計算しました。通知の表では、基準値に経験の指数を掛けた値が0年1,006円、1年1,145円です。これに東京の地域指数111.4を掛けると、0年は1,121円、1年は1,276円になります。静岡(100.7)の0年は1,014円、宮城(96.3)の0年は969円です。

ビル・建物清掃員の一般賃金(時給)は、地域と経験年数でどう変わるか基準値×能力・経験調整指数×地域指数(1円未満切り上げ)。東京の0年は1,121円、20年は1,989円1,000円1,250円1,500円1,750円2,000円最低賃金の最も低い県 1,085円(令和8年度の答申)東京 1,989円静岡 1,798円宮城 1,719円0年1年2年3年5年10年20年静岡の0年1,014円と宮城の0年969円は、全国で最も低い最低賃金も下回る。実際の下限は、その地域の最低賃金になる出典:厚生労働省 職発0825第1号(令和7年8月25日、令和8年度の一般賃金)別添1・別添3。計算は人まわし帳の運営者
図1 地域と経験年数による一般賃金の違い。令和8年度の通知の別添1・別添3から、人まわし帳の運営者が計算しました(scripts/figs/roushi_kyoutei.py)。

静岡と宮城の0年の値は、令和8年度の地域別最低賃金の答申で最も低い1,085円も下回ります。一般賃金は最低賃金とは別の基準なので、こうした地域では最低賃金が実際の下限になります。

令和9年度の値は、どう変わりましたか?

令和8年8月28日の通知(職発0828第5号)で、令和9年度の基準値と地域指数が出ています。令和9年4月1日から使います。ビル・建物清掃員(別添1の1711)の基準値は0年1,207円、経験1年の指数を掛けた値は1,418円です。地域指数は、東京110.3、静岡100.5、宮城95.9です。式は令和8年度と同じで、1円未満は切り上げます。ただし経験年数の指数は、令和9年度の通知で表が変わりました。0年を100.0として、1年は117.5、2年は125.3、3年は130.0、5年は136.2です。10年は139.8、20年は181.4です(通知の本文、PDFの6ページ)。令和8年度の1年は113.8だったので、経験1年の値は基準値の伸び以上に増えます。東京・経験1年は、1,207円に1.175を掛けて1,418円(端数は1,418.2円)です。これに東京の地域指数1.103を掛けると1,564.3円で、切り上げて1,565円になります(運営者の計算。基準値と地域指数は別添1・別添3の値で、通知の本文には載っていません)。

地域・経験 令和8年度 令和9年度
東京・0年 1,121円 1,332円
東京・1年 1,276円 1,565円
静岡・0年 1,014円 1,214円
宮城・0年 969円 1,158円
通勤手当の時給換算 79円 67円

通勤手当の時給換算が79円から67円に下がったのは、算出の基礎が変わったためです。通知は、令和7年の調査(就業条件総合調査)の通勤手当の平均額と、令和7年の統計(賃金構造基本統計調査)の所定内給与・特別給与の合計額から出した額としています(PDFの8ページ)。

賃金が上がる年は協定の額も上げやすいのですが、手当や賃金を下げる場合は別です。通知は、一般賃金の額が下がった場合でも、従前の協定の額を基礎に、労使で十分に協議することが望ましいとしています。協議を尽くしても待遇を引き下げるなら、労働条件の不利益変更になり得るので、労働契約法第9条に基づき、原則として労使双方の合意が必要です(PDFの2ページ)。通勤手当を67円に改める協定の更新は、この合意の扱いを先に決めてから進めます。また、賃金を引き下げる目的で統計を使い分けることは、法の趣旨に反するとして認められていません(PDFの3ページ)。

協定の更新を考えるときは、令和9年度の値で比べ直します。図2のAさんは、時給1,290円が令和8年度の一般賃金1,276円を上回りますが、令和9年度の東京・経験1年の1,565円には届きません。基本給などの水準が上がる一方で、通勤手当の時給換算は下がるので、職種ごとに両方の表を持たせて、年度の切り替わりで下回る人の一覧を出し直します。以下の図と計算は、特に断らない限り令和8年度の値です。

通勤手当の79円(令和8年度)は、どう比べればよいですか?

実費を払うか、時給換算79円以上を払うかを労使で選びます。通知は、通勤の距離と方法に応じた実費を払うなら一般の通勤手当と同等以上とみなします。ただし実費に上限があり、その上限の時給換算が79円未満なら、79円以上に上げるよう求めています。

79円の方法を選んだ場合だけ、基本給・賞与・手当と通勤手当を合算して比べられます。架空のAさんで試しました。東京のビル・建物清掃員で経験1年、時給1,290円、通勤手当は上限の月6,000円で、月の所定労働は80時間とします。

同じ人でも、別々に比べるか合算するかで結果が変わる架空のAさん:東京・ビル・建物清掃員・経験1年、時給1,290円、通勤手当 月6,000円(上限)÷月80時間基本給の時給Aさん 1,290円一般賃金 1,276円同等以上通勤手当(時給換算)Aさん 75円一般賃金 79円下回る合算(①の方法)Aさん 1,365円一般賃金 1,355円同等以上通勤手当を合算できるのは、一般通勤手当を79円とする方法を選んだ場合だけ。どの方法で比べるかは労使協定に書く出典:厚生労働省 職発0825第1号(令和7年8月25日、令和8年度の一般賃金)別添1・別添3。計算は人まわし帳の運営者。Aさんの数字は架空
図2 別々に比べる場合と合算する場合。Aさんの時給と通勤手当は架空の値です。

別々に比べると、基本給の1,290円は一般賃金の1,276円以上ですが、通勤手当の時給換算75円は79円を下回ります。合算すると1,365円で、一般賃金と79円を足した1,355円以上になります。どちらで比べるかは労使協定に書く事項で、給与の担当者が月ごとに決めるものではありません。

給与のデータには、どの項目を持たせればよいですか?

比べるのに要るのは7項目で、給与ソフトと契約の台帳に分かれていることが多い項目です。人まわし帳の運営者が、通知と施行規則から、計算に使う値を1つずつ拾って整理しました。

労使協定方式の比べに要るデータ7項目と、置き場所人まわし帳の運営者の整理。給与ソフトと契約の台帳に分かれていることが多い項目置き場所使う所協定対象か否かスタッフ台帳派遣元管理台帳の1号、事業報告書職種(別添1・2の番号)契約基準値を選ぶ経験年数の区分スタッフ台帳能力・経験調整指数派遣先の地域契約地域指数(都道府県かハローワーク)基本給・賞与・手当の時給給与一般基本給・賞与等と比べる通勤手当の方式と上限給与実費か79円か、合算するか退職金の方式給与退職手当制度か、5%の一般退職金か出典:厚生労働省 職発0825第1号(令和7年8月25日、令和8年度の一般賃金)別添1・別添3。計算は人まわし帳の運営者・施行規則 第25条の9
図3 比べに要る7項目と置き場所。人まわし帳の運営者の整理です。

協定対象か否かは、派遣元管理台帳の第1号の欄にもなります。派遣先の地域は、派遣先が変わるたびに地域指数が変わるので、スタッフではなく契約に持たせます。経験年数の区分は、協定で「何年目からどの指数を使うか」を決めた値で、入社日から自動で出せる形にしておくと更新が楽です。

退職金も比べる対象です。通知は、退職手当制度どうしで比べる方法と、一般基本給・賞与等の5%を一般退職金とする方法(中小企業の退職金共済などに入る場合を含む)を示し、労働者の区分ごとに選べるとしています。選んだ方法で比べる額が変わるため、方式を人ごとの項目にします。Aさんの例のように合算して比べる会社は、7項目のうち時給・通勤手当・退職金の3つが同じ月のデータにそろっていないと、比べた結果を出せません。

毎年の見直しで、どこが手間になりますか?

基準値と地域指数の入れ替えと、下回る人の洗い出しです。令和8年度の通知は令和7年8月25日に出て、令和8年4月から使います。職種と地域の組み合わせごとに表を作り直し、全員の時給と比べ直す作業が毎年発生します。

表の数は、職種と地域の組み合わせで決まります。たとえば職種が3つ、派遣先の都道府県が5つなら15通りで、それぞれに経験年数の7区分があるので、比べる額は105個です。経験年数を入社日から数える協定なら、区分は入社日の記念日ごとに上がるので、年度の途中でも指数の変わる人が出ます。

7項目がデータになっていれば、新しい表を読み込んで、下回る人の一覧を出すところまでは計算で済みます。協定の中身や職種の選び方、比べ方の判断は、顧問の社会保険労務士と決めてください。人まわし帳が作るのは、決めた内容をデータと警告にする所までです。派遣の料金と賃金の差の読み方は派遣料金と賃金の差の記事で扱っています。

このサイトで相談するには?

人まわし帳は、人材オペレーション管理システムの構築をお手伝いしています。給与ソフトのデータから、一般賃金を下回る人の一覧を出す仕組みも、その1つです。

何をどう頼むか決まっていなくても大丈夫です。御社のやり方に合わせて、進め方を一緒に考えます。準備は要らないので、無料で相談するからどうぞ。

よくある質問

一般賃金は毎年変わりますか?
はい。厚生労働省が毎年度の通知で基準値と地域指数を出し直します。令和8年度の値は令和8年4月1日から令和9年3月31日まで、令和9年度の値(令和8年8月28日の通知)は令和9年4月1日から使います。
一般賃金が最低賃金より低いときは、どちらに合わせますか?
高いほうです。最低賃金は別の法律の下限なので、一般賃金が下回る地域では、その地域の最低賃金が実際の下限になります。
職種は、どの表から選べばよいですか?
通知は、別添1(賃金構造基本統計調査)か別添2(職業安定業務統計)のうち、仕事の中核的な業務にいちばん近い職種を選ぶとしています。1つの協定で2つの表を使い分けるときは、その理由を協定に書きます。
派遣先均等・均衡方式なら、この計算は要りませんか?
はい。派遣先の通常の労働者との比べ(第30条の3)になるので、一般賃金の計算は使いません。そのかわり、派遣先から待遇の情報をもらって比べます。

出典

  1. 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(第30条の3・第30条の4、e-Gov 法令検索)(2026年10月16日確認)
  2. 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(第17条・第25条の9、e-Gov 法令検索)(2026年10月16日確認)
  3. 厚生労働省 職業安定局長通知 職発0825第1号(令和7年8月25日)令和8年度の一般賃金の額等について(別添1 職種別の基準値、別添3 地域指数。適用は令和8年4月1日〜令和9年3月31日)(2026年10月16日確認)
  4. 厚生労働省 職業安定局長通知 職発0828第5号(令和8年8月28日)令和9年度の一般賃金の額等について(本文の指数の表は6ページ、通勤手当の67円は8ページ、労使の協議と合意は2ページ。別添1 職種別の基準値、別添3 地域指数。適用は令和9年4月1日〜令和10年3月31日)(2026年10月17日確認)
  5. 厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」(2026年9月3日公表、答申の全国加重平均1,177円・最低1,085円)(2026年10月16日確認)